蒼芭と虎校空手部
▼蒼芭の生い立ちのくそ長いメモ
家族構成は、父、母、姉、自分。
蒼芭は昔から、生意気で活発な野球が大好きな男の子でした。
小学1年生の頃、友達といつものように空き地で草野球をしていた時、自分の打ったボールが近所の家の窓ガラスへとホームランします(ドラえ●んの冒頭か)
本当はトンヅラしたかった蒼芭ですが、友達にお前が打ったんだからお前が謝りに行けと言われ、渋々その家へと足を運びます。
その家の表札には「若林」と書いてありました。
勇気を出してインターホンを押して出てきた男は、顔面ピアスだらけで髪の毛が半分ハゲたお兄さんでした。
見た目の恐ろしさから蒼芭はかなりビビるのですが、出てきたお兄さんは思った以上に優しい笑顔と優しい声の持ち主でした。
そう、彼こそが後の蒼芭の師匠、若林智大。これが二人の出会いでした。
蒼芭は、一緒に窓ガラスの破片を片付けようと若林宅に上がった際、廊下や棚に飾られたたくさんのトロフィーや表彰状に目を奪われます。
これは何かと蒼芭が聞くと、若林は「僕が空手で獲ったトロフィーだよ」と優しい笑顔で答えてくれました。
これが蒼芭が空手を始めるキッカケ。
蒼芭は今までこんなにもたくさん優勝した人を見たことがなかったので、幼いながらも若林の凄さに惹かれていました。
そして蒼芭は窓ガラスそっちのけで、俺にも空手教えて!と駄々をこね始め、若林は面白半分で突きや蹴り、形を教えてくれるようになります。
それからというもの、蒼芭は毎日若林の家を訪ねるようになります。
若林も自分にゾッコンな蒼芭が可愛くて、来るたびに色んな技を教えてくれました。
そうこうしてるうちに、若林は蒼芭に、僕の道場においで、と声をかけます。
若林の出身道場は現在虎校の主将である東の父が営む、日本最高峰の道場・鷲連館。
そこで蒼芭は、若林に誘われるがまま、鷲連館道場に入門し、さらに本格的に空手をやることになりました。
若林は当時、空手の世界大会で組手、形ともに活躍していた日本が誇る強選手でした。
蒼芭はその若林に空手を教えてもらった事になるので、翌年には全小で優勝するほどにあっという間の成長を遂げます。
蒼芭は強くて優しい師匠の若林が大好きで、ひたすらにその背中を追い続けました。
しかし蒼芭が中学生になった頃、若林は突然蒼芭の前から姿を消す事になります。
若林は刺青の修行をしに、海外に飛んだのですが、その話も急に決まった事らしく、蒼芭に何も話さずに居なくなってしまいました。
若林が居なくなった事を信じきれず、蒼芭は毎日毎日、彼の家を訪れるのですが、状況は変わらず。
まだ幼かった蒼芭は、自分は見捨てられたんだと思い込み、大好きだった空手も投げ出し、一気にグレ始めます。
中学校では、野球部に入り、まるで空手を忘れようとしてるかのごとく毎日ボールを投げていました。
昔から運動神経も良く、負けず嫌いだった蒼芭は、中学時代はずっと鉄壁のエースピッチャーでした。
その頃、いつも大きな大会の決勝戦で当たる学校の、白黒頭の柄の悪いバッターにだけはどうにも上手くストライクを取れずに手こずります。
その彼こそが、後の虎校空手部の初代メンバー・夜七でした。
夜七も昔から空手をやっていたので、蒼芭の顔は知っていました。
蒼芭は夜七の存在を知りつつも、一度グレてしまったこの1匹狼は空手の事を思い出したく無かったので無視していましたが、会うたびに明るく接してくる夜七に次第に心を許していきます。
それからふたりはライバルでありながら、休みの日は一緒に遊びに行くなど、とても仲のいい友達になります。
いつしかふたりは高校になったら一緒に甲子園に行って優勝しようと約束します。
そしてやってきた虎風館高校。
蒼芭も中学時代は名の通ったピッチャーだったので、野球の推薦で1発合格でした。
しかしいざ野球部に入ってみると、やはりそこは強豪校ならではの上下関係の厳しさや、気合いの違いがありました。
蒼芭も当時はかっこつけた髪型にピアス、だらしない服装をしていたので、もちろんそれが許されるわけもなく、上からガミガミ言われる状況に堪えきれず、結局夜七とした約束は夢に終わりました。
空手も途中で辞めるわ野球も途中で辞める自分なんてもうどうでもいいと思い始め、夜七とともにさらに荒れる事になります。
それからしばらくして、自分たちと友達になりたいとか言い出す不思議ちゃんの渓珸に出会い、3人で色々暴れていたようですが、学校側から差し向けられた刺客、幸成と和也に徹底的に動きを封じられます。
そんな頃、毎日ひたすら喧嘩三昧ですっかり不良と化した蒼芭を何とかして厚生してやりたいと思う人物がいました。
それはいつも蒼芭を近くで見てきた姉の紅音でした。
飲酒してダラダラと深夜に帰ってきた蒼芭に、「今のあんたを見たら師匠は悲しむだろうね」と凄まじい平手打ちをお見舞いしたそうな。
「あんたは師匠に貰った拳を何に使ってんの」「何であの人が現役を引退したと思ってんの」などなど、ガミガミと怒鳴られます。
この一件は蒼芭もブチギレて反抗はするものの、「あんたはまだ若いんだからチャンスはあるでしょう」と、姉の言う事は確信を突いていて、まさか今さら若林の事を掘り返されるとは思ってなかったので、蒼芭の心は古傷が開いた状態になります。
それからは、やっぱり蒼芭も根が真面目なせいで姉に言われた事を気にし始めます。
途端に、若林に見捨てられたからと言って今の状態にまで落ちぶれた自分を情けなく思いはじめます。
あの人がなぜ引退したか…それは紛れも無く、蒼芭にあとを継いで欲しかったから。蒼芭の空手道を見込んでくれたこそ。
もう自分の事を見てくれていないなら…そう思って放り投げた大好きな空手だけど、それならば、離れていても活躍が見えるくらい、若林が読んでる新聞や雑誌に載るくらい強くなればいい、と思い、姉の言っていたチャンスに賭けてみようと重い腰を上げたのでした。
しかし、高校の空手の公式試合は、蒼芭のひとりの個人名で出れる訳も無く、どうしても空手部として人数が必要でした。
そこで、「もう一度空手で全国一になりたい。手伝ってくれ。」と親友の夜七や渓珸、対立していた幸成や和也に頭を下げ、空手部の一員になってもらうようお願いします。
他の4人は各々理由があって空手を辞めたメンバーばかりだったので、返事はすぐに返ってきました。
この件についてはメンバー全員が「予想外の結末だった」と言っているそうな。
蒼芭は、思い切ってプライドを捨て頭を下げたとき、他の4人が笑顔で手を握ってくれ、肩を支えてくれた事が何よりも嬉しくて、絶対に全員を全国大会まで連れて行くと、もう一度強く決心しました。
それから蒼芭は、練習メニューや、相手からポイントを取るコツ、見栄えする形など、昔自分が師匠から教えてもらった事すべてを4人に伝承します。
元々空手界でも細々と名前を残していたメンバーが揃っていたおかげで、団体のみならず、組手では自分を含め幸成や夜七や渓珸、形では和也が、個人戦でも着々と成績を出して行きました。
順調に公式戦を勝ち上がり、そして迎えたインターハイ。
蒼芭は団体戦の決勝で大将戦を8-0で圧勝、さらに個人戦の決勝では仲間でありライバルであった幸成と対峙し、6-5と僅差で勝利します。
今まで高校空手のインターハイにはもちろん常勝校も存在したので、いきなりその歴史が塗り替えられ、蒼芭を含めたこの学年は空手界で伝説の5人と称され、一躍時の学年となります。
蒼芭本人はその圧倒的な強さと女ウケのする見た目ゆえに、その年度の空手雑誌の表紙を飾る事になります。
表紙に使われた写真は、団体戦の決勝で、師匠から教わった得意技である上段内廻し蹴りを決めた瞬間でした。
もちろん雑誌の中身も虎校空手部の5人で持ちきりでしたが、蒼芭本人はダントツの取材量でした。
見出しは「世界一の伝説を受け継いだ彗星・日本一の大将」
世界一の伝説とは紛れもなく、惜しまれながらも現役を引退した若林の事でした。
蒼芭の戦い方が若林にそっくりで、取材にも師匠への思いがぶっきらぼうに語られていて、すぐに彼の弟子だと言う事は周りに知れ渡ったそうな。
そんな雑誌が書店に並び、若林がその雑誌を手に取るのには、そんなに時間は掛かりませんでした。
そして、この奇跡のような成績を学校側からも認められ、全国大会連覇を目指して道場で練習に励んでいるとき、メディアや噂を伝手に、師匠・若林自ら蒼芭に会いに来てくれるのでした。
師匠は、いつの間にか自分の身長を追い越してしまった蒼芭を、「大きくなったね」と昔と同じように優しい笑顔で頭を撫でてくれました。
それから、何であのとき蒼芭の前から姿を消したのか、などなど色々和解して、今に至ります。
そして月日は経って、後輩もたくさん増え、蒼芭は虎校卒業後、空手の有名大学に特待生として入学します。
親友の夜七も同じ大学に入学し、これからも二人で空手をやろうと言っていた矢先、夜七の母が倒れ、急遽実家のお好み焼き屋を継ぐ事になり、蒼芭はひとりでその大学に通い始めます。
もちろん大学でも敵無し。
個人戦ではいろんなタイトルを総ナメにしていました。
その頃から、虎校からの依頼で、虎校現役空手部のコーチも務めていました。
頭も悪くないので学業もそれなにりに。
ただ、蒼芭は、大学の空手部員に何を言われても、団体戦には絶対に出てくれなかったそう。
それはきっと、自分にバトンを渡してくれるのはいつだって夜七じゃなきゃ嫌だったから。
円陣を組んで勝利を誓うのはいつだって渓珸と和也と幸成と夜七じゃなきゃ嫌だったから。
だいぶ我が儘な奴ですが、それくらい、夜七たちへの信頼や依存度は高いようです。
それからしばらくして、大学を卒業した後、我らが母校虎校に戻り、今も尚、師匠から受け継いだ空手を現役たちに伝承しているのでした。
長くなりましたが、もし、最後まで読んでくれた人が居てくれたなら、蒼芭の事を少しでも知ろうとしてくれて、本当にありがとうございます!!
これからもどうか、こんな蒼芭の事をよろしくお願いしますね!!