少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口31-
31 この国の決まり
「下級の?階級みたいなのがあんの?」
白兎が尋ねる。
「あります。この国・・・あ、僕らの国は不思議の国って言うんですが、国が他にも4つあって。その4つの国全てに共通する絶対の決まり事を“吏胡”と言います。」
「あ!ちょっと待って!」
彩里水が控えめに叫びながら、ポケットに入りっぱなしだった地図を取り出す。
「もしかして、これって世界地図ってことかな?」
そう言いながらキップとクップに地図を見せる。
「そうですー。これは世界地図ですー。そして、この“Wonder Land”とかかれているのが僕たちの国ですよー。」
「マジか!こんな地図全然役に立たないと思ってたけど、取っといて良かったね!白兎!」
「だな。必死につかんだんだろ?おまえのいざというときのキュウカクすごいよなー。」
ポカンとするキップとクップを見た彩里水が慌てて、次を促す。
「あ、ああ、ごめん。つづけて。」
「あ、はい。それでその吏胡という決まりの中に、階級制度があります。1番トップが純型です。純型の方を万が一傷つける様なことがあれば厳罰を受けます。」
「そしてー、それぞれの国にも決まりがあるんです。この不思議の国はハートの女王様がトップです。ハートの女王様は純人型とおっしゃっていますが、実はトランプと人のミックスではという噂もありー・・・。」
「バカ!クップ!」
キップが慌ててクップを諫める。クップはさらに声を落とし、周りの人に聞こえないよう囁くように話す。
「あ、いけないー。もしハートの女王様に少しでも無礼なことを言えばすぐに死罪なんですー。」
「死罪!?」
彩里水と白兎は声を揃えて低く驚きの声を上げる。
「はい。女王様は大変気難しい方であらせられまして、女王様のお気持ちに少しでも障るようなことがあったら“ハートの経典”と言われる経典にどんどん戒律が増やされていき、今では一京は戒律があると言われています。それに触れた者はたちどころに死罪なんです。」
キップもこれ以上出せないくらい小さな声で説明する。
――い、一京って・・・!
――誰か数えたのかな?
彩里水と白兎は声に出さず突っ込む。
「・・・マジ?」
白兎はゴクンと唾を飲み込む。
「そんで、そのハートの女王様って人、もしかしてこの城にいるとか?」
白兎はそうでないことを願いつつ、キップとカップに尋ねる。
「もちろんですー。こちらがハートの女王様のお城ですからー。」
クップは当たり前のように言う。
「そうだったんだ。オレてっきりあの王様みたいな人のお城だと思ったよ。」
彩里水が言う。
「ハートの王様はこのハートの女王様の領地内ではナンバー2のお方です。しかし、実質は女王様の独裁政権で王様は女王様に全く頭があがらないのです。」
「ん。まあ、そんな感じだったな。さっきも双子にいやにペコペコしてる感じだったし・・・。」
白兎が思い出してあきれ顔で言うと、彩里水が思い出したように言った。
「じゃあさ、ひとまず、キップとクップは怪しまれない程度にできる限り従業員棟の外、できれば城の敷地の外の様子をラープンさんから聞き出してくれる?」
「はい!」
キップとクップは声を揃えて返事をした。
つづく