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筑波山神社境内の万葉歌碑

2020.09.08 02:51

筑波山の寝待ち月山の彼方の月 つくば

http://www5a.biglobe.ne.jp/hpkoto/ara/manyou/ibarakitsukubasanjinja.html 【茨城県つくば市筑波山神社境内の万葉歌碑】  より

茨城県のつくば市の筑波山神社境内に置かれている万葉歌碑を訪ねてきました(2019/4)。境内には、6基の万葉歌碑があります。

その一

拝殿に向かう参道に随神門があります。その西側に2基の歌碑があります。下の写真はその一つで、原文で彫られています。

草枕(くさまくら) 旅の憂(うれ)へを 慰(なぐさ)もる こともありやと 筑波嶺(つくはね)に 登りて見れば 尾花(おばな)散る 師付(しづく)の田居(たゐ)に 雁(かり)がねも 寒く来(き)鳴きぬ 新治(にひばり)の 鳥羽(とば)の淡海(あふみ)も 秋風に 白波立ちぬ 筑波嶺(つくはね)の よけくを見れば 長き日(け)に 思ひ積み来(こ)し 憂(うれ)へはやみぬ (巻9-1757) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。

(大意) 草枕の旅の憂いを慰めてくれるかと、筑波嶺に登りって見ると、ススキの穂が散る師付の田居を雁が来て寒々と鳴いていた。新治の鳥羽の湖も、秋風に白波が立っていた。筑波嶺のよい景色を見ていたら、長い日々思い悩み重ねてきた憂いが止んでいた。

(作者) 高橋連虫麻呂

反歌

筑波嶺(つくばね)の 裾廻(すそみ)の田井(たゐ)に 秋田刈る 妹(いも)がり遣(や)らむ 黄葉(もみち)手折(たを)らな (巻9-1758) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。

(大意) 筑波山の裾の周りの田に秋の稲を刈っている乙女のもとにやる黄葉を手折ろう。

(作者) 高橋連虫麻呂

その二

上の歌碑と並んでもう1基の歌碑があります。下の写真ですが、こちらは、読み下し文で彫られています。歌と反歌の記載は省略します。

その三

随神門をくぐった先の山道の西側に4基の歌碑が置かれています。下は一番手前の碑です。

橘(たちばな)の 下(した)吹く風の かぐはしき 筑波(つくは)の山を 恋ひずあらめかも (巻20-4371) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。

(大意) 橘の花の下を風がかぐわしく吹いている筑波山を恋しく思わずにいられようか。

(作者) 助丁(すけのよぼろ)占部広方(うらべのひろかた)

その四

上の碑に続く2番めの碑です。

鶏(とり)が鳴く 東(あづま)の国に 高山(たかやま)は 多(さは)にあれども 明(あき)つ神の 貴(たふと)き山の 並(なみ)立ちの 見が欲(ほ)し山と 神代(かみよ)より 人の言ひ継(つ)ぎ 国見(くにみ)する 筑波(つくは)の山を 冬ごもり 時じき時と 見ずて行かば まして恋(こほ)しみ 雪消(ゆきげ)する 山道(やまみち)すらを なづみぞ我が来(け)る (巻3-382) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。

(大意) 鶏鳴く東の国に高い山は沢山あるけれども、現神である貴い山、並び立つ是非見たい山と 神代より言い伝えられてきた国見する筑波山を、冬ごもりの時期に季節外れだとして見ずに行ってしまったならばいっそう恋しくなるだろうなと思いながら、雪解けの山道ではあるが、難儀しながら登ってきたなあ。

(作者) 丹比真人国人(たぢひのまひとくにひと)

その五

次の歌碑には、上の碑の歌の反歌が彫られています。

反歌

筑波嶺(つくばね)を 外(よそ)のみ見つつ ありかねて 雪消(ゆきげ)の道を なづみ来(け)るかも (巻3-383) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。

(大意) 筑波嶺(つくばね)を遠くから見ているだけではすまず、雪解けの道を難儀しながら来たなあ。

(作者) 丹比真人国人(たぢひのまひとくにひと)

その六

上の碑の左に古い碑があります。

衣手(ころもで) 常陸(ひたち)の国の 二並(ふたなら)ぶ 筑波の山を 見まく欲(ほ)り 君来(き)ませりと 暑(あつ)けくに 汗かきなけ 木(こ)の根取り 嘯(うそむき)登り 峰(を)の上(うへ)を 君に見すれば 男(を)の神も 許したまひ 女(め)の神も ちはひたまひて 時となく 雲居(くもゐ)雨降る 筑波嶺(つくばね)を 清(さやか)に照らし いふかりし 国のまほらを つばらかに 示したまへば 嬉(うれ)しみと 紐(ひも)の緒(を)解きて 家のごと 解けてぞ遊ぶ うち靡(なび)く 春見ましゆは 夏草の 茂くはあれど 今日(けふ)の楽しさ  (巻9-1753) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。

(大意) 常陸の国の二つ並ぶ筑波の山を見たいとあなたがいらしたので、熱(あつ)さに汗をかき苦しみながら、木の根にすがり、息を切らしながら登り 峰の上の景色をあなたにお見せすると、男神もお許しになり、女神もご加護をくださり、いつもなら雨の降る筑波嶺を清に照らし、今迄はっきりとは分からなかったこの国の優れたところを詳らかに示して下さったので、嬉しく思い紐を解いて家にいるときのように、打ち解けて遊んだ。霞がかかる春に見るよりも、夏草が茂ってはいるけれど、今日はなんと楽しいことか。

(作者) 高橋連虫麻呂

反歌

今日(けふ)の日に いかにか及(し)かむ 筑波嶺(つくばね)に 昔の人の 来(き)けむその日も (巻9-1754) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。

(大意) 今日の日にどうして及ぼうか。筑波嶺に昔の人が来ただろう、どの日に比べても。

(作者) 高橋連虫麻呂