少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口36-
36 いざ!トイレへ!
「うんうん、そんでトイレがないこととそれの何が関係あるの?」
「で、この幽閉部屋には物型の半人半物しかいないじゃん?」
「うん。」
「だからトイレがないんじゃないかなって・・・。」
「あはははは!なんじゃ、そりゃ。物型だからトイレに行かないってこと?」
白兎が真面目な顔をして何を言い出すのかと思い、彩里水は声を立てて笑う。
「いや、だからそれが言いたいんじゃなくて、オレらにはトイレが必要だろってこと!」
白兎は彩里水に予想外に大笑いされて照れて赤くなる。そんな2人の様子を見てスペードの3がまた鉄格子のそばまで来て黙って2人の様子を観察する。
2人は少し緊張しながらも自分たちもスペードの3の様子を観察した。
スペードの3がまた定位置に戻る。その間、ハートの3はピクリとも動かない。
「やっぱり、白兎の言ってることはあってるっぽいよね。ホントに全く同じ動きしかしない。」
「な。・・・で、さっきの続きだけど、つまりオレらがトイレに行きたいって言ったら外に出れることになるんじゃないかと思ったんだ。」
「ああ!そういう・・・。」
「そ。だからトイレがてらちょっと部屋の外の様子を見に行ってみないか?」
「なるほどなー!やっぱ白兎、あったまいい!」
彩里水は嬉しそうに言った。
トランプの3にトイレに行きたいと告げると、1人ずつ鉄格子の外に出ることができた。ハートの3に連れられ、白兎が先にトイレへ向かった。
トランプの衛兵たちは目があるようには見えなかった。そしてそれぞれのマークが先端についた槍を必ず持っていた。
トランプの目を盗むようにして白兎は縄を拾えないか試そうとしたが、トイレへ行く以外の動作をしようとするとすぐにグイと引っ張られ無言のまま先へ進めとでも言うように後ろから持っている槍のようなものでつつかれた。
鉄格子のすぐ前は横幅1.5m程度の廊下が数mあり、そこからすぐに、塔の壁に沿うように螺旋状の階段が階下へ続いた。
ラープンの光が届かない鉄格子の外は薄暗い。
階段には所々に部屋にあるようなガラスも鉄格子もついていない、30cm四方程度の窓がついており、逆側の壁には30cm四方の飾り棚のくぼみには、燭台や花瓶が飾られていた。
燭台の前を通るときに自動的に灯が灯り、ハートの3はそれを持って行く先を照らしながら進んでいく。
白兎は何か脱出用に使える物はあるかと注意深く見ていたが、殺風景で何もないようだった。
1階分を下りたところにトイレがあり、燭台を渡され個室に入った。そこには社会科の資料集か何かで見た中世のトイレがあった。
燭台を棚の上に置き用を足していると、何か人の声のような音が聞こえ、白兎は戦慄した。
つづく