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『森の生活 ウォールデン』by H.D.ソロー

2020.09.10 02:22

H.D.ソロー『森の生活 ウォールデン』 (上)、飯田実訳、岩波文庫、1995

「ひとりで旅立つものは今日にも出発できるが、連れ立って旅立つものは相手の準備がととのうまで待たなくてはならず、出発までにはずいぶん時間がかかるものである。」p.129

「その日の生活を質的に高めることこそ、最高の芸術にほかならない。すべての人間は自己の生活を細部に至るまで、精神が最も高められ研ぎすまされた瞬間の観照にも堪えられるものにしておくべきである。」p.162

「ひとびとは真理が、太陽系のはずれとか、いちばん遠い星のむこうといった、はるかかなたに存在するか、アダム以前なり、最後の人間のあとに存在すると考えている。永遠の時間には、確かに真実で崇高なものがある。けれども、そうした時間や場所や機会はすべて、今、ここにあるのだ。神自身もいまこの瞬間、栄光の頂点に達している。

あらゆる時代が通りすぎてゆくあいだも、神がいまほど神聖なときはふたたびめぐってはこないだろう。したがってわれわれは、自分をとりまく実在の世界をたえず内部に浸透させ、そこに身を浸すことによってのみ、崇高にして気高いものを理解することができるのである。宇宙はいつだって素直にわれわれの思索に応えてくれる。いそいで行くにしろ、ゆっくり行くにしろ、われわれの軌道は敷かれているのだ。そうであるなら思想を懐胎することに生涯を費やそうではないか。過去の詩人や芸術家がどれほど美しく気高い構想を抱いたにせよ、少なくとも、後世の人間がそれを完成させることができないということはあり得ないのだ。」p.174

「自分と子孫のために財産を築きあげようが、一家族、一国家を建設しようが、よしんば名声を獲得しようが、われわれはみな死ぬ運命にあるのだ。ところが真理を扱うことになれば、われわれは不滅となり、変化や偶然を恐れる必要はなくなる。」p.179