ボルゲーゼ美術館 Museo e Galleria Borghese
ローマの北、ボルゲーゼ公園内には、ボルゲーゼ宮殿があり、現在建物内部はボルゲーゼ美術館となっている。
歴史
17世紀に枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼが別荘を建てた。
シエナ出身のボルゲーゼ家パウルス5世と甥シピオーニ・ボルゲーゼ枢機卿は、彼らの財産を美術品の収集に投資し、芸術家のパトロンとなった。
ボルゲーゼ家は、ベルニーニやカラヴァッジョに制作依頼をしコレクションを収集していたが、手に入れるのが難しいティツィアーノやラファエッロなどのコレクションは窃盗などをして集めたと言われている。
1782年にマルカントーニオ・ボルゲーゼが館を改装して展示品を公開。
ボルゲーゼ家は経済的危機にあった頃、ナポレオンの妹を妻にしたカミッロ・ボルゲーゼが1807年、義兄ナポレオンにコレクションの多数を売ることとなり、ナポレオンがフランスに持ち出した。現在でも多くがルーブル美術館に展示されている。
館はイタリア国立ボルゲーゼ美術館として1903年に一般公開した。展示品は多くないが、バロック期、古代ローマ美術のコレクションとして世界でも代表的な美術館である。1階は彫刻コレクション、2階は絵画コレクションとなっている。
★ ボルゲーゼ庭園の建物
ローマの北、ピンチョの丘のローマ旧市街の城壁外にある広大な公園は、1613年頃に、シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿が葡萄畑を買い占め別荘として造園し完成したのは、1616年~1621年頃。
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★ ボルゲーゼ公園
庭園は18世紀にイタリア式庭園からイギリス式庭園に改造され、湖の庭園もこの頃造られた。 1901年イタリア政府がボルゲーゼ家から館とコレクションを買い上げ、庭園を公園として使うためジョヴァンニ・ヴァサンツィオ設計で改修し1915年に完成。市民の憩いの場となっている。
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展示作品
★ ジャン・ロレンツォ・ベルニーニの作品
SALA DEL DAVID 2室
『ダヴィデ像』
1623-1624年 David 白大理石(カッラーラ産?)25歳
シピオーネ枢機卿の依頼で制作。ダヴィデが巨大なゴリアに向け。スリングショットで石を投げるシーン。自身の顔や体をモデルにしたとされる。
SALA DI APOLLO E DAFNE 3室
『アポロンとダフネ』
Apollo e Dafne, 1622-1625年 等身大の彫刻
シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿のために制作された。オウィディウスの『変身物語』におけるアポロンとダフネ。ダフネがアポロンの抱擁を避け、月桂樹に変身する様子。アポロは紀元前2世紀の作品でも見られる神性を高める大きな大理石の頭により構成されている。
デザインは若い頃のベルニーニだが、ほぼ全て自身の工房のメンバーであったジュリアーノ・フィネッリが制作した。
完成してボルゲーゼ公園に展示されたのは1625年9月。公園入口に配置されるように制作された。その後、礼拝堂の壁面に引っ付けて配置されていたが、18世紀フランスの建築家シャルル・ペルシエのアイデアで現在の部屋に置かれた。
SALA DEGLI IMPERATORI 4室
『プロセルピーナの略奪』
The Rape of Proserpina 1621- 1622年
ボルゲーゼ枢機卿のために制作。父ピエトロとの共作で、プロセルピナがジャン・ロレンツォ作だと言われている。プルートの手から逃れようとするプロセルピーナ。
SALA DI ENEA E ANCHISE 6室
『時間によって明らかにされた真実』
La Verità svelata dal Tempo 1645-1652年頃
パトロンのバルベリーニ家のウルバヌス8世が亡くなり、設置場所が未定だったため、繊細な部分はまだ補強がついており未完成に終わった。
ベルニーニはサンピエトロ寺院の2本の鐘楼を設計したが、建設中にヒビが見つかり、鐘楼を壊すこととなり責任とることとなった。教会の仕事から離れていた時期に、 この作品がつくられた。宗教的でなくアレゴリーを題材にした裸の女神が美しい。
『トロイアを脱出するアエネアスとアンキセスとアスカニウス』
Enea, Anchise e Ascanio, 1618-1619年
ベルニーニが父ピエトロの仕事を手伝っていた22歳頃の作品。シピオーネ・ボルゲーゼが若いベルニーニにつくらせた。ローマ建国伝説に関連するウェルギリウスの『アイネイアース』を題材に、子供、成人、老人と3代の彫刻。アエネアス(成人)アンキセス(父)アスカニウス(子供)。
LOGGIA DI LANFRANCO 14室
『シピオーネ・ボルゲーゼの胸像』
1632年、Busti di Scipione Borghese
ベルニーニのパトロンであったシピオーネ・ボルゲーゼの胸像。
初めの胸像の制作中に頭部の大理石が割れたため2体目を作ったが、次の作品もヒビが入ってしまった。若いベルニーニには予算がなかったため、自分で素材選びができず、手に入る石でしか制作できなかったためである。
1620年~1640年頃、ベルニーニは、Filippo Baldinuccii (1682)によると150点、息子のドメニコによると200点の絵画作品を残している。
『少年の肖像画』Ritratto di fanciullo
1638年 40歳頃 誰の肖像かは不明
『成熟期の自画像』Autoritratto in età matura
油絵
成熟期の自画像は若い頃の作品に比べて、Guercino, Lanfranco, Velázquezの影響は見られない。
1911年にOtto Messingerより美術館に寄贈された。50000リラ札のデザインに使われていた。
『青年期の自画像』
1623年頃 25歳頃
『パウルス5世の胸像』
パウルス5世の胸像は、ベルニーニにより3体作られたが、この小さなデスク用の胸像は、1621年に教皇が亡くなった後の1622年にシピオーネ・ボルゲーゼにより依頼された。
他は競売にかけられ、生前教皇の寝室に飾られていた1体目はアメリカ、3体目はブロンズ製でコペンハーゲンの美術館に展示されている。
『フランスのルイ14世像の修作』
1670年頃 テラコッタ
フランスのベルサイユ宮殿に大理石像2体がある。
『アマルテイアの山羊』
Capra Amaltea, 1609-1615年頃 大理石
10歳頃から彫刻を始めたベルニーニの初期の作品。
ギリシア神話に登場するゼウスの育ての親アマルテアは山羊で表現され、クレータ島のイーデー山の洞窟で幼いゼウスに乳を与えたとされる。また時にニュンペーとされ、ゼウスに山羊の乳を与えて育てたとされる。
★ アントニオ・カノーヴァ
『パオリーナ・ボルゲーゼの肖像』
1805~1808年ネオ・クラシック様式 第1室
1804年カミッロ・ボルゲーゼ王子の依頼でヴェネト州出身のアントニオ・カノーヴァにより制作開始。王子の若い妻でありナポレオンの妹であるパオリーナの肖像である。
パオリーナは半裸で金色に装飾された木製ベットの上に横たわり、手のポーズがパリの審判で勝利した女神ヴィーナスの肖像のように思わせる。当時の人々の間で批判されることなく、彼女の社会的王朝の地位と、彼女の美しさを際立たせた。
完成後、トリノのカミッロの邸宅に運ばれ、その後ローマのカンポマルツィオのボルゲーゼ宮殿、1838年にピンチャーノ邸に、1889年に現在のボルゲーゼ庭園の館に運ばれた。
★ ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ
『病めるバッカス』1593年頃
『馬丁の聖母』
『果物籠と聖年』
『ゴリアテの頭を持つダヴィデ』
『聖ジローラモ』
『荒野の礼拝者』
★ ラファエッロ
『キリスト降架』
1507 9室 ペルージャの教会から夜中にフランチェスコ会により持ち出された
『一角獣を抱く貴婦人』
1503-1506フィレンツェ時代 9室 純潔を象徴するユニコーンを膝に置いた女性。ユニコーンは修復中の1935年に修復時に見つかった。
『ある男の肖像』
1503-1506フィレンツェ時代 9室
★ ピエトロ・ダ・コルトーナ
『マルシェッロ・サッケッティの肖像画』
ピエトロ・ダ・コルトーナの肖像画作品の傑作。サッケッティ宮殿の肖像の部屋から収集された可能性がある。マルシェッロ・サッケッティは1600年代のローマでの商人で、手には絹の白いハンカチが光る。もう片方の手は紋章付きの金の木製テーブルに置かれている。
2016年に枢機卿の服を着た兄弟のジュリオ・サッケッティの肖像も見つかっている。
★ ピントゥリッキオ『キリストの磔』9室
★ ペルジーノ『聖母子像』9室
★ アンドレア・デル・サルト『聖母子と幼い洗礼者ヨハネ』10室
★ ルーカス・クラナッカ『ヴィーナスと蜂の巣を持つキューピッド』16世紀のドイツの画家
★ コレッジオ『ダナエ』1530- 1532年
★ バッサーノ『最後の晩餐』『羊と天使』15室
★ ドッシ『聖母子』15室
★ ルーベンス『ピエタ』『スザンナの水浴』18室
★ ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『聖愛と俗愛』1512年 『聖ドメニコ』『キューピッドに目隠しするヴィーナス』『キリストの鞭打ち刑』20室
★ ヴェロネーゼ『洗礼者の説教』『魚に説教するアントニオ』20室
★ ジョヴァンニ・ヴェッリーニ『聖母子』1505年頃 20室
★ ロレンツォ・ロット『聖なる対話』20室
★ カルパッチョ『婦人の肖像』20室
★ ドメニキーノ(ドメニコ・ザンピエーリ)『巫女』『狩りをする女神ディアナ』1617年
★ アンニーバレ・カラッチの作品
SALA DEL DAVID 2室
『牢獄のサムソン(Sansone in carcere)』
1594年 油彩
1594年にボローニャで描かれた可能性があり、ボルゲーゼ家のコレクションとして17世紀には展示されていた。アンニーバレはヴェネト州出身の師匠からの影響がある。
旧約聖書に登場する古代イスラエルの士師の1人。足元にはロバの骨があり、これで1000人の敵を倒したと言われている。
19室にもカラッチの作品あり
★ 古代彫刻・遺跡
SALA DEL DAVID 2室
2世紀のギリシャの石棺
古代ローマの大理石彫刻『子供のエルコレ』Ercole fanciullo nell'atteggiamento dell'Ercole Farnese
SALA DI APOLLO E DAFNE 3室
古代ローマの大理石製ライオン像 Leone di alabastro
7室 古代彫刻
ブログ
参考
Museo e Galleria Borghese 公式HP