秋の七草
http://www.i-nekko.jp/kurashi/2018-090310.html 【秋の七草】 より
春の七草は1月7日の人日(じんじつ)の節供に七草粥にして食べることで有名ですが、秋にも七草があります。しかし秋の七草は、これにちなんだ節供や行事があるわけではなく、鑑賞して秋の風情を楽しむものです。
■秋の七草プロフィール
【萩】(ハギ)
「萩」とは「秋に咲く草」という意味。お彼岸のおはぎは、この萩に由来します。
【桔梗】(キキョウ)
花期は夏なので、夏の着物によく描かれています。根は太く、喉に効く生薬になります。
【葛】(クズ)
茎で籠や布を織り、根から採取したでんぷんがくず粉となります。くず粉で作ったのがくず餅。漢方薬の葛根(かっこん)は根を乾燥させたものです。
【藤袴】(フジバカマ)
乾燥させると香りが強く、桜餅のような香りがする。貴族たちは湯に入れたり、衣服や髪につけていたとか。別名「蘭草」「香水蘭」。
【女郎花】(オミナエシ)
恋に破れて身投げした女の脱ぎ捨てた山吹色の衣が、この黄色い花になったといいます。全体に大きく白い花が咲くのは「男郎花(オトコエシ)」。二つの自然交配種は淡い黄色で「オトコオミナエシ」といいます。
【尾花】(オバナ)
ススキのこと。草が茂っている様子が「薄(ススキ)」で、穂が出た状態は動物の尾に見立てて「尾花」といいます。ススキは「茅(カヤ)」ともいい、これで葺いた屋根が「茅葺屋根(かやぶきやね)」です。
【撫子】(ナデシコ)
愛児を失った親が、その子の愛した花を形見として撫でたことに由来し、別名「片身花」といいます。日本女性の代名詞「大和撫子」はこの花からきています。
■秋の七草の由来
一般的には、万葉の歌人、山上憶良(やまのうえのおくら)が二首の歌に詠んだことから、日本の秋を代表する草花として親しまれるようになったとされています。
『秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびおり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花』
(山上憶良 万葉集 一五三七 巻八)
『萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花 また藤袴 朝貌(あさがお)の花』
(山上憶良 万葉集 一五三八 巻八)
「朝貌の花」は、「朝顔」「木槿(ムクゲ)」「桔梗」「昼顔」など諸説ありますが、一般的には「桔梗」を指すとするのが有力です。
■秋の七草の覚え方
★五・七・五・七・七のリズムで
五・七・五・七・七のリズムに合わせて口ずさむと覚えやすくなるもの。山上憶良の歌をそのまま諳んじ覚えても良いのですが、ちょっと口ずさみにくいですね。
覚えやすい組み合わせ方は様々ですが、一番多いのが次の順番です。
ハギ・キキョウ / クズ・フジバカマ / オミナエシ / オバナ・ナデシコ / 秋の七草
これを繰り返し口ずさんでいれば、自然にマスターしてしまいます。
・ 春の七草の覚え方
春の七草も、五・七・五・七・七のリズムに合わせて覚えます。
「セリ・ナズナ / ゴギョウ・ハコベラ / ホトケノザ / スズナ・スズシロ / 春の七草」
これは、『芹なずな御形(ごぎょう)はこべら仏の座 すずなすずしろこれぞ七草』という四辻左大臣の歌になぞらえたものです。
※詳しくはこちらをご覧ください。→ 人日(じんじつ):1月7日 七草の節句
★語呂合わせで
七草の頭文字を並べて、何か意味のある文章を作ります。語呂合わせを自分なりに考えてみるのも楽しいもの。インパクトが強い文章なら、より忘れにくいでしょう。
例えば......
「ハスキーなおふくろ」
=ハ ギ/ス スキ/キ キョウ/ナ デシコ/オ ミナエシ/フ ジバカマ/ク ズ
「お好きな服は?」
=オ ミナエシ/ス スキ/キ キョウ/ナ デシコ/フ ジバカマ/ク ズ/ハ ギ
「フナオ君は好き?」
=フ ジバカマ/ナ デシコ/オ ミナエシ/ク ズ/ハ ギ/ス スキ/キ キョウ
まずは五・七・五・七・七 バージョンで七草に親しみ、頭文字の語呂合わせバージョンで覚えるという合わせ技が効果的かもしれません。
https://shikinobi.com/akinonanakusa 【秋の七草の種類と楽しみ方色々|歴史・由来も】より
1.秋の七草の始まり
秋の七草の歴史をたどると「万葉集」の山上憶良の歌にたどり着きます。
山上臣憶良 秋の野の花を読める歌二首
秋の野に 咲きたる花を指(および)折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
菜の花 尾花 葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝がほの花
憶良はここで特にこれらの花が美しいというわけではなく、野に咲く花として挙げているわけですが、この歌により秋の七草が定まったと考えられています。
もちろんほかにも秋の野の花はあるのですが、七夕(*1)に供える花として選定され以後定着したようです。
平安時代になると文学や絵巻物にも秋の七草はしばしば登場し、「源氏物語」にも「藤袴」という巻があります(*2)。
また江戸時代の国学者、賀茂真淵の作品中にも七夕に七種の花を供えたという記述があります。
*1 旧暦の七夕は現在の8月に行われており、8~10月を秋と区分していました。
*2 光源氏が37歳の時の秋の話である源氏物語30巻のタイトル
2.秋の七草とは
それでは秋の七草を具体的に見ていきましょう。
萩(ハギ)
ヨモギ類の低木で「万葉集」のなかでも最も多く読まれるなどなじみ深く、赤紫の花をつけます。
昔の元服の儀式(8月15日)では萩の枝にさした団子を食べるのが風習でした。
尾花(オバナ)
ススキのことで萱(かや)とも呼ばれます。
全国的に分布しており、豊かな実りと無病息災を祈るため月見には欠かせない花として飾られ、粥や餅を作って食す地域もあります。
葛(クズ)
マメ科のツル性樹木で、漢方薬として使われたり、葛粉として食されたり、繊維を衣服に用いたりと昔から私たちの生活に密着した植物です。
撫子(ナデシコ)
美しく清楚な女性の例えとしても使われるナデシコ属の花で、ピンク色の可憐な花をつけます。別名は常夏。江戸時代災いや不運が続く年に改めて正月をする際にナデシコを飾る風習があり、薬用にも用いられました。
女郎花(オミナエシ)
菜の花にも似た黄色くて小さい花をたくさんつけるオミナエシ科の多年生植物です。
東アジア一帯で見られますが、優雅な花として鑑賞するのは日本だけといわれています。
名前に「女」とつくことから歌人に特に愛好され、多くの和歌が残されています。
藤袴(フジバカマ)
川べりに自生していたといわれていますが、現在は絶滅危惧植物に指定されています。
キク科の多年生植物で乾燥すると桜葉のような香りを放ち芳香剤としても用いられました。
秋の七草のうち唯一中国原産で紫がかった白色の花をつけます。
桔梗(キキョウ)
憶良の歌で「朝がほ」と詠まれているのは桔梗を指すという見解が一般的です。
青紫色の星型の花をつけ、お盆に供える花として飾られてきました。
現在花屋に並ぶのは栽培されている初夏の早咲きの種が多く、本来の時期に自生で咲く姿はほとんど見られなくなってしまいました。
3.見て楽しむ秋の七草
春の七草は長寿と幸福を祈って食べるものですが、秋の七草は鑑賞して楽しむものとされています。
さまざまな鑑賞方法をご紹介します。
(1)芸術に触れる
秋は芸術の季節。文学のほか絵画の世界でも七草はおなじみのテーマです。
本物を見ることは難しくても、画集で見たり、ご自分で描いたりするとより一層親しみが湧くのではないでしょうか。
以下に著名な作品をご紹介します。
歌川貞虎:「風俗 秋七草」 歌川房種:「秋七草月の姿見」
歌川国安:「角田川秋の七草」 三代歌川豊国:「四季花くらべの内 秋」
(2)飾る
華道でも秋の七草は欠かせない存在。七草の数種を織り交ぜた生け花やフラワーアレンジメントでお家を彩ってはいかがでしょうか?お花屋さんや園芸店で切り花や苗を入手することができます。
(3)秋の七草狩り
秋の七草が見られる公園
万葉の森公園
秋の七草以外にも万葉集で詠まれている植物に親しむことができます。萩はトンネルになっており見頃の時期は頭上で咲き乱れる花を楽しめます。
住所:静岡県浜松市中区上島3-27-12(月曜・年末年始定休)
向島百花園
江戸時代より秋の七草の名所として人々に親しまれた公園です。秋には七草を鑑賞するイベントも行われます。
住所:東京都墨田区東向島3-18-3 (年末年始休園)
開園時間:9時~17時(最終入園は16時半)*イベントにより変動あり
入園料:一般 150円 65歳以上 70円
まとめ
いかがでしたでしょうか。
決して華やかではないものの、とても風情のある秋の七草。
万葉の人々が愛した素朴な美しさをぜひ味わってくださいね。