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妄想列島

少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口39-

2020.09.12 10:00

39 白兎の提案



彩里水はトイレに行った帰り、ハートの3に見つからないようこっそりキャンドーを持って部屋に戻った。


「彩里水。オレ、気付いたことがある。」


部屋に戻ると白兎が言う。


「おお、何?白兎。いつもいろいろすぐ気付くね。」


彩里水に褒められちょっと嬉しい白兎。


「うん、あのさ、さっき彩里水はキャンドーを部屋へ連れ帰ってきただろ?確かにキャンドーが光らなくなったら暗くてほとんど何も見えないけど、部屋に戻るときにはさすがに全然隠し切れてなかったじゃん?」


彩里水はキャンドーを手に持って割と堂々と部屋に戻ってきた。確かに隠せるような物は何もなかったが、せめて服の中に隠そうともしていなかった。


「おい、せめて隠すフリだけでもしろよ、とその時のオレが心の中で全力で突っ込んだのは言うまでもないが、言いたいのはそこじゃない。むしろ、そのおまえの天然加減で気付いたことがある。」


「うん。」


彩里水は白兎のちょっとした棘には気付かず、アッサリ先を促すように返事をする。


「で、さっき話した“トランプは数字で思考力とかが決まってるかも”って話なんだけど・・・。」


そこまで話しているとキップとクップも寄ってくる。彩里水が持ったままのキャンドーも混じり、作戦会議がまた開かれる。


「多分、ハートの3は“オレたちが外に出ないように”とか“部屋の中で騒いだり暴れたりしないように”とかそんな感じの命令を受けてそれを実行してるだけなのかなって思う。で、彩里水とオレ以外の誰かにはあんまり反応しないのかもとも思う。そこで相談なんだけど・・・。」


そう言って白兎はキップとクップ、キャンドーの顔を見る。


「君らなら鉄格子の隙間から外に出れるし、もしトランプの衛兵も気にしないようなら、縄を取りに行けるんじゃないかなって思ったんだけど。」


白兎は物型の3体の様子を見ながら続ける。


「まずは、トランプの衛兵が君らのこともしっかりマークしてるのか確認したい。もし君らがノーマークなら、オレらが縄を取りに行くよりずっと簡単になる。だからやって欲しいんだ。・・・頼めるかな?」


白兎は不安げにチラリと3人を見る。


それぞれがここを出るために協力はしてくれると言ったが、さっき会ったばっかりの者ののために、もしかしたら捕らえられる危険もあるかもしれない頼みを聞いてくれるのか、白兎は自信がなかった。


しかし、提案を聞いた彼らの顔は誇らしげに輝いてるように白兎には見えた。意外だった。

はじめにキャンドーが口を開く。


「わ、私に言ってますか?」


「うん。・・・無理にとは言わないんだけど、やってもらえるとすごく助かる。・・・どうかな?」


「う、う、う・・・・。」


キャンドーが俯いて呻きだしたのを見て白兎は慌てる。



――え!?何!?どうしたの?急に。燭台はたわいもない談笑をしていると急に呻き出すという性質があるの?それともちょっと無理ゲーっぽいお願いをすると急に獰猛な化け物に変化するとか!?そういう設定!?やだやだ!怖い!



「いや、い、嫌ならいいんだよ?」


「う、うううううううううううれしーーーーーーーー!!!!!!!」


キャンドーは目に涙を浮かべて喜んでいた。


「・・・え?」

彩里水と白兎は目を点にしてキャンドーを見ている。キャンドーは半べそをかきながら話し出した。



――何!?嬉しかったの!?苦しそうに見えたんだけどっ。怖いんだけどっ。何なのこのテンションの高さは!?燭台ってテンションの高い生き物なの!?てか燭台って生き物なの!?



「わ、私、嬉しいんです。私は、この塔のあの階段の途中で、誰の、何のお役にも立てずただただずーっとそこにいました。私たち物型の人は、物としての力を発揮してこそ、お役に立つことこそが喜びなのです。ですのに私ときたらただただずーっとそこにいるだけで、幾年月ただそこにいたことか・・・。」


「あ、そういうこと・・・。」


白兎はキャンドーのテンションに少し戸惑いながらも合点がいく。


「それが今日!白兎さんと彩里水が来てくだり、そして私が勇気を出して申し出たことを快諾してくださって早速!このように頼み事をしてくださるなんて・・・。嬉しくて涙が止まりませんっ!うっうっっ。」


感極まってしまっているキャンドーとそれを宥める彩里水を脇に置いて、キップとクップも白兎に応える。


「僕らも!嬉しいです。キャンドーと同じ物型。元々は純人型の方のお役に立つためにいるのです。それに・・・。」


そう言って、キップはワクワクを抑えきれないという表情でクップを見た。


「僕らが憧れていた冒険の世界ですー。」


クップもキップに応えるような表情を浮かべ、目を輝かせる。


「仲間が増えれば増えるほど、オレだけが庶民感覚だな・・・。」

白兎がぼそりと呟くと、彩里水は嬉しそうに言った。


「でも、やっぱワクワクしてくるね?」


「・・・まあな。」



つづく