夜を風切る自転車に乗って
2012.03.12 14:54
風を切る 自転車に乗って
夜の闇を遮るように
ヘッドフォンで耳をふさいで
ひとつ消える部屋 ひとつ灯る部屋
カーブで速度をゆるめる
片方だけアスファルトに張り付いた手袋
目の隅に見えるけれどすぐに視線を外す
いま余計なものに目をとられると事故を起こす
また前へ前へ ぐんぐん進む
ペダルを押し込む 押し込む
少しくたびれた人たちとすれ違う
手にされたビニール袋にいかばかりのモノが入っているか
よく熟れた果物のようにその手から垂れ下がっている
他人の一日の終わりの断片を横目に
押し込んで押し込んで押し込んで
進んで進んで進んで
一体どこまで行けるんだろうね
って思っていたらもうよく知った景色で
部屋の鍵を取り出す
真っ暗の部屋にただいまと言う
今度は自転車に乗って 風を切って
ペダルを押しこんで押しこんで 前へ前へ
もっともっと遠くへ行きたいね