少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口42-
42 実は1番は・・・
彩里水と白兎は2本の縄を固く結びつけると、あの大きな窓から垂らす。
すると、地面に届き少し余るぐらいの長さだった。
「おお!調度いい長さ!」
彩里水は窓の下を見ながら感動している。
「な!ここまでピッタリとは。」
白兎もまた自分の立てた作戦がスムーズに進行していくことを喜んでいた。
「わ!見て!白兎!」
窓の外から縄を回収しながら、彩里水がふと外の景色に目をやると、夜空には見たこともないほどの無数の星が夜空を埋め尽くすほどに散りばめられた宝石のごとく瞬いている。彩里水たちの元の世界と違うことは、目に映る星々が本物のジュエリーのように色とりどりに瞬いていることだ。
月が出ているにも関わらず、無数の星々はその月の光にその姿をかすませることなく煌々と瞬く。
夜の闇を明るく照らす星々や月のお陰で、目が慣れてくると、昼間同様に夜空を行き交ういろいろな生物の存在に気付く。
辺り一面に飛び交っているのは魚たちだ。よく見るとうっすら光を放っており、まるで海中を泳ぐようにゆったりと空中を自由に行き交っている。ハコフグのような魚にトンボのような羽が生えている。見上げれば星空の中を魚たちが、彩里水たちのささやかな作戦などはまったく意に介さずゆったりと、悠久の時を漫然と味わい尽くすかのように悠然と泳いでいる。
昼間たくさん目にした人型のミックスはおらず、猫型に蝶の羽と触角がついている生物や、鼠にコウモリの羽がついているような生物も飛んでいる。
海の生き物の中に混じって猫も鼠もそこら中を好きなように駆け巡り、捕食者と被捕食者の攻防が至る所で行われている。全ての生き物がこの瞬間を謳歌しているように感じられる。
耳を澄ませば「ホーッホーッ」と聞いたことがある鳥の声や、「リーリー」「クワックワッ」などその生を、自分という存在をここにいるよと言うかのように感じさせているのは目で見える者だけではなかった。
彩里水と白兎は息をするのも忘れてその星の輝きと生き物の生の往来に一時見惚れていた。
「はぁ~。・・・なんかさ、すごいよね、昼間も思ったけど。こんな景色、見て、竜の背中にも乗ってさ。」
彩里水は感慨深げに感嘆の溜め息を吐きながら言った。
「な。物と話して、しかもいろいろ協力してもらってさ。・・・今こんなとこに閉じ込められちゃって逃げようと必死になってるけど、なんか全部なんとかなるような気になってくるな。」
白兎も顔を半分夜空に向けたまま、チラリと横目で彩里水を見て答える。
「うん。」
彩里水と白兎は窓辺に手をつきながらニッとまた視線を交わす。
「・・・でもオレ、この変な世界に来て1番良かったのは実は白兎に会えたことかもなー。」
彩里水がしみじみというので白兎は照れながら答える。
「はあ?・・・なんだよ急に。」
「だってさ、多分1人だった怖くて不安で、今こんな景色見てもきっとすごいとか思えなかったと思う。ってか、気付いてもいないかも。1人だったらここから抜け出す作戦なんて立てられなくてただガムシャラになってただけな気がするよ。でも、白兎は頭も良くて作戦立ててドンドン実行してくれるし、それに・・・。」
彩里水はもう一度白兎を見ると続ける。
「1人じゃないから、何か楽しい!」
笑顔で言う彩里水に、白兎も自然と笑顔になる。
「そんなのオレもおんなじだよ。オレだって・・・。むしろオレ1人だったら考えすぎてきっと動けなかったと思う。でも、彩里水とか他のみんながドンドンオレの言ったことに賛同してくれて協力してくれたから、縄だって手に入れられた。」
「・・・おいー、なんだよ、急に。照れるだろ!」
彩里水が照れながら言うと白兎は真っ赤になって答える。
「お、おまえが先に言い出したんだろ!」
「白兎、おまえ顔が真っ赤だぞー。」
「おまえもだっつーの!」