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目に見える世界

2020.09.15 22:55

医学で目に見える世界は解剖学があります。


しかし、医療従事者であっても解剖を徹底的にやって実際の身体を知っているという人はごく少数です。私も解剖に立ち会った訳ではないので、解剖の隅々まで知っているとは言いがたい。

ただ、解剖の知識はあり、毎日3Dの解剖図とにらめっこしています。


また、解剖を徹底的にやり、手術を毎日している医師であったとしても、目の前に居る患者さんの身体が透けて見える訳ではありません。あくまでも想像でしか判断できません。

だから、やっぱり手術してみないとわからないというのが本音です。外科医が切りたがる気持ちは私にはよくわかります。


どうなっているのか知るには一番の方法だからです。MRIやCTで全てが見える訳でもありません。

MRIやCTも経験を生かして想像力を働かせないと決して読み切れません。想像の世界というのは、現代医学にも常に必要だと言えます。限りなく想像を現実に近づける技術が必要です。

だから想像なくして医療はなりたたないということです。想像することは医療の第一歩です。


つまり、実はこれも目に見えない世界なのです。


目に見えない世界で成り立っているはずなのに、目に見える世界だけで世の中が成り立っているかのような錯覚に陥るのは大きな誤解です。

例えば栄養学で、エネルギーを作る三大栄養素が必要だと言っても、三大栄養素が実際にエネルギーになっている姿を誰も見たことがないのです。研究者がこうなっているよと言った上に成り立っている理論に過ぎません。だから間違っているというのではありませんよ。しかし、誰も目の前で、その様子を確認したことがないのは事実です。


目の前にいる患者さんの栄養素がエネルギーになって筋肉に伝えて足を動かしているというのを誰も見たことがありません。それなのに、誰もが知っているかのように話しは進みます。

本当にそれでいいですか?

と疑問すら持たない。


そういう仕組みがあるんだという想像の産物のはずです。厳密に三大栄養素だけからエネルギーを作り出しているのか?

と問われたらどうでしょう。


誰も、その様子を見た訳ではないので本当かどうかはわかりません。基礎的なことも様々な実験で証明されたという条件の元に、こうだろうと推測しているに過ぎないということです。

知識と想像というのは、常にリンクしているのであって、知識は知識、想像は想像、本当に実際に起こっていることは実際に起こっていることという区別が必要です。


全て知識で問題を解決しようとすると無理があります。それは想像だけで解決しようとするのと全く同じです。お互いの限界を知り、お互いが協調しているということを知りながら問題を解決しようとするのがベターです。大事なことは、そういう姿勢であって、何が正しいとか何が間違っているという話しではありません。


冷静さを欠くような思い込みは、医学の発展を妨げます。だからこうなのかとわかったとしても、明日は変わっているかもわからない。そういう見方ができるかどうかで大きな違いがでてきます。

実質的には世の中は目に見えない世界で成り立っているのです。