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妄想列島

少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口49-

2020.09.17 10:00

49 塔脱出作戦決行!編2



一方、窓の付近では白兎は彩里水以上に焦っていた。


彩里水が窓の外に出ようとしていたその時、白兎はベッドに潜り込んでいたのだが、彩里水が無事窓の外に出たであろうことは、ベドがあげた小さな呻き声でわかった。


そしてそれと同時にスペードの3はものすごい速さで鉄格子に近づき中の様子を窺っていた。


白兎は彩里水が外にいることをごまかすように、自分がベッドにいることをあえてアピールした。


しばらく様子を見ていたスペードの3だが、鉄格子をガチャガチャと開けるような仕草をし始め、ハートの3は持ち場を離れた。

この様子を見て、白兎はもう彩里水が窓の外に出たことがトランプの3たちにはわかっているのだと悟り、寝たふりを止めた。

自分の姿が見えようとお構いなしに一目散に窓へ向かう。


鉄格子を開けたスペードの3が真っ直ぐ、白兎に向かって突進してくる。


白兎は窓の下へ降りようと縄を掴む。

一瞬、地上が視界に入りクラッとするが、そんなことで怯んでる暇は一瞬だってなかった。


ベドとドッベ、チェイスが行く手を塞いでいるため、真っ直ぐに白兎に向かってくることができないスペードの3は引っかかり倒れそうになりながらも徐々に白兎に迫っていた。


彩里水がまだ降りきっていないことは白兎にも十分わかっているが、このままだとスペードの3に捕まってしまう。


白兎はグッと縄を掴んで下に向かった。


部屋の様子がおかしなことに気付いたのはラープンだ。

スペードの3が部屋へ入ろうとしている。

だが、部屋の者たちは白兎が逃げようとしている事に協力しているように見える。

白兎を止めるべきか捕まえるべきか判断しかねていた。


白兎が窓を超えて下へ向かっていると、とうとう窓際に来たスペードの3は白兎を捕まえようと手を伸ばす。

ラープンは咄嗟にスペードの3に向かってその身を投げ出す。


「ラープンさん!」


白兎のポケットから様子を見守るしかないキャンドーは、思わず声を上げる。


不意に飛びかかられたスペードの3はグラリと体勢を崩す。


その隙に、白兎は縄を掴む手を一瞬緩め、重力に任せてズルズルッと下へ落ちた。

間一髪、白兎はスペードの3が身を乗り出しても手が届かない位置へ行っていた。


しかし体勢を整え直したスペードの3は、手が届かないということに気付いていない様子で、そのまま白兎を掴もうと手を伸ばしている。それは、壊れてしまった機械式の玩具が誰も見ていないのに動き続けている間抜けな様そのもののようだった。





上方でもう一度大きく振動したことで自然と手に力を込めながら、彩里水はまた上を見上げる。


すると、窓の付近で白兎はトランプの3に捕まりそうになっている。


冷や汗がブワッと全身に噴き出したが、それより何より今はとにかく下へ降りる以外に身動きが取れない。



――ここでもし、空中を自由に動ける種類の生き物が現れたら・・・。何もできないまま、みんな捕まるだけだ。



彩里水はあと少しで地上までジャンプして飛び降りることができるような場所まで来ていた。

震える手と高まる鼓動を落ち着けようとしながら、なるべく早く足と手を動かす。



――早く、とにかく早く下へ。



気が逸り鼓動もどんどん高鳴るが、それに反比例するように少しづつしか下へ行けないことがもどかしい彩里水。

上の様子も気になるが、気にしているより早く下へ降りなければならない。



――慎重に。焦らず。でも早く!



心の中で呟きながら降りている彩里水。


ヒュッ


その彩里水の横を何かが落ちていった。



――え!?今何か落ちてった!?



風音と共に落ちていった何か。白兎でないことだけを彩里水願う。

恐る恐る下を確認する。そこには



――え?