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抗菌アロマテラピー研究会

新型コロナによる嗅覚障害からの回復法

2020.09.18 00:02

  新型コロナウイルス感染症(疾患名COVID-19、ウイルス名SARS-CoV-2)は、これからの寒くなる季節を迎え、どう展開するのか予断を許さない状況です。最近では、回復後も体調不良に悩まされる場合が多いことが問題となっています。たとえば、COVID-19の感染から2か月後でも、約20%のヒトに嗅覚障害の後遺症が見られるそうです。

  COVID-19による嗅覚障害は、コラムでご紹介したように、嗅細胞を支えている支持細胞(粘液を出す杯細胞と線毛を有する線毛(繊毛)細胞)の死、脱落、さらにそれにより引き起こされる炎症状態により引き起こされていると考えられます。しかし長引く嗅覚障害には、匂いを感じる嗅細胞自身も障害を受けている状況が想定されます。そのような場合にはどうすれば良いのでしょうか。

  過去のコラムでご紹介しましたが、嗅上皮障害後の再生過程には匂いの入力が重要な役割を果たします。嗅細胞は軸索突起を持つことから神経細胞と位置づけられますが、通常の神経細胞とは異なり、常に新生されています。この新しい嗅細胞が既存の神経回路に正確に組み込まれるため、古い嗅細胞が失われても嗅覚はもとのまま維持されています。しかし新しく生まれた嗅細胞は、匂いの刺激入力がないと、既存の神経回路に組み込まれずに、死滅してしまいます。このように、嗅上皮障害後の再生過程に匂い入力が重要な役割を果たすことから、嗅覚障害状態のヒトに匂い刺激を与えることで嗅上皮再生を増進させる「匂いのリハビリテ-ション」が大切です。

  実際フランスのいくつかの病院では、COVID-19による無嗅覚の症状をどの程度治すことができるか調査計画を立ち上げ調べています。一つの試みは鼻洗浄です。当研究会の安部茂代表も、COVID-19の予防法として鼻うがいを推奨していますが、従来の喉うがいに加え効果が期待されています。フランスの研究グル-プは、鼻洗浄液にコルチゾン加え用いているそうです。コルチゾンについては、感冒後の無嗅覚症例の治療に効果があることが既に判明しており、COVID-19でも期待が持てます。

  もう一つの方法は、「匂いのリハビリテ-ション」です。これは難しいことではなく、身近にある大好きな匂い(好きな食べ物や果実、香草や精油)を数個選び、この匂いを1日2回、5~10分間嗅ぐと良いそうです。精油を加えた鼻うがい液との併用も効果が期待されます。(by Mashi)

参考文献:1)安部茂、新型コロナウイルスの感染症の制御には、鼻腔・咽頭の粘膜感染を防ぐのが最重要 Aroma Research 21, 73-79 (2020), 2)安部茂、呼吸器感染に対するアロマテラピ-、アロマトピア 160, 14-19 (2020)