少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口53-
53 決意
庭園に向かって歩く途中、白兎は言う。
「なあ、みんなはどうしたかな?」
「ああ・・・。」
彩里水も塔に残してきたみんなのことは気がかりだった。
ベドとドッベ、チェイスさんが、彩里水と白兎が脱走することを手助けする様子をトランプの3には見られていた。
トランプの3自体がその行為をどういうものか認識できているかは2人にはわからなかった。
「うまくごまかせたかな?」
白兎が尋ねると、彩里水は質問に答えず先程まで考えていた疑問を口にする。
「うーん・・・。トランプの3たちに見つかったじゃん?なのに追っ手があまりにもないのも気になってるんだけど・・・。」
「オレもそれは思う。・・・あ!そう言えばな、キップとクップ。」
白兎は思い出したことを伝えようと、彩里水の左右のポケットにそれぞれ収まっているキップとクップに向かって言う。
「ラープンさんのことなんだけど・・・。」
白兎はラープンがスペードの3に体当たりして自分たちが逃げる時間稼ぎをしてくれたことをキップとクップに伝えた。
話を白兎から聞いたキップとクップは青い顔になって呟く。
「ラープンさんが・・・。」
「女王様の直属のトランプの衛兵にそんなことをするなんて・・・。」
「ラープンさん大丈夫なんでしょうかー・・・。」
「僕らがいないことがわかったんでしょうか?」
「何も聞かずに協力してくれたということでしょうかー。」
ラープンの身を案じるキップとクップはすでに目にいっぱい涙を溜めている。
「正直、ラープンさんが何を知ってて、どうしてそんな行動を取ったかってことも、塔のみんながどうなってるかってことも今は確かめようがねえけど、でも、みんな間違いなくオレたちを助けてくれた。」
白兎は言った。
「ラープンさん・・・。僕ら、挨拶もせず来てしまったのに。」
「それにぃ、見つかってみんながどうなるとかぁ、僕ら脱出の作戦に夢中で考えなかったですー。」
キップとクップは声を揃えて泣きながら言った。
「僕らラープンさん不幸ものです(ー)。」
泣いているキップとクップを見て彩里水はいつになく真剣な面持ちで口を開く。
「・・・うん。そうだね。でも、ラープンさんに言わなかったのはキップとクップがラープンさんのことを思ってのことだったんだ。それに、作戦を話したときに最終的に協力をするかしないかはみんな自身で決めてくれたこと。だから、今はラープンさんやみんなのためにもキップとクップは絶対にこの城の外の世界をたくさん見なくちゃ。」
彩里水はキップとクップに優しく言う。
「彩里水さん・・・。」
キップとクップは涙目で彩里水を見上げる。
「ああ!オレたちもこの城の外まで、必ずおまえたちを連れてくからな。」
白兎が言うとチーム白水はこの城の外に出ることを改めて固く決意した。
つづく