殺陣的音響話 ー魔法って難しいー@牛居朋広
お久しぶりです、牛居朋広です。
今回は2回目の殺陣的音響話となります。
テーマは『魔法を使うにあたって』です。
完全に私見なので絶対ではないんですけど、これ、誰かに怒られないと良いなぁ......
さて、私はアクションサンプラーとして色々な殺陣のあるお芝居に参加する事があるのですが、
ファンタジー系作品なんかでは『魔法』がたびたび登場します。
炎が飛び交ったり、見えない壁で剣を止められたり、不思議な力で身体を束縛されたりするなど様々です。
物語として舞台上では実際に魔法が存在しているかのようにお芝居は進んで行きますが、
一歩外側から見るとそこには当然何も存在していないわけで、演技や音響効果などで作り出しているわけです。
これは音響効果もさる事ながら、演技の如何によって簡単に崩れ去る繊細な奇跡だったりしています。
前置きが長くなりましたが、そんな『魔法』を扱う時に気を付けている事をお話ししたいと思います。
まず、一番大切だと思っているのは『物理法則を無視しない事』です。
『魔法』なのに物理法則?と思われるかもしれませんが、どちらかというと『魔法』だから物理法則です。
というのも『魔法』というのは何でも作り出せる便利な嘘なのですが、実際には目に見えていないので舞台の上での想像力でしか見ている方には伝わりません。
この時に演者が物理法則を大きく無視すると、想像の世界がたちまち違和感だらけになってしまいます。
例えば「刀で切りかかった攻撃を見えない手で受け止められて左に払われる」という魔法のアクションがあるとすると、
・見えない手は刀のどこを持っているのか
・払った手は刀をどのくらいの力でどの方向に払ったのか
を無視すると想像の世界は霧散してしまうと思います。
刀を扱った事のある方にはお分かりいただけると思いますが、先端で受けられた時と根元で受けられた時は当然力の入り方が変わって来ます。
これを考慮しないで「刀が止った」だけを表現してしまうと、殺陣が漠然としてしまって違和感が生まれます。
同じように、つかんだ手を払って刀を流すときに「刀が左側に払われた」だけに注力してしまい「払われた速度」「払われた方向(左前?左後ろ?左下?)」などを無視してしまうと違和感が生まれてしまいます。
こうなってくると音響効果も虚しく鳴り響くだけで世界に何の力も寄与せず、魔法の説得力は無くなってしまいます。
『魔法』という何でもありな力を扱っている以上、それが効果を及ぼす我々の肉体はなるべく現実に沿ったアクションを起こした方が世界を壊さないでいられるのではないかと思います。
切った張ったの時もそうですが、こういう時は本当に殺陣は想像力だと感じます。
思いのほか長くなってしまったので今回はここまでにします。
ありがとうございました。
怒られないと良いな。
牛居朋広