少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口55-
55 オリジナルトラップ
「うん。」
彩里水はキャンドーが驚愕とも言える表情を浮かべていることには気付いたが、そこには触れず質問に短く返事をする。
「なるほど。ここで豆電球を使って同じ文面が書いてあるということは、同じことが起こる可能性はかなり高いです。こういう仕掛けをオリジナルトラップと言いますが、この仕掛けは練習すれば割と誰にでも作れるものなんです。オリジナルトラップという言葉の通り、その仕掛けの内容や仕掛けの発動のさせ方はまさに千差万別。作り手によって自由自在に変えることができます。」
「ほおおー。オリジナルトラップ。」
なんとなく格好いい言葉を耳にした彩里水は目を輝かせて豆電球を見る。
「だからこそ、発光体をスイッチとしてそのトラップ発動条件を「私を投げて」という文言をヒントに投げて発動させるというところまで同じとなると、同一人物が作ったと考えていいでしょう。」
「同一人物ってつまり・・・。」
キップがキャンドーを見て目で問いかける。
「ええ、おそらくこの従業員棟さんでしょうね。・・・そして、それは私がいた時代の従業員棟さんだという可能性も高いということです。」
「え?」
「ええ、名前をエンプと言いました。彼はいつもこのオリジナルトラップで我々にいたずらを仕掛けてきていましたからね。」
「ええー!じゃ、じゃあ、ご友人であれば僕らをいち早く出口へ誘導してもらうことも可能なのでは?」
キップが興奮気味にキャンドーに尋ねる。
「ええ。しかしもし彼なら私に声をかけてきてくださってもいいのに声をかけてこないところを見ると、何か事情があって声をかけてこないと思われます。」
「そうなんですかぁ。えっとでもぉ、久しぶりで気付いてないだけかもー。」
クップが遠慮がちに言うと、キャンドーは悲しげな顔で
「そうかもしれません。」
と答えた。しかしすぐにいつものキャンドーの顔に戻り言う。
「何が起こるかわからない以上、誰か1人が先に使用してみるのがいいでしょうね。私、ちょっと使ってみます。」
そう言うと、誰かが返事をする前に豆電球を床に投げつける。
パンッ。
小さな破裂音を立てて豆電球が割れる。
――何も起こんないな。
白兎がそう思った瞬間、キャンドーがフワッと浮いたかと思うとクルリと180度逆さまに回転した。
「わ!」
白兎は思わず声を上げる。すると180度逆さまになった状態のキャンドーが皆に声をかける。
「ほうほう。これはこれは。皆さん、180度逆さまにならないと見えない景色がここにはありますよ。特に身体に何か異常もありませんので、豆電球を投げてみてください。」
つづく