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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

バロックの時代17-ヴェラスケス「ブレダ開城」

2020.09.20 08:54

1634年、スペインに再び陽が昇らんと思えたとき、その輝かしき勝利となった「ブレダ開城」の絵の受注をヴェラスケスは受けた。官位も順調で、離宮ブエン・レティーロ増改築の装飾指揮官となり、その中のスペインの栄光を示す「諸王国のサロン」にこの絵は飾られた。

それまでもこの勝利は記録や絵画、舞台となっており、ヴェラスケスはそれをくまなく見て検討することができた。現実の城の鍵受け渡しは城門前で行われたが、画家はそれを戦場が見渡せる丘の上に設定した。中央には両軍が水攻めをし合ってできた湖が広がっている。

両軍はスペインが貴族的で、オランダは市民的と対照的。前景左のオランダ軍から馬の臀部に眼が移ってそのままスペイン軍から広大な戦さの舞台を見る視線誘導が計算されている。なお馬の横に自分を描くのも忘れていない。

中央で両軍を代表するのが、オランダはマウリッツの弟、スペインはスピノラ。スピノラは馬を降りて敗者をねぎらう気遣いを見せる。彼は29年に全財産を失って逝去したが、彼を知る画家はその名誉を永遠に残そうとした。また同時に、新旧教の戦いがこのような名誉ある和解で終わればいいとの願いとも思える。しかし37年ブレダはまたオランダに取り戻される。