Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

バロックの時代18-ヴェラスケス「道化の間」

2020.09.21 02:55

離宮ブエン・レティーロには、ヴェラスケスでなければできない部屋があった、「道化の間」の装飾である。道化や矮人は、宮廷で面白さをもたらす者として雇用されていた。16世紀後半からの150年間で、123名が居たことが記録によって明らかにされている。

この道化の間に、実に彼らの絵画をヴェラスケスは飾ったのである。その絵の中でも「ドン・ファン・デ・アウストリア」やオスマンの提督「バルバローハ」という名前があり、これらは宮廷で、この役を演じていた道化という推測ができるのである。

道化を描いたのはヴェラスケスが初めてではないが、真正面から彼らを「人間扱い」して描いたのは多分初めてだろう。傑作「パブロ・デ・バリャドリード」は、本名か役名かわからないが、絵だけ見れば貴族といってもさしつかえない。ご丁寧に背景を一切消して、その者だけを見せている。

下級の人間に聖性を与えるという特性は、初めからのものだが、ここまで徹底できるものか。一説として、ヴェラスケスの家系は実は改宗ユダヤ人コンベルソであり、社会に差別される者からの視点をもっていた、という説がある。ヴェラスケスの影響を受けたマネは「笛吹き」を描いている。

下左は道化師「パブロ・デ・バリャドリード」右は「セヴァスティアン・デ・モーラ」