DI:#2 査察でのデータインテグリティ関連指摘状況①
皆さん、こんにちは。パースペクティブの德原です。
前回は、「DI:#1 データインテグリティとは」というタイトルで投稿させていただきました。今回は、「査察でのデータインテグリティに関する指摘状況」を通じて世界でのデータインテグリティの遵守状況について見ていこうと思います。
1. FDAのWarning Letterの数から見るデータインテグリティの遵守状況
まずはFDA(*1)のデータインテグリティに関するWarning Letter(*2)の数を見てみましょう。
下記の記事及びデータを引用します。
記事によると、2018年にFDAが発行したGMPのWarning Letter 85通(全数から調剤薬局や外部委託無菌調剤/充填施設宛てを除いた数値)のうち、約半数にあたる49%:42通 が、データインテグリティの不備を改善する指示の内容でした。
2008年から2018年までのデータインテグリティに関するWarning letter数(Figure 1)をみると、2018年は2017年に比べると件数が減少はしましたが、10年間でみると増加傾向にあります。
またデータインテグリティに関するWarning Letterが発行された国別でみると(Figure 2)、査察実施数の違いがあるため発行件数による単純な比較はできませんが、中国、アメリカ、インドだけでなく、日本をはじめ、様々な国の企業でデータインテグリティの不備を改善するよう指示を受けていることが分かります。
以上より、FDAのWarning Letterでは、データインテグリティに関する指摘件数が多く、指摘全体に占める割合も高くなっており、発行される地域にも広がりがあることが分かりました。このようにデータインテグリティに関する多数の不備がどの地域でも見つかっており、改善や再発防止が求められています。
次回の記事では、日本の行政による査察での指摘をピックアップしてみたいと思います。
<補足>
*1:FDA*(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)とはアメリカの公的機関で、医薬品、化粧品及び医療機器などの許認可や規制、安全性や有効性の評価、臨床試験の規制、違反事例の取り締まりなどを専門的に行っています。アメリカで医薬品を販売するにはFDAによる査察を受け、販売の許可を得る必要があります。
*2:Warning LetterはFDAが査察後にその企業が重大な違反をしていると判断された際に発行される警告状のことで、その内容はFDAのHPに掲載されます。