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妄想列島

少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口57-

2020.09.21 12:00

57 キップの偵察



キップは足元にあるガラスの扉に近づく。ガラスの引き戸は磨りガラスになっていて、姿はハッキリとは見えないが気配は感じることができる。


「やあキップ、おはよう。早いんだね。」


キップがガラスに近づくと、突然挨拶をされ、心臓が跳ね上がるような気がするキップ。欠伸をしながら挨拶をしてきたのはガラスの扉だった。


「まあね。おはよう。・・・ちょっと外の様子を見たいんだけど、扉を少しだけ開けてくれる?」


まだみんな眠っていると思ったが、肝心の扉が起きているなんて、と、キップはこれについてどうしたものかと考えあぐねた。


「またか。今日はクップは一緒じゃないの?」


「うん。今日は朝早く目が覚めたから。」


「そうか。」


そう言うと、もう一度欠伸をしながらガラスの扉はほんの少しだけ自身の身体を開く。

キップは隙間から下を覗き込む。


まだこの扉の外に一般の者たちがいる気配はない。この夜明けの時間に庭園に人がいなくてもなんら不思議はない。


しかし、いつもいるはずのトランプの6の衛兵たちも今は姿が見えない。


さらに小さな身体を前屈みにして扉の向こうに身を乗り出すようにして辺りを見回す。


そこには、キップが降り立ったことがない場所の景色が広がっていた。


いつも、従業員棟の中から、何か扉が開く度にクップと共に憧れの眼差しで見てきた。時には今のように、外の世界が見たくてコッソリ扉を開けてもらって外を眺めることもあった。ガラス扉のガーラは2人が外の世界に憧れていることを知っていたので良くしてくれていた。


いつも出口が違う場所にあるが、それでも庭園と従業員棟の境目は5mほどの間が開いてグルリと従業員棟の四方を取り囲むように高い塀がそびえていた。


従業員を、城の者を守るためでもあり、外へ逃がさないためでもある高い高い塀。


実際の高さは5mほどだが、小さなキップにとってはあまりにも高い塀であり、この塀以外の外を目にすることはなく、そしてその塀でさえこれ以上は決して近寄ることはなかった場所だ。


今からそこへ、いや、その先まで、とうとう飛び出すことができると思うと喜びで胸が打ち震えるのを堪えきれない。


しかし、ここでガーラに外に出ることが知られたり、いつもと違う脱走仲間を連れていることが露呈してはいけない。キップは素早く思考を巡らせる。


ひとまずチームのみんなの元に戻り、現状を報告することに決めた。


「今日もありがとう、ガーラ。ところで、ここの衛兵たちの交代はもう終わった?今はいないみたいなんだけど。」


戻る前に少しでも情報を得ておこうとガーラに怪しまれないよう軽く質問をする。


「ああ、衛兵たちは今頃が調度交代の時間だよ。・・・1人もいないなんてことは珍しいけど、本当に誰もいないの?」


「うん。今日は何か特別なことでもあったっけ?」


「いや、そんなのはないんじゃない?まあ女王さまの気まぐれパーティーがいつ始まるかは、わからないけどね。」


少し嫌みっぽく言ったガーラにキップは少し厳しめに言う。


「しっ!そんなこと、冗談でも言ったら首を切られてしまうよ。」


ガーラはハッとして辺りを見回すと答えた。


「ああ、そうだね。僕はまだ寝ぼけているみたいだ。もう少し寝たいんだけど、いいかな?」


「うん。まだ早いから大丈夫だよ。朝早くに開けてくれてありがとう。」


そう言うと、キップはみんなの元へ戻った。



つづく