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妄想列島

少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口58-

2020.09.22 10:00

58 ガラスを通って



「今、見張りの衛兵たちがいないようです。それに、今なら扉のガーラも眠っています。見張りがいないのはもしかしたら罠かもしれませんが、もしかしたら交代でいないのかもしれません。だとしたらチャンスは今しかないと思います。」


キップに報告された白兎は答える。


「そうか。いろいろゆっくり作戦を立てたり迷っていると、もし、交代でいない場合は戻ってきちゃうってことか・・・。うーん、その先の情報ホントにないし、こんだけオレの常識が通じないと作戦って言ってもなー。」


彩里水はどちらにせよ自分とは同じ常識を持っていないと判断した白兎はあえてオレと発言し、天を仰いでお手上げのポーズをする。


「まあ、わかんないことで悩んでもしょうがないよ!今がチャンスかもしれなくて時間もないかもしれないならとにかく行ってみようよ!」


彩里水に言われ、白兎も同意する。


「うん、行ってみようか!」


キップを先頭に一同は庭園の扉の前に立つ。キップは小声でガーラに声をかける。


「ガーラ!寝てる?」


「・・・。」


ガーラの反応はない。


キップが目で彩里水と白兎に合図すると、2人はソッと扉を少し開けてみる。


「んん?」


ガーラが小さく声をあげたので、彩里水と白兎はビクッとして動きを止める。しかし、寝ぼけて声を上げただけのガーラは、また反応がなくなる。


彩里水と白兎は自分たちが通れるギリギリまでガラス戸を引き開けた。

その先を確認するとそこには、ここへ来たときに見た庭園と城の間に少しだけあった場所の景色があった。

周りに生き物の気配はなさそうだ。


「うん。やっぱりトランプの衛兵たちはいなさそうだね。」


「おう。しかし、へんな景色だよな。いつまで経ってもこの感じ慣れないわ、オレ。」


白兎の感覚では、扉は床にあるのでそこを開けたら地面があるはずなのだが、扉の先には、扉が壁面にあるとして見た状態と同じ水平線上に地面があり、見下ろしたすぐ先には塀が一面に広がっている。

普通に考えればプールに入るときのように足から入るか、屈んで頭から入るかする。


「でも、足から入ったらどこに着地することになるんだろ?ここから見えてる地面に足をつきながら・・・?それとも頭から入るなら、地面に這いずるようにする?」


彩里水は扉に入ろうと足を出し、どこに着地すれば良いのかと足を引き戻す。


「そもそもこの従業員棟から出た時、重力の状態はどうなってるんだろ?さっきの豆電球の効果はまだ続いてんのかな?」


「そう考えると、地面に這いつくばるようにして出るってのが1番にいいかもな!よし、行ってみる。」


彩里水はフンッと鼻息を漏らし小さく気合いを入れると、言葉通り這いつくばるようにして頭を扉から出す。


キョロキョロと辺りの様子を見渡すと、そこにはやはり見張りはいない。そのまま這いつくばるようにして足まで出たところで立ち上がる。


ここでは豆電球の効果は消えているようだった。


彩里水は従業員棟と庭園とを隔てる塀との狭間のスペースに立っていた。



つづく