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なるの台本置き場

【男1:女1】10年前の私へ

2020.09.21 13:00

男1:女1/時間目安25分



【題名】

10年前の私へ



【登場人物】

荒木悠良(あらきゆうり):売れないシンガー

椿澪(つばきみお):大女優(芸名は『レイ』)



(以下をコピーしてお使い下さい)


『10年前の私へ』作者:なる

https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/10378750

荒木悠良(男):

椿澪(女):




-------- ✽ --------






001 荒木:引退おめでとう。レイ。


002 椿:引退は数ヶ月先だけどね、ありがと。……で、なんでここにいるわけ?


003 荒木:大女優のレイ様がここにいるのが見えたから?


004 椿:同窓会の会場は校庭のはずですけど?


005 荒木:まぁそう言うなって。


006 椿:せっかく誰にもバレないように来たのに。


007 荒木:俺の目は誤魔化せない。


008 椿:ハイハイ。……久しぶりね、最近どう?


009 荒木:まぁボチボチ。そっちは?


010 椿:ニュースとか見てるでしょ?絶好調よ。


011 荒木:絶好調なのに引退するのか?


012 椿:一番価値があるうちに終わらせるのが肝なの。


013 荒木:ふーん。よくわかんねぇわ、俺には。


014 椿:毎年誕生日を迎える毎に自分の商品価値の話をされる気持ちなんて知らなくていいと思う。


015 荒木:大変だな、女優も。


016 椿:まぁね。でも大変なのはそっちもでしょ?


017 荒木:俺は……そうだな。売れないシンガーだから。(笑)お前とは違う意味で大変だな。


018 椿:売れるとか売れないとかってよく分かんない。……あそこでワイワイしてる人達の中で何人が売れてると思う?


019 荒木:レイくらいだろ。


020 椿:私以外で。


021 荒木:嫌味か。


022 椿:別に?そういうつもりじゃないけど。


023 荒木:まぁ、あの中ならマツモトくらいじゃないか?


024 椿:マツモトくんってあのスーツ着てる子?何の仕事してるの?


025 荒木:あいつ弁護士になったんだよ。大学卒業した時くらいにやった同窓会でかなり話題になったけど。


026 椿:仕事でパリにいた。


027 荒木:なるほど。そりゃ知らないわけだ。あと、同級生の名前くらい覚えとけ。


028 椿:レイが好きな同級生なんて忘れた。ミオを好きでいてくれる子はちゃんと覚えてる。


029 荒木:例えば?


030 椿:リエ、マキ、ナカムラ、サトウくん。……あとあんた。


031 荒木:少ないな。


032 椿:そんだけみんな変わったってこと。……それにしてもさ、懐かしいよね。この黒板とか机とか。今座ると椅子がちょっと低く感じる。……あーあ、あの頃は楽しかったな。


033 荒木:そうだなー、まぁ俺はあんまりいい思い出ないけどな。


034 椿:そう?


035 荒木:ギター弾いてて学年主任に怒られたのもここ。アイツらと馬鹿やって怒られたのもここ。ポテチ食べて怒られたのもここ。


036 椿:全部怒られた記憶じゃん(笑)


037 荒木:あと、お前に振られたのも、ここ。


038 椿:そんな事もあったね。……まだ弾いてるの?ギター。


039 荒木:もちろん。俺からギター取ったらなんも残んねぇよ。


040 椿:それもそうか。


041 荒木:お前なぁ。こちとらちょっと気にしてるんだからな?


042 椿:そうなの?私好きだけどな、アラキの声も歌も。


043 荒木:あ、りがとう。何だ急に。


044 椿:素直な感想。


045 荒木:……レイのそういう所が人気の理由なんだろうなぁ。


046 椿:何それ。


047 荒木:素直な感想。


048 椿:それ私が言ったやつ!


049 荒木:そうやって突っかかってくるとこ、変わってないのな。


050 椿:人なんてそう簡単に変わらないよ。


051 荒木:人間みんなすぐ変わるんじゃなかったのか?


052 椿:え?


053 荒木:さっき『そんだけみんな変わった』って言ってたろ。言ってること矛盾してる。


054 椿:うーん。じゃあ前言撤回。


055 荒木:なんだそれ(笑)


(間)


056 椿:アラキ達が馬鹿やって怒られて、教室の掃除やらされた時さ、何して怒られたんだっけ。


057 荒木:漫画とグラビア雑誌の回し読みしてるのを担任に見られた。


058 椿:あー、そりゃあ怒られるね。


059 荒木:結局グラビア雑誌の方は返って来なかったからあいつの私物になったと思われる。


060 椿:何それ……知りたくなかったわ。(笑)


061 荒木:まぁただの噂だから本当にどうなったかは知らないけどな。


062 椿:そっか。……あ、そうだ。


<椿がカバンから写真集を取り出す>


063 椿:これ、あげる。


064 荒木:何これ。


065 椿:今度発売される写真集。直筆サイン入り。


066 荒木:おまっ……こういう物をポンって出すんじゃないよ……。


067 椿:ダメ?


068 荒木:下手したらプレミアの価値がつくやつだぞ?正気か?


069 椿:家にまだ5冊くらいあるから。家にあっても仕方ないしあげる。


070 荒木:自分の写真集なのにそんな貰うのか?


071 椿:出版社が『お友達にあげてください』っていう名目で送ってくるの。ほら、宣伝してなんぼの世界だからさ、女優仲間とかにプレゼントしたら宣伝にもなるでしょ?そういうやつ。


072 荒木:俺に渡すメリットなくない?


073 椿:宣伝用は別に取ってあるから。これは親族とか身内用のうちの1冊。


074 荒木:そうかよ……で、このサインは?


075 椿:それはおまけ。


076 荒木:おまけでサイン書くなよ……レイのサインが入ってるものはファンの間で高額で取引されるんだからな?


077 椿:へー、そうなんだ。……で、貰ってくれないの?


078 荒木:……遠慮なく貰う。


079 椿:あはは、流石アラキ。


080 荒木:ありがとう。家宝にします。


081 椿:それは光栄です。


082 荒木:それにしても、本当に凄いな。まさか元カノが女優になって写真集まで出すとは。


083 椿:そりゃあ夢だったから。


084 荒木:『誰もが認める大女優になる』だったよな。


085 椿:うん。……なれたと思う?


<荒木が携帯で調べ始める>


086 荒木:えーっと?……日本を代表する女優、レイ。高校卒業と共に映画に出演して大ブレイク。多数のCMにも出演している。ウィスキーのCMで高い歌唱力を披露し話題になった。現在は女優業の傍ら、有名ファッション雑誌の専属モデルも務めている。


087 椿:何読んでるの?


088 荒木:1番上に出てきたレイ関連の記事の紹介のところ。こんな風に紹介されてる当たり『大女優』何じゃないのか?


089 椿:私は、アラキはどう思うかって聞いてるの。


090 荒木:うーん。


091 椿:ちゃんと、素直に、教えて。


092 荒木:俺はレイが嫌いだ。


093 椿:ここにアンチいたー!(笑)


094 荒木:傷ついた?


095 椿:ちょっと(笑)


096 荒木:理由、聞く?


097 椿:聞きたいけど聞きたくない、けど聞きたい。


098 荒木:どんな理由でも笑うなよ?


099 椿:善処する。


100 荒木:……俺のミオを奪ったから。


101 椿:(笑う)


102 荒木:笑うなって言ったろ。


103 椿:いや、予想外過ぎるじゃん、だって!


104 荒木:お前が、頑張ってる姿はずっと見てたよ。デビューした時からずっと。


105 椿:そう、なんだ。ありがと。


106 荒木:おう。絶対気づいてないと思うけど、インスタもフォローしてる。


107 椿:嘘!ホントに?


108 荒木:ホント。


109 椿:うわぁ、なんか恥ずかしいな。


110 荒木:まぁ……惚れた女の頑張る姿を見ない男はいないだろ。


111 椿:……あはは!ヒューヒュー!アラキくんかっこい〜!


112 荒木:バカにしてんだろ!


113 椿:してないよ。……嬉しい。


114 荒木:そうかよ。


(間)


115 椿:あーあ!引退したら何しよう。


116 荒木:引退してもどうせお前は引っ張りだこだろ?


117 椿:どうだろうね。引退したばっかりの時はそうかもしれないけど。


118 荒木:やりたい事は?


119 椿:普通の生活がしたい。


120 荒木:なんだよ普通の生活って。


121 椿:太陽が昇ってから起きて、朝ご飯を食べて、掃除して洗濯してご飯作って、少し好きなことして、夜ご飯食べて、食べ終わったらゆっくりして、それで寝る。あと普通にショッピングモールにも行きたい。


122 荒木:引退したら出来るんじゃないか?


123 椿:だといいなぁ。あとプールとか海にも行きたい。日に焼けたい。


124 荒木:そういえば、付き合ってる時から日に焼けるって言ってそういう所行かなかったもんな。


125 椿:その節はごめんね。


126 荒木:別にいいよ。そのくらい。


127 椿:高校のカップルといえば定番のデートスポットじゃん?


128 荒木:知らねぇよ、定番とかは。行きたいとこ行けばそれでいいだろ。


129 椿:(呟く)そういう所が好きだったんだよなぁ。


130 荒木:なんか言ったか?


131 椿:何でもない。


132 荒木:そっか。……なぁ、1個聞いていい?


133 椿:いいよ、1個ね。


134 荒木:何でずっと同窓会来なかったんだ?


135 椿:んー、それは秘密。


136 荒木:じゃあ違う質問。引退はいつなんだ?


137 椿:次の春。


138 荒木:それは知ってる。もっと細かい日付は?


139 椿:私が女優としてデビューした映画の公開日。


140 荒木:……ぴったり10年で女優辞めるってことか?


141 椿:質問は1個って言ったでしょ。おしまい。


142 荒木:はいはい、俺が悪かったよ。


143 椿:じゃあ私からも質問。


144 荒木:どうぞ。


145 椿:10年前にした約束、覚えてる?


146 荒木:どの約束のことだ?


147 椿:『10年後、私が大女優になれていたら、その時は私をお嫁さんにしてくれる』ってやつ。


148 荒木:そんな約束もしたなぁ。


149 椿:どうするの?この約束は。


150 荒木:ツバキはどうしたいんだ?


151 椿:……ユウリ、私の方がお金持ってても怒らない?


152 荒木:そんなの今更だろうが。高校の時からそうだったよ。あと名前で呼ぶな。


153 椿:……ユウリ、私が料理下手でも怒らない?


154 荒木:お前が料理出来ないのも今更だ。俺が作るから安心しろ。


155 椿:……ユウリ、私が怒りっぽくても怒らない?


156 荒木:大女優レイ様は温厚な性格なんじゃなかったのか?


157 椿:ミオは違うもん。


158 荒木:……そんなこと昔から知ってるよ。


159 椿:………ユウリ、私が。(※被せ気味)


160 荒木:(※被せ気味)そのユウリ、ユウリって名前呼ぶのはわざとなのか?そろそろ怒るぞ?


161 椿:だってユウリはユウリだもん。


162 荒木:あざとい女優め。


163 椿:女優だし。


164 荒木:知ってる。……本当に俺でいいんだな?


165 椿:何よ今更。


166 荒木:こんな売れないシンガーが相手でいいのかって聞いてるんだよ。


167 椿:いいに決まってるじゃん、バカ。アホ。


168 荒木:分かった。……引退の日、諸々が終わったら迎えに行くから。パーティみたいなのどうせするんだろ?二次会行くのは禁止。いいな。


169 椿:……うん。分かった。


170 荒木:よろしい。……最後まで夢を貫けよ。


171 椿:うん。最後まで見ててよね。


172 荒木:当たり前だ、ファン第1号だからな?


173 椿:そうだね。……ねぇ、また弾いてよ、あの曲。


174 荒木:お前の好きな曲だろ?あれ長らく弾いてないんだよなぁ。


175 椿:ちゃんと練習しといて。


176 荒木:分かった、分かった。……まぁ、あの曲は今のお前にピッタリだな。特に歌詞が。


177 椿:私もそう思う。


178 荒木:そうだ、お前歌上手いんだから、代わりに歌ってよ。俺弾くから。


179 椿:やだ!ユウリが歌ってるのを聞きたいの。


180 荒木:えぇ〜。じゃあ俺も歌うしお前も歌う。それでいいだろ。


181 椿:それならいい。


182 荒木:よし、じゃあそういう事で。……あ、あいつら、そろそろタイムカプセル掘り返すみたいだぞ。


183 椿:10年経ったんだね、あれから。


184 荒木:何しみじみしてんだ。


185 椿:だって10年だよ?なんかあっという間だった。


186 荒木:俺の10年は長かったよ。


187 椿:10年の大恋愛、だもんね。


188 荒木:うるせぇ。ほら、行くぞ、ミオ。







189 椿M:10年後の私へ。今何してますか?夢、叶えられたかな?正直未来の自分宛に何を書いたらいいか、全然分からないけれど、これを見る頃の私は、夢を叶えていると信じているので!『お疲れ様!よく頑張った!』10年後にこの言葉をかけられるように私は今頑張ってます。でも、心残りがひとつあります。ユウリと別れた事。止まった時間を進めてください。それは私には出来ないから、貴女に託します。……10年後の私が幸せでありますように。



190 荒木M:10年後の俺へ。今何してる?ギター少しは上手くなったか?金持ちになってたら俺の夢だった漫画の大人買い、代わりにやってくれ。あと、俺はミオが好きだ。ずっと好きなままだ。俺みたいに後悔するなよ。 







191 椿:あああ!疲れた!


192 荒木:お疲れさん。大女優らしからぬ台詞だな。


193 椿:あんなに沢山の人から一度に見られる機会なんてそうないからね?


194 荒木:ハイハイ。俺らとは逆だな。


195 椿:ユウリ達はライブとかで人前に立つもんね。この前何人だっけ?


196 荒木:この前は5000人……だったかな。


197 椿:売れたね。


198 荒木:まぁミオのお陰だけどな。


199 椿:そんな事ないよ。ユウリが頑張ったから売れたんでしょ。


200 荒木:ミオがインタビューで好きな曲を聞かれて、俺の名前出したから話題になった、んじゃなかったか?


201 椿:好きなのはホントだし。そこから先はユウリの頑張り。


202 荒木:半分ミオのおかげ、半分俺の頑張りってことでいいか?


203 椿:おっけー!……最初の愛の共同作業だね!


204 荒木:バカタレ。


205 椿:ユウリの意地悪。乗ってくれてもいいじゃん。


206 荒木:ハイハイ。


207 椿:ねぇ、スピーチかっこよかった?


208 荒木:すげぇかっこよかった。


209 椿:やったね。


210 荒木:そんな大女優様に質問。赤がいい?白がいい?


211 椿:んー、白!


212 荒木:おっけ。……何書いてんの?


213 椿:レイとして最後の投稿の文考えてる。


214 荒木:おーおー、大変だな。


215 椿:なんか、最後って考えたら書くこと色々あってさ。


216 荒木:そうかよ。まぁじっくり考えな。


(間)


217 椿:ねぇ、これでいいかな?


218 荒木:自分の思うように書きな。


219 椿:え、ちょっと確認してよ。


220 荒木:やだ。これはレイのファンとして見たいから、投稿されるまでは読まない。


221 椿:変なとこ律儀なんだから。全く……よし、投稿した!


222 荒木:……お、出てきた。……この写真にしたんだ。ふーん。


223 椿:やっぱりこの写真にしたくて。年齢とか色々心配してくれるファンの方も結構いたから(笑)


224 荒木:あ、俺ここ好き。『10年、レイとして生きれた事を誇りに思います。これでレイはおしまい。レイはここにおいて、私は新しい人生を歩みます。』


225 椿:恥ずかしいから声に出さないでよ。


226 荒木:悪い悪い。……改めて。お疲れ様、レイ。そしてこれからもよろしくな、ミオ。


(間)


227 椿M:10年前の私へ。貴女の頑張りでレイは沢山の愛を貰いました。どうだったかな?夢に見た女優に、私は今なれてるかな?そしてユウリの事。私は今でもユウリが好きだよ。あいつとの約束があったから頑張れた。貴女もそうだったんじゃないかな?……貴女に託された思い、ちゃんと受け取りました。……今までありがとうね、お疲れ様。……アラキ ミオより。



(終)