少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口59-
59 願えばやってくるって言うのかよ
外に出てみると、そこにはガラス扉の中に壁に足から生えているように立っている白兎の姿が見える。
――白兎にはオレがどう見えてんだろ?
そう思いつつ彩里水は指で丸を作り、白兎に合図を送る。
彩里水からの合図を受け取った白兎は彩里水と同様に這いつくばるようにして外へ出る。
「あれ?」
彩里水の視線を追って白兎が振り返ると扉が消えている。
「白兎が外に出た瞬間に扉が消えた。」
「また従業員棟さんの気まぐれか?・・・ま、とにかく先を急ごう!」
白兎は気まぐれだけではないような何かを感じながらもとにかく逃げることに集中しようと頭を切り替える。
「この塀にも門があるはずだよな。」
白兎が辺りを見回すと彩里水が言う。
「あっち!あそこに門があるんだけど、そこの前には、見て。」
白兎が彩里水の示す先を見ると、そこには庭園に続く門が確かにある。
しかし、その手前には、彩里水と白兎が遭遇しなかったトランプの6たちが従業員棟に入るための入り口を守っていた。
「や、やっぱり、トランプの6は従業員棟に入る扉を見張ってんだな。」
「うん、ここは距離が離れてるし、トランプの衛兵たちがあまり自らの意思で動かないんであれば気づかれにくいとは思うんだけど、隠れるとこもないし結構ピンチだよね。」
「ああ、あの門を通るにはあいつらの目の前通んなきゃいけないわけだしな。」
「困りましたねー。」
キャンドーが白兎のポケットから口を出す。
「あのさ、オレ思ったんだけど。」
キャンドーを見て彩里水は口を開く。
「従業員棟さんは、オレらの邪魔をしたんじゃなくてもしかして助けてくれたのかな?なんて。キャンドーの知り合いなんでしょ?わざわざトランプの衛兵たちがいないとこに出口作ってくれたんじゃないかって・・・。」
考え込むような仕草のキャンドーの代わりに白兎が答える。
「オレもそんな気もしないでもないけど・・・。でも、普通に考えると城の従業員なんだし、王様たちの命令に従うんだろ?邪魔する理由はありそうだけど助ける理由は・・・キャンドーさんを助けるため?」
「うーん、だとしたら久しぶりに会う旧友に声をかけてくれてもいいような・・・。」
キャンドーは考える仕草のまま言う。
「まあね。けどまあ、邪魔されたと思ってるより助けてくれたと思ってる方が気分いいよね!」
ニッと笑いながら彩里水は言う。
「まあな。ま、確かめようもないしなー。・・・それよりここ、どうする?」
庭園へ続く門の方を見ながら白兎が言う。
「門から行くより、塀を越えたりできないかな?」
彩里水は目の前に見えている5m程の高さで切れ目無く四角く周囲を囲っていると思われる塀を見ながら提案した。
「え?ここをかよ?よじ登るとか言うレベルじゃないだろ?忍者じゃないんだから。おまえはどうかしらないけど、オレは一般庶民なんだからな。」
白兎は5m近くある塀を見上げた。つるりとしている塀には足をかけるようなところも何もない。
「や、オレも何もなしじゃ無理だけどさ。なんかここっていろいろ変なことが起きるじゃん。例えば物だと思ってたら喋って協力してくれたり、電球投げるとフワッと浮いて回転して天井に立てたりさ。」
「む・・・。確かに。」
「そ。この先はキップたちもわかんないわけだし、門から正面突破より、衛兵がいないところに降り立てたらその後も逃げやすいよね。」
「そうだけど・・・。願ってたらなんか向こうからやってくるってわけでもないだろうし・・・。」
塀の高さを改めて見ながら策はないかと考える白兎。
「え?なんで?」
「・・・え?何でって・・・。」
白兎が彩里水を見ると、彩里水は本当に「こいつ何を言ってんだ」と言う顔で白兎を見ている。
つづく