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Botanical Muse

美しさのまとい方 女性の脳と閉経期

2020.09.28 08:07

【閉経すると私の脳はどうなるのか】

女性のホルモンは閉経の数年前から変化しはじめている。女性の脳は42歳くらいでエストロゲンに対する感度が鈍くなり、月ごと年ごとに変化するさまざまな症状が現れる。この脳におけるエストロゲン感度の変化そのものが閉経の引き金になると考えられている。47、48歳あたりになると、女性の脳の安定性はほとんど毎日のようにぐらぐらしておぼつかない。卵巣がエストロゲンの産生を止めてしまう閉経の2年ぐらい前から、つくられるエストロゲンの量が不安定になり、そのために大変な思いをする女性もいる。

閉経そのものは理論的には24時間で終わる。最後の生理から12ヵ月目の1日だ。その翌日から閉経後の期間がはじまる。この1日までの12ヵ月がいわゆる閉経期の最後の1年ということになる。


女性の脳は42歳から45歳くらいで閉経の最初の段階がはじまり、それが閉経までの2年から9年続く。この期間になんらかの理由で脳のエストロゲンに対する感度が低下しはじめる。ぴったりと調子が合っていた卵巣と脳の対話が乱れだす。月経周期を律していた生物学的時計もあてにならなくなる。この感度の変化によって月経周期のタイミングが変わり、月経が1日か2日早くなる。また経血量も変化する。脳のエストロゲン感度が下がると、卵巣はそれを補おうとして月によってはさらに大量のエストロゲンをつくりだす。そうすると経血量が増える。また脳のエストロゲン感度低下はほてりから関節痛、不安、うつ、性欲の変化など、月によって年によって変わるかまざまな症状を引き起こすことがある。ブドウ糖に対する脳の反応も急激に変化し、エネルギーが大きく上下して甘いものや炭水化物が欲しくなる。


閉経期の問題として、うつは驚くほど多い。閉経期の女性たちはうつのリスクが通常の14倍に上ることは研究で証明されている。閉経期の終わり、閉経の2年ほど前が特にリスクが高い。それはエストロゲンの変化が最大になると、エストロゲンに支えられていた神経伝達物質と脳細胞、たとえばセロトニン(ストレスに対して効能のある脳内物質)細胞が阻害されるからだといわれている。要するに閉経期は脳のエストロゲンおよびストレス感度が変化するので、気分の不安定や苛立ちに対してもろくなるのだ。

それまでうつを経験したことがない女性でも、いきなりうつになるかもしれない。この閉経期うつは、軽ければエストロゲン補充療法だけで治療できる場合がある。


別に何かが起こったわけでもないのに人生に喜びが感じられなくなるのは、脳のエストロゲンが低下して、そのために気分を高揚させるセロトニンやノルエピネフリン、ドーパミンも減ったせいかもしれない。苛立ち、集中力低下、疲労感などはエストロゲン減少によって引き起こされ、不眠によって悪化する。


閉経期の多くの女性にとって大きな問題は(ほてりがある場合もない場合も)睡眠だ。適切は眠りがとれないのは人生のどんな時期でも健康ではないが、40歳を超えると問題はとくに深刻になる。脳をリフレッシュするために、睡眠は欠かせない。残念ながら閉経期のエストロゲンの乱れによって、女性の脳の睡眠時計が狂う可能性がある。何日も眠れないとなれば集中力も下がる。それにいつもより衝動的になったり、言わなければよかったと思うようなことを苛立って口走るかもしれない。だからこの時期には人間関係を守るためには口をつつしんだほうがいいだろう。


このような閉経期の症状はすべて、ふつうはエストロゲンと抗うつ剤、運動、食事療法、睡眠、それに支持的治療と認知療法で解決する。

閉経すると、女性の脳は低エストロゲンへの適応を開始する。ほとんどの女性は閉経期の困った症状が薄れるが、中には1%くらいの女性はさらに5年からそれ以上、悩まされることになる。この人たちは疲労、気分の変動、不眠、頭に霧がかかったような状態、記憶力の低下などを経験する。また15%以上の女性は閉経後10年、あるいはそれ以上もほてりを感じる。

また10人に3人は気分の落ちこみやうつを感じる時期があり、8割は疲労感がある(とくに疲労を感じる女性は甲状腺の検査を受けたほうがいい)。一部には、短期記憶など加齢にともなう認知機能の低下は閉経後最初の5年に特に速く進むという研究もある。


閉経した女性の脳では新しい現実が芽生える。今まで見えてなったものが見えてくるのだ。

エストロゲンが低下されると、オキシトシン(人とのつながりと世話焼きのホルモン)も低下する。ときには針が振り切れるほどの上昇を見せていた感情的な世話焼きと困っている人を助けてめんどうを見なければならないというの衝動は、低速安定走行になる。


多くのリスクを冒しても、自分の夢を実現する方向へ歩きだし、自分らしい人生を送りたいと思う。閉経後の女性は以前ほど人を喜ばせることに関心を向けず、自分の楽しみを優先したいと考えるようになるのだ。このプロセスに当の閉経期の女性は当惑するだろうし、ショックを受ける夫はさらに多い。

しかし、このようなことは閉経期の女性にはごくありふれた通過儀礼なのだ。この変化は心理学的な展開のひとつと見られてきたが、同時にホルモンに人生最大の大きな変化が生じるため、女性の脳で新しい生物学的な現実が生まれ、それが引き金になっていると考えられる。




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