鉄人vs土人
鉄人
名だたるデザイナーや名店からオファーがある鉄人の懐へ飛び込んだのも
そんなのちっとも知らなかったからである
お願いしたいのは ヒトメボレしたステンドグラスを
アイアンで縁取りをし、壁つけの灯りにしたかったからである
いい物を安く仕上げたい
何千万、何億円の仕事をする鉄人がはじき出したのは
予想を遙かに超えた 破格値だった
ホッとするも束の間
「鉄は熱いうちに打て」を背負っているかのような人で
話が2時間どんどん飛ぶ
タブレットの自作を見せながら
あたしの質問なんて どこかへすっ飛んでしまうくらい
次々話しが あちこちへ飛んでいく
今まで作った写真をこれはどこの誰々の・・。と見せながら話してくれるのがおもしろい。
地元で知らない人はいないラーメン屋から、
イギリスのデザイナー宅まで
著名人から民間まで 鉄人が手がけた作品がタブレットに入りきれないほどある。
そこには あらゆるストーリーが詰まっていた
オムニバス形式のショートストーリーの2時間映画を
聞いているようで
あたしの頭の中は
想像の膨らみパンパンになって
話は途切れないが、
そわそわと
帰り支度を始めた。
そうしないと、第2幕が上がりそうな勢いだ。
ダメ、今話したことを 家に帰って伝えなきゃいけないのに
もうこれ以上は詰めこめない
灯りを頼んだ 流れで
門扉とポストを 我家らしくつくる話しにたどりついたが
鉄人はいいこともさらっと言う。
家造りに外構までカネが回らない中で
それを本職にしているご主人がいる。
しっかりつくってもらいなさい。
それがですね、斯く斯く然々、
カネもらって仕事でしっかりつくっても、なんで家に帰ってまでやらないかんとやって
言うんですよ~。
おお~~それは分かる気がする。
私だって、自宅には力を入れてないもんね。
だけど、孫が言えば聞くんです。
ハイジの窓が家につけられなかったから、
門につくって!!
わかった 好きなのば、つくっちゃろ~!なんでん言え~!
ってこうですよ。
両手を叩きながら 後ろに大きくのけぞって
ハッハッハ~~!!そりゃあいい!
でもね、ん?丸や?四角じゃいかんとやですって!!
それもわかる!
四角は簡単。
誰でもできる。
めんどくさくって、難しいんですよ丸は。
なかなか出来ない。だからどこにもない。
ご主人に伝えて下さいっ。
ご主人の仕事は、毎日当たり前のようにやっているから
たいしたことが無いと思っているでしょうが、
ヒトから見たら すごい仕事なんです。
それなら、自分の仕事を、最高の物を残さなきゃ。
ヒトが出来ないことを残すんですよ。
おおぉ~~ 一緒に連れてくればよかった!
あまりにも 話しが大量すぎて ほぼ記憶するあたしの頭が崩壊しそうだったんだ。
しかし、こんなことまで飛び出すなんて・・。
こんなにオシャレな どこにもないポストを
タブレットで見せておきながら
このポストの上に ブリキのおもちゃのユンボを置けという
いえいえ ご冗談っ こんなに良いセンスが 台無しですし、
ありえん~~~
と叫ぶが
両手を大きく ひろげて
いやいや、合うんだって!!
どうしてこれがわからないんだっ!!
岡本太郎と会ったことはないが、
きっとこんな人なんじゃないか。
なんで ユンボなんですかっ!!
ぜ~~ったいいや!
首を大きく横に振りながら、
なんでもねえ
ストーリーがあるんだよ
ご主人の仕事は すばらしい!
立派な家が建ってられるのも
長年培った腕で しっかりした土台を 築くからだよ
寸足らずな仕事して
大きく傾いた 建物を見たことがある
それだったら門にはユンボでしょう!
うちに帰って ダンナに話すと まんざらでもない顔をした
マジかよ~