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オンライン記者発表会で顕在化してきたPR効果の低下、打開策は

2020.09.29 00:05

【ビジネス考察】 緊急事態宣言以降、各段に記者発表会のオンラインが増えた。オンライン発表会はZOOM等で実施されるが、取材を敢行していて気が付いた点がある。


それは、記者からの質問が格段に減った事だ。


これは記者発表会を開催する意義そのものに関わる。ビジネス系の記者発表会では、主に新商品や新サービス、新戦略、新PR等を世に出す。代取を始め、社員達が何ヶ月から何年も掛けて頑張ってきた結果を世に出す。ハレの舞台だ。だから記者達への好印象は欠かせない。


淡々とした発表会では、淡々とした記事になり易く控えた方が良いのは周知の事実。発表会の熱量を基準として、記者達のタイピングに熱が入る。現実に一堂に集まる発表会では、会場の雰囲気を肌で感じる事ができ、椅子に横並ぶ他媒体の記者達の傾向も伺う。QAの時間になれば、熱が入っている発表会では一時の沈黙の後にこぞって質問に走る。



<PRの生態系(エコシステム)>

 他方、オンラインでは仮想の為、雰囲気が分からない。他媒体の傾向も分からない。そもそも、どの媒体がログインしているのかも不明。競争意識が下がり、発表会がまるでプレスリリースのコピペの様な記事になってしまっている現状がある。TV局の記者は比較的、熱量を保っている様に感じるが、紙媒体が主の記者達や専門でないフリーランスの記者達は熱量が格段に落ちている。


「レモン市場/経済学」が報道界にも広がっている。これは今に始まった事ではないが、プレスリリースのコピペ配信や取材動画の撮って出しが横行中。ただ数字を取る為だけに配信をしており、そこにはメディアとしての矜持が何も無い。ビジネス側もView数にのみKPIを設定してる感がある。実際のKPIはコンバージョンないしブランディングの筈であり、View数ではないだろう。


その影響で現場の硬派な記者達が、一つの“やる気”を失ってしまっているのではないだろうか。


もしそうであるならば、オンラインによる記者発表会は相当に手筈を変えた方が良い事になる。これはオンライン記者発表会が好ましくない、という訳ではない。熱量が伝わりにくいオンラインで、且つ熱量が下がってしまっている記者達に、何とか良さを届ける工夫が必要だ。


矢張りベストは現実の記者会見だが、二番手のオンライン記者発表会は単なる一方的な動画配信よりは良い。「現実の記者発表会>オンライン>動画配信>プレスリリース(Tw等のオウンド メディアを含む)」の順番だろう。この順番は、ビジネスにおける“PRの生態系(エコシステム)”の影響力から並べた。



PR自体にイノベーションを

 では、オンラインの場合には何をすれば良いのか。これは一つの提案であるが、ディスカッションを採り入れてみては如何だろうか。初めて新商品等に触れる記者は、ある意味で新鮮なユーザ目線。よってブラッシュアップの為の情報を得る事ができる機会と捉える。


通常は「会社概略→新商品等の発表→トークイベント→QA・囲み取材」の流れだが、オンラインではスライド等の資料を即共有できるので、「新商品等の発表→QA→ディスカス→囲み取材」とディスカスの時間を大幅に取って、記者達からダメ出しを当日に貰う。そのディスカスや素朴な疑問のデータと市場の反応を照らし合わせて、次に活かす。


簡単に言えば、“学習”の機能を付した記者発表会だ。


主催のビジネス側は、ただ傾聴するだけでなく、言い返す事も必要であろう。これで記者魂をくすぐる。記者達へ参加した実感を付与する。これによって出来上がる記事は想像がつかない。だから良い。想像ができる予定調和の記事をユーザは欲しない。そこにPRのイノベーションは無い。


ただ、この提案は諸刃の剣であり、ハイリスク・ハイリターン。無難なビジネスを望む企業には向かないだろう。


YTでは政治のコンテンツが大幅に増えているが、ビジネス系コンテンツは弱い。それは前者が自由闊達な議論を展開しており、後者が予定調和を重視しているからに他ならない。記者発表会や記者会見も同じ事が言えるだろう。


記事:金剛正臣