谷口味噌のパッケージデザイン
先月末から米子市の今井書店錦町店の青杏+さんで、『シマトリネトリ – 山陰さしすせそ -』展が明日20日まで開催されています。この展示は、島根・鳥取のそれぞれの地で作られる料理の基本となる5つの調味料、酒・塩・酢・醤油・味噌をセレクトしたものを紹介販売するという企画。
島根側は、(株)シマネプロモーションさんが。鳥取側は、倉吉のCOCOROSTOREさんがそれぞれセレクト。鳥取の味噌代表として、鹿野町の谷口味噌店さんのお味噌が選ばれました。
このお味噌のパッケージは昨年10月にデザイン依頼いただいて、今年の春に完成させたもので、半年がかりのプロジェクトでした。ちょっと大変で思い入れのある仕事だったので、記しておこうと思います。
谷口味噌店さんとは、NPO法人いんしゅう鹿野まちづくり協議会さん(以下まち協さん)を通じて知り合い、最初にまち協さんを仲介して写真右のMISOSAUCEのデザインをさせていただいたのが始まりでした。そこから、今度は味噌のパッケージをと、谷口味噌店さんから直接ご依頼いただくことに。それまでは、ナイロン袋に入れて輪ゴムで縛っただけというシンプルなものだったので、今後新しく出来る道の駅等にも置けるような見栄えの良いパッケージにしたいというのが、依頼内容です。
ただ、谷口味噌店さんのお味噌は無添加で、発酵を止めない生きたままの味噌だったので、完全密封してしまうと破裂してしまうとのこと。それを防止するには、発酵を止めるために添加物を加えるか、常に冷蔵保存できる環境が必要ということですが、どちらも得策でないように思えました。
そこで、まずは常温でも陳列OKなように吸気弁付きのパッケージ資材を探すことから始めましたが、なかなか資材・パッケージ業界というのも閉ざされた世界で、味噌用のパッケージ資材を作っている会社を探し当てるだけでもかなり時間がかかります。
商品パッケージのデザインは、あらかじめ資材が決まっていれば話は早いですが、一から資材から探すとなると、その資材代も考慮に入れつつ1個あたりの商品にかけれるパッケージ代を計算して提案しないといけなくなるので、かかる時間が倍増します。
まずはよくスーパーで売られているプラカップの会社を探し当て、見積りとサンプルを手配してもらったのだけど、古き体質の会社なので、サンプル発送に2週間かかったたり、結局プラカップの内蓋を閉じるには、専用のシーリングマシンがいるということ、そして、それは30万以上するマシンだと・・さらにオリジナルの印刷を施すには大ロットの注文が必要と、全く条件に合わない。。
ということで、見栄えは落ちるけど、袋型の資材サンプルをもらう。こちらは単価も安く、シーリングも市販の圧着機で出来るということで、この路線で考えることにした。
テストをしてみると、少々常温では袋が膨らむけど、破裂することはなく弁が空気を逃がすので、大丈夫だという結論に。ただ、袋にラベルシールを貼っただけだと、見た目の商品力が弱くなります。でも、そこまでコストもかけられないので、どうにか安価かつ見栄えよくできる化粧パッケージが出来ないかなーと。箱だと抜き型代&印刷費等で制作費が高いので、長い付き合いの紙屋さんにボール紙を裁断し、折り線だけ付けてもらったものを作成いただき、それにラベルシールを貼り、紐で袋と化粧紙を結び合わせたものを思いつきました。これだと全てが覆われないので、横から味噌の色や具合も分かります。味噌は、買う際にどんな色なのかが気になるものだと思うので、ここは重要な点だと思いました。
紐も、長いものを一括購入し、店主に裁断してもらい、化粧紙にもパンチ穴を空け、一つ一つ仕上げてもらうという少々手間がかかるパッケージになりましたが、年間を通じて作れる量が少量な谷口味噌店さんの貴重な味噌を表現する上でも相応しいものになったなと個人的には思います。
ラベルのデザインは、最初にデザインをしたMISOSAUCEと、昔から味噌樽に貼られていたラベル紙のデザインを融合したものです。全てを新しくするのがデザインではないので、歴史を感じるものは残しながら今に合うものに調整し、調和させています。
と、長々となりましたが、商品のパッケージを一から考え提案するのはとても時間がかかるんです。。ラベルのデザインをする作業時間より、資材を探し、取り寄せ、テストをし、試作品作りを重ね、コスト計算をするという時間の方が全然多いんですよね。
そんな案件でしたが、数日前に店主より嬉しい知らせをいただきました。
『シマトリネトリ – 山陰さしすせそ -』展での販売が好調で、追加注文を納品されたとの連絡が。「パッケージの良さからか、売れ行き好調です!」という、デザイナー冥利に尽きるお言葉まで^^ 商品は売れないとお客さんとの関係が生まれないものなので、まずは選び、買っていただける商品に出来たことが何より嬉しいですね。
↑店主から届いた写メ。完売していたとのこと^^
このお味噌は普段は、倉吉のCOCOROSTOREさんや、谷口味噌店さんで売っているので、気になった方は是非味わっていただきたい一品です。