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すずめのおそで ‐ Suzume no Osode -

秋の香り

2020.09.27 09:04

9月に入ったばかりのころは、セミばかり鳴いていたのに、

今はすっかり虫の音の世界。

やっと秋らしくなってまいりました。

流山は小林一茶が滞在した町として知られていますが、

私は秋になると、いつもこの句を思い浮かべます。

「夕月や流残りのきりぎりす」

流山は江戸川や利根川の水運により栄えてきた町でしたが、

時折、川が氾濫することもありました。

この句は、ある秋の夜、先ほどの洪水の恐ろしさが嘘のように静まり返る中、

空に月が浮かび、どこからか、きりぎりすの声が聞こえてくるという情景がうたわれています。

寂寥感や無常感とともに、小さな希望を感じさせてくれるこの句は、

とても心に響きます。


さて、秋の香りというと、練香では「菊花」や薫集類抄では「侍従」が含まれています。

(もう少し後?になると、侍従は「冬」の香りとされることも。)

配合を見てみると、菊花は甘く、侍従は苦みのある香りが特徴のようです。

枯草のような、鄙びた中に少し甘みのある香りを表したものが「侍従」で、「菊花」は、すでにあたりに漂う乾いた苦みを背景に、菊の黄色のあたたかみを表現したものとして調香されたのかなあ、とふと思いました。

下は、柿の匂い袋。

大正時代の手芸の教科書にあったガラガラをもとに、袋物にしました。

柿色も、鄙びた香りの中でこそ引き立つ色。

こうして自然は調和がとれていくのだなあとしみじみ思いました。

日本は少し先の季節を取り入れるのが良しとされますが、

イマ、ココの情景をもう少し楽しみたい今日この頃です。