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車輪梅と俳句

2020.09.29 07:45

https://ameblo.jp/yujyaku/entry-12597875538.html  【土埃あらう雨中の車輪梅】 より

土埃あらう雨中の車輪梅

( つちぼこり あらう うちゅうの しゃりんばい )

昨日の感染者数が全国で27人、東京が5人、大阪が0人。一時全国で700人超、東京でも200人超になり、いよいよ欧米並みの感染爆発が起こるのかと身構えたが、幸いなことにそうはならなかった。

ただ、これが一時的なものでなく本物かどうかは、あと暫く注視しなければならず、気の緩みがないようにしなければならない。また、一旦収まっても秋冬には第二波、三波が必ず来ると言われており、それに備える必要がある。

さて、先週の土曜日は久しぶりに朝から雨が降っていた。それでも外の空気を吸いたいと思い、傘をさして近くを散歩した。その時に目に入ってきたのが純白の「車輪梅(しゃりんばい)」の花である。

本日の掲句は、それを見た時の印象を詠んだものである。雨は花や葉にかかった土埃を洗い流し、「車輪梅」の花の「白」を際立てていた。

尚、「車輪梅」は最近非常によく見かけるが季語としては定着してないようだ。ただ、今の時期に咲くので夏の季語に準じて使用した。

因みに、「車輪梅」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】

① 花咲けど何かいかつき車輪梅

③ 颯爽と分離帯にて車輪梅 

② 炎熱で早も錆びたか車輪梅

①は、花を初めて見た時の第一印象を詠んだもの。名前に人工物の「車輪」があり、葉が何かごつごつしていた。

②は、大通りの中央分離帯に咲いているのを見て詠んだ句。車道の分離帯と「車輪梅」が「車」つながりで面白いと思って句にしてみた。

③は、暑さで車輪梅の白い花も焦茶色に錆びついてしまった、というのが句意。「錆び」は「車輪」に掛けたもの。

「車輪梅」は、バラ科シャリンバイ属の常緑低木。日本、朝鮮半島が原産。花期は5月で白の五弁花を咲かせる。最近は赤味のある花をつける「紅花車輪梅」も時々見かける。(最後尾の写真参照)花後に成る果実は10月~12月に黒紫色に熟す。

名前は、一箇所から多数出る小枝が車軸のように見えること、花が梅に似ていることから付けられた。

既述の通り「車輪梅」は季語として定着していないが、季語として認めて詠まれるた句をいくつかネットで見つけたので、参考まで以下に掲載した。

【車輪梅の参考句】

咲きのこりつつ惻々と車輪梅(河合凱夫)

車輪梅海匂ふとき匂はぬとき(高澤良一)

車輪梅バス数台が来てかくす(横山白虹)

*紅花車輪梅


https://hukosanbo.exblog.jp/5677373/  【車輪梅】より

 車輪梅父の紬の着ることもなく    征夫 (初出句)

 5月8日の記事に海桐花(とべら)の画像がどうしたわけか間違ってアップしたされていて、あわてて修正しました。そのときの間違った画像は車輪梅でした。

 この花は2万語の季語集にも載っていないので、季語には採用されていないようですが、広辞苑に『しゃりん‐ばい 【車輪梅】バラ科の常緑低木。暖地の海岸に自生。高さ約2メートル。葉は厚く楕円形でほぼ輪状につき、夏、香気ある白い梅形の五弁花を円錐状の花序に開く。果実は楕円形、黒色。樹皮をつむぎの染色に用い、また庭木として栽培。』とあります。茂の句に次の二句があり、そのうちの一句は明らかに季語として使われていることが分かります。

  折鶴吊し歳を加へし車輪梅     高島茂

                       (句集『ぼるが』所収 平成七年の作)

  車輪梅實のひそみゐし梅雨霽るる  高島茂

                       (句集『ぼるが』所収 平成十年の作)

そこでさらに古い歳時記を繙きました。教養文庫465『花の歳時記』(松田修著 社会思想社 昭和39年2月刊初版)です。そこに載っているのを発見。「一名ハマモッコク」とあります。例句として、

  車輪梅咲くや山寺の昼静      千山

とあります。 千山という俳人は、其角・仙鶴・祇空・才麿らと親交があった紀伊国屋文左衛門の俳号。また、享保の頃に活躍した姫路の俳人に井上千山がいる。菊丸を千山という号にあらため、臨終の芭蕉が形見の笠と蓑(みの)を与えた維然の弟子で、蕉風俳諧の宗匠である。掲出句がどちらの作なのかはいまのところ不明です。いずれにしても、季語としては古くからあるのが分かりましたが、現在では作品も作られていないようです。花としてはポピュラーなもので、海辺ではよく見られるものですからもっと作られてもよいと思われます。たしか、奄美大島の大島紬の染色は、この木から作ったものを使っているはずです。現在の歳時記にないのは非常に残念です。