#米中覇権戦争 #中国 有利? #TikTok に見る強さ
「Microsoft News - 法政大学大学院教授 真壁昭夫」様より
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米中覇権戦争は中国が有利?TikTok問題などに見る「国家の強さ」
真壁昭夫 2020/09/29 06:00
この投稿の「重要なところ」を先に掲載。
米中対立の激化の中でわが国がとるべき姿勢
長い目で考えると、中国の国家資本主義体制は持続しない可能性がある。
中国共産党が力づくで人々の自由への渇望を押さえつけ、国際法を無視した行動を続けることはできない。
相当の時間がかかるだろうが、どこかで共産党による力の支配は限界を迎えるだろう。
今後、米国の対中制裁は金融取引にも及ぶ可能性がある。
なぜなら、多くの中国企業がドル資金の調達を必要としている。
米国防総省が軍事企業に指定した国有の中国化工集団(ケムチャイナ)がドル建て社債を発行したのはその一例だ。
米国の圧力を跳ね返そうと、中国は国家資本主義体制を強化して“一帯一路”の経済圏構想や“中国製造2025”を推進するだろう。
コロナウイルスの感染が拡大する中、米中の対立は一段と熾烈化し、状況によって世界経済にはかなりの負の影響が及ぶ恐れがある。
その展開を念頭に、わが国は米中対立への方策を練るべきだ。
国内面で政府は規制改革を徹底して進め、米中から必要とされる最先端の技術開発を支えなければならない。
それは、国際社会におけるわが国の重要性を高める。
外交面では、安全保障を頼る米国との関係強化が最重要事項だ。
その上で、わが国は自国の立場を明確に示し、国際世論を味方につける必要がある。
チベットや新疆ウイグル自治区での人権問題などに関しては明確に懸念・反対を表明する。
他方、多国間の経済連携の促進を通した自由貿易体制の強化などに取り組む。
繰り返すが、そうした「是々非々」の姿勢を示すことが、わが国の信頼感向上につながる。
医療やインフラ開発の支援を取り付けるために中国に異を唱えることが難しいアジア新興国などにとって、わが国の姿勢は心強く映るだろう。
アジア新興国との関係強化は、同地域の需要を取り込みたい欧州各国との関係強化にも欠かせない。
最終的に、わが国は受け身ではなく、米国を巻き込んで能動的に国際世論を取りまとめ、対中面で効果のある規制の立案・実施を目指すべきだ。
それが、国際世論全体としての対中包囲網の形成を支える。
わが国は、国内の改革と国際世論との関係強化を着実に進め、自力で国益を手に入れることを目指さなければならない。
(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
それでは最初から読んでください。
最近、中国の動画配信企業であるTikTok(ティックトック)の扱いを巡って、米国と中国の対立が高まっている。
その背景には、両国のIT分野における覇権国争いがある。
もっと突き詰めると、米国の自由資本主義体制と、中国の国家資本主義体制の衝突が激化する構図が明らかになる。
その争いの構図を冷静に見ると、今のところ、米国よりも中国の方が優勢に見える。
今のところ、規制発動や企業への指揮統率力において、中国の一党独裁体制は民主主義国家である米国よりもスピーディーかつ徹底している。
短期的に中国は米国との覇権争いを優位に進める可能性は否定できないだろう。
米中のIT産業の競争力に関しても、アプリや人工知能(AI)などのソフトウェア開発面で中国は優位だ。
中国は国内におけるグーグルやフェイスブックの利用を禁止している。
その一方、米国で北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営する動画投稿アプリ「TikTok」や、騰訊控股(テンセント)の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」は急速に利用者を獲得した。逆に言えば、米国は中国企業のアプリ攻勢を許した。
米国は中国の“国家資本主義”体制の勢いを食い止めるために、より強硬な姿勢で規制や制裁を発動する可能性がある。
安全保障を米国に依存するわが国としては、何よりも米国との関係を強化しなければならない。
その上で政府には、国際連携を強化しつつ、データ保護などの是は是、他国の主権侵害など非は非と「是々非々」の姿勢を明確化し、実効性のある規制を実施していくことが求められる。
米国との争いで強さを発揮する
中国の国家資本主義体制
足元の米中の対立を見ていると、ある意味、両国の覇権争いの熾烈化によって、国家資本主義体制の強さが明らかになった。
それを確認するには、TikTokとウィーチャットを巡る米中双方の対応を確認するとよい。
TikTokに関して、当初、トランプ政権はマイクロソフトによるバイトダンスの米国子会社の買収を目指した。
しかし、8月末に中国政府が人工知能に関する技術の輸出規制を発表したことからマイクロソフトによる買収案はとん挫した。
なお、バイトダンスはTikTokとの取引禁止を命じた大統領令は違憲であるとして提訴した。その後、トランプ政権はオラクルとウォルマートの出資を取り付けて米国主導でTikTokの米国事業を統括する新会社の設立を目指しているが、事態がどう進むかは不透明だ。
重要なことは、マイクロソフトによるバイトダンスの米国事業買収が、中国の対抗措置によって絶たれたことだ。
習近平国家主席をトップに一党独裁体制をとる中国の意思決定には、同氏の意向が迅速に反映される。
しかも、共産党指導部の指示には誰も歯向かうことができない。
それに加えて、中国商務省は米国に対抗するために、自国企業に不当に損害を与えたと当局が判断した外国企業に対して中国との取引を制限・禁止する規則も発布した。
IT先端分野での中国のデカップリング=分断を狙う米国に対する共産党政権の対抗姿勢は、寸分の隙もないほど厳格だ。
民主主義国家である米国はそこまで強い対応が取れない。
商務省が20日から禁止すると発表したウィーチャットに関しては、カリフォルニア州北部地区の連邦地裁が執行を一時差し止めた。
その理由は、ウィーチャットが中華系移民のコミュニケーションなどに重要な役割を果たしており、言論の自由を制限する恐れがあるからだ。
その結果、9月21日時点でも米国ではウィーチャットを用いたチャットが可能だ。
中国では習氏の一声で国家全体の方向性が変わる。対照的に司法判断の影響などから、トランプ政権が中国の最先端のIT技術をシャットアウトすることは難しい。
目下のところ、国家資本主義体制は民主主義体制よりも国同士の覇権争いを優勢に進めていると評価できる。
情報技術面で
強さを発揮する中国企業
それに加えて、最先端のソフトウェア開発などにおいて中国企業は米国企業に勝っている部分がある。
共産党指導部は成長期待が高いと判断した分野に一気呵成に生産要素を再配分して世界トップクラスのAIやスマホアプリ開発を支えた。
マイクロソフトがTikTok買収によってAI技術の確保を目指したことは、中国の強さを示している。
ファーウェイへの輸出制裁に関して、インテルやサムスン電子などは米商務省に猶予を申請した。
それは、国家資本主義体制の下でファーウェイが低価格で十分な性能を持つ機器を開発し、世界的なシェアを手に入れたからだ。
商務省は企業の要請を無視できず、インテルにファーウェイのノートPC向けCPU(中央演算装置)の供給を許可した。
これは中国が厳に規制を実施していることとは対照的だ。
モバイル決済のアプリに関しても、世界的にアリペイやウィーチャットペイが使われている。
米国企業は、アリペイなどの台頭にうまく対応できず、フィンテック分野での中国の先行を許したと指摘する経済の専門家もいる。
アカデミズムの分野でも中国の台頭は著しい。安全保障への影響が増す量子暗号分野を中心に、量子技術に関する研究論文数は米国を上回っている。
現在、半導体製造装置など最先端の製造技術面で米国には一日の長がある。
本来、米国は規制緩和や多国間の経済連携の強化などを通して企業のイノベーションを喚起し、強みを伸ばさなければならない。それが、中国の台頭を抑えるために必要だ。
しかし、現在の米国がそうした方向に向かうとは考えづらい。
11月の大統領選挙後も米国は対中強硬姿勢を強めるだろう。トランプ政権が続いた場合、国際社会と米国の関係は不安定に推移する可能性が高い。
一方、民主党のバイデン候補は海外生産を行う企業への懲罰的な税制を発表するなど、強制的に企業を従わせようとしている。
両陣営の発想で、米国が人々のイノベーション発揮を支えて、世界をあっと驚かせるようなヒット商品を生み出すことができるとは期待しづらい。
再び重要ポイント
米中対立の激化の中でわが国がとるべき姿勢
ただ、長い目で考えると、中国の国家資本主義体制は持続しない可能性がある。
中国共産党が力づくで人々の自由への渇望を押さえつけ、国際法を無視した行動を続けることはできない。
相当の時間がかかるだろうが、どこかで共産党による力の支配は限界を迎えるだろう。
今後、米国の対中制裁は金融取引にも及ぶ可能性がある。
なぜなら、多くの中国企業がドル資金の調達を必要としている。
米国防総省が軍事企業に指定した国有の中国化工集団(ケムチャイナ)がドル建て社債を発行したのはその一例だ。
米国の圧力を跳ね返そうと、中国は国家資本主義体制を強化して“一帯一路”の経済圏構想や“中国製造2025”を推進するだろう。
コロナウイルスの感染が拡大する中、米中の対立は一段と熾烈化し、状況によって世界経済にはかなりの負の影響が及ぶ恐れがある。
その展開を念頭に、わが国は米中対立への方策を練るべきだ。
国内面で政府は規制改革を徹底して進め、米中から必要とされる最先端の技術開発を支えなければならない。それは、国際社会におけるわが国の重要性を高める。
外交面では、安全保障を頼る米国との関係強化が最重要事項だ。その上で、わが国は自国の立場を明確に示し、国際世論を味方につける必要がある。
チベットや新疆ウイグル自治区での人権問題などに関しては明確に懸念・反対を表明する。
他方、多国間の経済連携の促進を通した自由貿易体制の強化などに取り組む。繰り返すが、そうした「是々非々」の姿勢を示すことが、わが国の信頼感向上につながる。
医療やインフラ開発の支援を取り付けるために中国に異を唱えることが難しいアジア新興国などにとって、わが国の姿勢は心強く映るだろう。
アジア新興国との関係強化は、同地域の需要を取り込みたい欧州各国との関係強化にも欠かせない。
最終的に、わが国は受け身ではなく、米国を巻き込んで能動的に国際世論を取りまとめ、対中面で効果のある規制の立案・実施を目指すべきだ。
それが、国際世論全体としての対中包囲網の形成を支える。
わが国は、国内の改革と国際世論との関係強化を着実に進め、自力で国益を手に入れることを目指さなければならない。
(法政大学大学院教授 真壁昭夫)