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KAZESORA〜風空〜

TENNOZ × PEOPLE #05

2015.07.27 02:14

KAZESORA 〜風空〜 No.5 ※こちらの記事は2015年7月27日の記事です

関わるすべての人の人生に寄り添って
ライフスタイルを、人生をデザインしていきたい

天王洲アイルから、人と人をつなげるヒト
河合祥太

株式会社アクタス SØHOLM 運営責任者

子どもたちに残す何かを探して…

たどり着いたのは“人生をデザインする”という試み

 「30代を目前にし、子どもたちが成長していくのを見ていて、ふと『自分の仕事が、この子たちに何を残せるだろうか』という疑問が湧いてきたんです。でも、当時、答えが見出せていなかった」

 そう語るのは、天王洲アイルにオープンして、この春、一周年を迎えたSØHOLMの運営責任者、河合祥太さん。併設されたライフスタイルショップ『スローハウス』とともに衣・食・住の提案をしている。

 前職では、テーマパークや大手ショッピングモールへも数多く出店していた有名レストランに10年以上勤務し、大型店舗のマネージャーを経て、若くして経営責任者までステップアップしていたという。

「やりがいも、日々成長する楽しさも、成果主義によって得られた収入も、どれも満足できていました。でも、ただ一つ満たせていないのは、自分が子どもたちやその先の未来に、何を残せるか」

 10代は人気番組のバックダンサーとしてダンスに青春を傾ける日々。その最中、ケガにより転職を余儀なくされた時にケーキ店でアルバイトしたことがきっかけで飲食の世界へ。そのままパティシエになるものと思って修業に励んでいた河合さんに、突然の解雇宣告…。

「ここへはいつでも帰って来られる。もっと広い世界を見て、勉強してこい」

 このひと言から、河合さんの新たな飲食業界への道がスタートしたのだった。

「あれから10年以上をかけて、努力し、勉強し、ステップアップできたと思う。小さなレストランも一人で経営したし、年間何十億円と動かす“飲食ビジネス”として飲食業を営んだ実感もある。でも、何かが足りないと感じ始めていました」

 その矢先、アクタスの飲食事業部立ち上げにと声がかかった。“住”から始まるライフスタイルの提案という新しい世界に興味を持った河合さん。

「社長に『ブランドを作るだけじゃなくて、人生をデザインできる人間になりなさい』といわれた時、一生この会社にいようと思いましたね。ここから自分の人生が変わる気がしたんです。そう、何を残せるか、ライフスタイルの提案というコンセプトを糸口に見つけられそうだと」


人生に寄り添う空間を作り

天王洲アイルへ通ってもらえる

きっかけを育んでいく

「何が魅力って、現地へ行かせてもらえること。普通、料理人は現場のオペレーションに注力してしまい、素材と向きあう時間がない。でも、ここは“食べる”にとどまらないレストランでありたい」

 携帯電話の写真には、朝4時の海で漁に出ていたり、キャビア用にチョウザメを探しに行ったり、ワイン農園を訪ねる河合さんの姿が数多く残されている。

「上質な暮らしを提案するためには、メニューが“本物”でありたい。だから、『あのアクタスのお洒落なレストランね』なんて評価になりたくないんです。食品の生産・加工・流通などの各段階でその情報をたどれるトレーサビリティの川上を知るべき。そこで協力してくれている人みんなの信頼を得て、一丸となることでお客様の食事を最高のものにしたいから」

 スーホルムのメインメニューはジビエ。熱い想いを生産者へも証明するために、自らも猟の免許を取得したという。

「処理も手伝いますよ。冷凍かチルドなのか、ジビエの保存方法も吟味して産地を探し、生産者の方々ともコミュニケーションを取っています。メニューの考案者や、食肉加工業者さんにも、会いに行ってじっくり話します。今では高知の山間の猟師さんが、わざわざ東京の天王洲アイルまで食べに来てくれる。お孫さんに『うちのジビエは天王洲アイルで食べられているんだ』ってお孫さんに話されたりするそうです」

 生産の現場まで行くことは、天王洲アイルを全国的に広めることにも一役買っているようだ。さらに、トレーサビリティの川上知ることで、サスティナビリティも考えるようになったという。

「国内でのフェアトレードが大事。実際に漁や猟、農業の現場にしっかり対価を返し、そこで雇用が生まれ、さらに上質な素材を喜んで提供してもらう。これを基本に、持続可能な飲食業の仕組みを作れば生産者から食べる人まで、みんなの人生に関われるでしょう。さらに、現場で働くメンバーに学んでもらう環境作りも私の仕事。仲間たちの人生にも寄り添って仕事がしたい」

 話を聞けば聞くほど、東京でゆっくり接客している時間はなさそうだが、週末には、料理の説明のためにホールに立つという。

「お客様の人生に寄り添える空間づくりには、生産の現場から心の込められた食事と、それを語れる人が必要。スーホルムに、天王洲アイルに通い続けてもらえるきっかけになると思うんです」


SØHOLMの将来像は?

「一緒に記念日を祝えたり、メニューについて熱く語れたり、まるで、10年来の友人を迎えるように一人ひとりのお客様に接していきたい。きっと、その人たちと分かちあう喜びが、僕の人生をデザインしてくれる」

 生産者とレストラン、顧客をつなげ、天王洲アイルに来る人々をつなげていく河合さんの仕事。それは、多くの人の食や人生のデザインを、手伝う日々。天王洲アイルで働き始めて一年半、きっともう、“子どもたちに自分が残したいもの”の糸口は見つけているのだろう。


PROFILE | かわい しょうた

千葉県成田市出身。大手外食チェーンの料理長や経営責任者など飲食業界に10年以上勤務し、2014年にアクタスが飲食事業部を立ち上げる際に入社。現在、ACTUS 飲食運営開発チームリーダー。

取材協力 | SØHOLM スーホルム

天王洲アイルの運河沿いに佇む、北欧のサマーハウスのようなレストラン。ジビエを中心に、オーガニック食材を使用した料理には、素材の力を感じられる。食材をとことん追求し、食のデザインがもたらす発見を楽しめる。

KAZESORA 〜風空〜 No.5

2015.07.27.の記事です。

Direction & Design:Shigekazu Katsumata 勝又シゲカズ BTTB inc.

Text:Eri Sakuma さくまえり

Photographer:Soichiro Kosuga 小菅聡一郎