ショック!ウエイトレスで大失敗の話し⑤
ウエイトレスとして働いた経験はこれまでに2度ある。
高校2年の夏休み期間に隣町の中華料理店でと、ファミレス「S」での半年と2回。最終的にはそれなりにこなしていたが、残念ながらいずれも仕事を楽しむまでは至れなかった。
ひとつの理由には、私はスピードを要求される仕事が比較的苦手だということ。レストランは、とにかく出来るだけ早く食事を提供せねばない。緊張した状況下で、さらにイレギュラーなお客様のご要望が容赦なくウエイトレスの身に降りかかる。例えば子供が床にうどんをこぼしちゃったので掃除したいから雑巾貸してくださいとか、トイレが汚れていたからすぐに綺麗にしてくださいとか、あっちのグループが騒がしいので席を移動したいんですとか、デザートはチョコレートだけ抜いてもらえませんか、とか。それはもう多岐にわたる。もちろんどの要求も退けるべきではない。せっかく食事にいらしてくださっているのだから、お客様には快適に過ごしてもらいたい。ただ、自分は目の前のことをひとつひとつ丁寧にこなしたいと思う性格なので、頼まれた物事を一斉に捌くことは、最後まで難しいと感じられた。
「S」での決定的な大失敗を記す。
あれは仕事に少し慣れてからのこと。飲み物のグラスや料理のお皿を運ぶのはウエイトレスのメインの仕事だが、とんでもなく重労働でもある。その日、私は焦っていた。テーブル席で注文をお待たせしたため、お客様は苛立っておられた。水のグラスを置こうとした時、緊張で強張った私の手がお盆の上のグラスにコツンとあたり、そのまま3つとも床へ滑り落ちたのである。ガッシャーーーーーン。派手な音。騒がしかった店内は急に水を打ったようにシンとなった。割れる瞬間ガラスが氷の結晶のように散ったのを、今でもスローモーションのように覚えている。あの時は本気で青ざめた。幸い誰にも怪我はなかったけれど、上司に叱られ、お客様にも怒られ、当然ながらどちらにも平謝りした。
「グラス割れ事件」の数週間後、私は「S」でのアルバイトを辞めた。隣町の習い事の教室で新しく講師の仕事が決まったのが主な理由だけれど、ホッとした。というか、こんなに失敗ばかりするバイトをよくぞ数ヶ月間も雇ってくれたなと思う。寛大なファミレスだ(実はここは今もお気に入りでたまに訪れる)。
仕事に必死だったから友達という呼べる存在はいなかったけれど、最後の瞬間、あの調理係の男子学生は丁寧に「お疲れ様でした。」と見送ってくれたし、私を採用してくれた上司は親切にも「お客様としてここに食べにきてね。」と言ってくれた。
実はこの上司、半年ほど後に私の生徒となるのだが、その時は想像だにしなかった。人生とはまこと不思議なものである。
ウエイトレスで大失敗した話し、これにて完了です。
Be ambitious, boys and girls!
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