少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口69-
69 地中の生き物
地中を歩いていると、彩里水と白兎に話しかけてくる者がいた。
「こんにちは。人型の方がここを通るなんて珍しいですね。」
彩里水と白兎が辺りをキョロキョロと見回すと、どうやら話しかけてきているのはモグラのような顔と大きな爪がある前足を持ち、ミミズのように長い胴体を持った生き物だということがわかった。先を進む彩里水と白兎の後方から大きな手の爪の先の方を愛らしくひらひらと手を振るようになびかせている。
「あ、こんにちは。」
彩里水は笑顔で挨拶を返す。
――いや、慣れたよ。オレだって結構慣れた。なんなら今オレが地中を歩いてることだって、地中なのにどうやって歩いてんの?とか、地中なのにどうやって息してんの?とか、なんで上見たら透けて見えんの?とかいろいろ疑問はいっぱいだよ?だけど考えるだけ無駄な気がしてるから全スルーしてきたの。・・・だけど!またかよ!
「いや、普通に挨拶しすぎだろおまえ!ちょっとはビビれよ!ミミズモグラだぞ!地中だぞ!こえーし!見た目怖―し!」
白兎は口が飛び出しそうな勢いで彩里水の人なつこさにツッコミを入れる。
「なんだよ。挨拶ぐらい普通にしろよな。てか、可愛いじゃん。もういい加減慣れたら?さっきだって蟻さんたちもいたんだしさ。みんないい人?じゃん。白兎って変なとこ頭固くない?」
「悪かったな。オレはおまえと違ってチョットばかし顔が良い庶民なんだ。」
時々目の前に現れる大きな根っこを迂回しながら2人は歩き続けている。
「はあ?何だよそれー。・・・あ、てかさ、気付いたんだけど誰か地中にいる人?に聞けば良いんじゃない?そうだ。それでいいじゃん。ミミズの人とかいないかな?」
「・・・おお。まあ確かに。おまえのその常識外の発想は時として素晴らしいよな。」
「えへへ。白兎ってすごくオレを褒めるよね。」
「いや、まあ半分は褒めてないんだけど・・・。まあ素直なところがいいよ、おまえは。」
歩いていると、舗装された道以外の場所には至る所に木の根っこや草花の根っこがあり時々動いていた。
彩里水は、そばを通過して行くクワガタに似た生き物に試しに声をかけてみた。
「すいませーん、ちょっと聞きたいんですが、この庭園を出る目印って何かありますか?」
彩里水に声をかけられているとは気付いていない様子のクワガタに似た生き物はそのまま彩里水の横を通り過ぎてしまった。
「あ、やっぱ人の言葉が通じないってこともあるって言ってたから、さっきのクワガタは人とのミックスじゃないのかな。」
「あー、そっか。さっきのミミズモグラみたいのばっかじゃないってわけか。」
ポケットからキップとクップが言う。
「地中を住処にする方たちの中には人型とのミックスは珍しい方かも知れませんね。」
「え?そうなのか。」
「でもぉ、僕らもこの庭園の地中にお住まいの方に道案内をしてもらうというのはとても良いアイデアだと思いましたー。1番安全で確実な気がしますー。」
クップがニコニコしながら言う。
「だよね!」
彩里水は喜ぶ。
「多分、この辺にはあまり人型のミックスはいないかもしれませんが、群生してる可能性は高いです。とにかく真っ直ぐ進んでいけば、庭園の外には確実に近づきますから、行きながら人や我らのように物型とのミックスがいたら尋ねてみましょう。」
「そうだね。」
つづく