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夏の鳥俳句

2020.10.05 05:55

https://style.nikkei.com/article/DGXNZO31976420R10C11A7000000/ 【夏の鳥俳句一口講座 羽抜鶏】より            ◇

(たかだ・まさこ)1959年岐阜県生まれ。東京大文学部卒。主婦で2女の母。俳句結社「藍生」所属

今回の句の季語は「羽抜鶏」です。歳時記には、鶏(にわとり)のほかに「羽抜鴨(はぬけがも)」また「毛を替ふる鷹(たか)」の記載があります。この鷹は鷹狩(たかがり)用の鷹です。身近にいる(いた)大型の鳥で、感情移入しやすいということでしょう。羽抜鷹と言わないのは、鷹に対する敬意の表れかもしれません。

ほかの鳥たちも同様に、羽毛の抜け替わる時期を迎えます。まとめて「羽抜鳥」といいます。春には高らかに囀(さえず)り、美しい羽根で雌を誘った雄鳥も、今はまだらに禿(は)げているのかしらとよけいなことを考えてしまう高田です。

さて、久しぶりにクイズをしましょう。

春や秋とは異なり、夏は鳥の出入りがあまりありません。ですがこの声を聞くと「夏だなあ」と思う鳥がいます。音声付きでないのが残念ですが、声を想像しながら読んでください。

(1)時鳥 (2)郭公 (3)夜鷹 (4)葭切 (5)水鶏

ヒント (1)不如帰、子規、杜鵑とも書きます。(2)閑古鳥のことです。

(3)蕎麦(そば)や特殊な商売の女性を指すこともありますが。

(4)鳴き声から、行々子とも呼ばれます。

(5)鳴き声の特徴から、鳴くことを「叩く」と表現されます。

では答えです。

(1)ほととぎす:5月ころ、南から渡ってきて日本に夏を告げます。鳴き声は古くより「テッペンカケタカ」「トウキョウトッキョキョカキョク」などと聞きなします。鳥語と人語ではイントネーションが異なるようですが、一度コツをつかむと、そうとしか聞こえなくなるのが不思議です。

鳴くときに口中の鮮紅色が見えることから「鳴いて血を吐く」ほととぎすと言われます。

谺(こだま)して山ほととぎすほしいまゝ 杉田久女

(2)かっこう:初夏、南方から渡ってきて「カッコー カッコー」とのどかに鳴きます。のどかと聞くか、さびしいと聞くかによりますが、「閑古鳥が鳴く」と言うと商売がはやらないさまとなります。

憂き我をさびしがらせよ閑古鳥 芭蕉

(3)よたか:姿が鷹に似て、夜行性であることによる命名。口を開いて飛び回り、入ってきた蚊などを食べるので「蚊喰鳥(かくいどり)」とも呼ばれます。

夏の夜「キョキョキョキョキョ……」と長く続けて鳴く声を聞いたことはありませんか。

夜鷹鳴きいつも何かに急かれゐる 棚山波朗

(4)よしきり:葭(よし)の茎で巣を作ることによる命名。「ギョギョシ ギョギョシ」と賑やかに鳴くことから「行々子(ぎょうぎょうし)」の名もあります。

身辺をさがすと、鳴きまねの得意な人がひとりはいる――ような気がしますがどうでしょうか。

行々子殿に一筆申すべく 波多野爽波

(5)くいな:クイナには130ほどの種があるそうです。有名な沖縄の山原(ヤンバル)地方にいるクイナもその1種です。

夏の季語となっている水鶏は緋水鶏(ヒクイナ)で、雄の鳴き声が「コツコツコツ」と戸を叩くように聞こえることから、和歌などにも「水鶏叩く」と表現されてきました。

一つ家を叩く水鶏の薄暮より 松本たかし

いくつ読めましたか?

神奈川北部に住む私は、夏の夜、寝床に入って耳を澄ますと、夜鷹の鳴き渡る声を聞くことがあります。また朝方には、郭公や時鳥の声で目が覚めることもあります。まだ一度しかありませんが、未明に「虎鶫(とらつぐみ)」の「ヒィー ヒィー」という細く幽かな声(怪談に出て来そうな声です)を聞きとめ、驚きのあまりそれきり眠れなくなったこともあります。

冷房を切って窓を開けることの増える今年の夏は、鳥の声が身近になるかもしれません。

(高田 正子)


http://caffe.main.jp/001/?p=3057  【今月の季語(7月) 夏の鳥】 より

春や秋とは異なり、夏は鳥の出入りがあまりありません。ですがこの声を聞くと「夏だなあ」と思う鳥がいます。

まず〈ほととぎす〉。

5月頃、南方から渡ってきて日本に夏を告げます。雪月花はそれぞれ冬、秋、春を代表する季語ですが、ここに夏の季語代表として〈ほととぎす〉を加えるほどの存在です。時鳥、不如帰、子規、杜鵑と漢字ではいろいろに書けます。

鳴き声は、私の耳には「キョッキョキョー キョッキョキョー」と聞こえますが、古くより「テッペンカケタカ」「トウキョウトッキョキョカキョク」などと聞きなします。鳴くときに口中の鮮紅色が見えることから「鳴いて血を吐く」ほととぎすと言われます。

谺して山ほととぎすほしいまゝ   杉田久女

次は〈郭公〉。

閑古鳥のことです。夏、南方から渡ってきて「カッコー カッコー」と静かに鳴きます。これをのどかと聞くか、さびしいと聞くかは人それぞれ、時と場合にもよるでしょうが「閑古鳥が鳴く」と言うと商売がはやらないさまとなります。

憂き我をさびしがらせよ閑古鳥   芭蕉

〈夜鷹〉は姿が鷹に似て、夜行性であることによる命名です。口を開いて飛び回り、入ってきた蚊などを食べるので蚊喰鳥とも呼ばれます。

夏の夜「キョキョキョキョキョ……」と長く続けて鳴く声を聞いたことはありませんか。

夜鷹鳴きいつも何かに急かれゐる  棚山波朗

〈葭切〉は葭の茎で巣を作ります。「ギョギョシ ギョギョシ」と賑やかに鳴くことから〈行々子〉ともいいます。身辺をさがすと、鳴きまねの得意な人がひとりはいるーーような気がしますがどうでしょうか。

行々子殿に一筆申すべく      波多野爽波

鳥の種類というのではありませんが、〈羽抜鳥〉も夏の鳥です。人の更衣と同じで、鳥類も年に何度か換羽の時期を迎えますが、季語になっているのは夏期の換羽中の鳥です。

歳時記には、〈羽抜鶏〉の例句が突出して多いです。〈羽抜鴨〉〈毛を替ふる鷹〉という傍題もあります。この鷹は鷹狩用の鷹です。種別に季語となっているのは、身近にいる大型の鳥で感情移入しやすかったからでしょう。羽抜鷹と言わないのは、鷹に対する敬意の表れかもしれません。

人間と暮してゐたる羽抜鶏     今井杏太郎

ほかの鳥たちも同様に換羽します。まとめて〈羽抜鳥〉といいます。春には高らかに囀り、美しい羽根で雌を誘った雄鳥も、今は哀れにもまだらに禿げているということですね。(正子)