少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口72-
72 この国の単位
「まあ、いい。純人型にお目にかかれるなんてラッキーだ。純人型様のご要望とあらば、ご案内しようかねえ?なあ、キャシー?」
「え、ええ。リンダがそう言うならいいんじゃない?・・・私は純人型の、しかも子供に出会ってお役に立てるなら光栄だわ。」
キャシーは愛想の良い笑みを浮かべて彩里水と白兎を見ている。
「ほんとですか!?お願いします!この城の敷地の外へ行きたいです。」
「・・・。ここはもうほとんど敷地の外への境界だよ。」
リンダが含みのある言い方をしたが、彩里水と白兎はそれに気がつかない。
「え!?マジですか?ってことはもうめちゃくちゃ狭かったってことじゃない?庭園。」
「だな。オレらが来たときメチャクチャ敷地広そうだと思ったけど、実はそうでもなかったんだなー。あのドラゴンが降り立ったとこが、実は境界の辺りだったとか?」
「あー、なるほど。かもね。ありえるー。」
「それで、何か目印とかはありますか?敷地の外に出ますって感じの目印。」
「・・・地中の中なら、あと500ミロンほど進んだとこに看板が見え始めるはずだよ。“城の敷地出入り口”って看板がその辺をウロウロしてるはずだ。」
リンダはまた何か考えるようにしてから答える。
「・・・500ミロン?」
「ん?なんだ?」
「500ミロンってどのくらいですか?」
「ん?アンタたち純人型なのにそんなことも知らないのか?」
訝しげな顔をして彩里水と白兎を見たリンダはハッと気がついたように言う。
「・・・まさかあんたたち、ここの世界のもんじゃないのか?」
リンダが言うと、キャシーの顔色が変わる。
彩里水は気付かず答える。
「はい。オレたちはなんか知らないうちにここに紛れ込んじゃって、帰り道を探してるんです。」
「・・・はっ。驚いた。」
リンダとキャシーは目を丸くして彩里水と白兎を見る。
2人を取り囲む玩具の集団たちはそんな2人の様子に首をかしげている。
「なるほど、紛れ込んだのは城だけじゃなくこの世界全体にってことか。・・・ははは!いいじゃないか!面白くなってきた!」
リンダの言葉の意味がわからない彩里水と白兎はただボーッとリンダとキャシーの様子を見ていた。
「ああ、500ミロンがわかんないんだったね。えーっと、500ミロンは・・・。」
リンダはキョロキョロと周りを見渡したが、それを諦めて手を広げて見せた。
「コレが半ミロンってとこだね。」
「えーっと、大体1メートルぐらいが半ミロン?ってことはー・・・、500ミロンは1キロぐらいって感じか!」
白兎は計算すると彩里水に同意を求める。
「・・・え?あ、そう、・・・そうだね!白兎が言うならそうなんだよね、きっと。」
「・・・おい彩里水。おまえ絶対よくわかってないだろ。」
「ま、まーいーじゃん。オレ算数苦手だしー。」
彩里水は白兎から逃れるように視線を泳がす。
「ま、いいわ。大体1キロぐらい進んだら看板があるってことだ。ほんと、意外と近かったな、出口。やっと城から出れるよー。」
白兎は両拳を上に掲げ、上を見上げてガッツポーズをする。
「だね!じゃ、リンダさん、キャシーさん、ありがとうございます!」
彩里水はリンダとキャシーに向き直し、お礼を言って先へ進もうとした。
するとリンダが声を張り上げる。
「ちょっと待ちな!」
――きええ!何!?どうしたの?急に何でまた凶暴性復活?実はいい人だと思わせてホントはボコボコにしようって感じ!?
白兎が焦っていると、リンダはキャシーに目で合図を送る。キャシーはリンダの意図を理解し静かに言う。
「彩里水と白兎。あんたたちはいいわ。だけど、キャンドーとか言ったっけ?あなたにちょっと話があります。こちらにきて。」
キャシーがキャンドーだけを呼び出すとリンダが彩里水たちには聞かれないように小声で問いかける。
「アンタ、この国の出身?」
「はい。」
キャンドーはやや緊張しながらも素直に答える。
「で、城に仕えてんだよね?」
「はい。」
「・・・てことはこの国の法則には詳しいはずだろ?さっきあたしが言ったことが全部適当だって、アンタわかってるよねえ?」
「・・・さっき言ったこと、と言いますと?」
キャンドーは表情を変えずに尋ね返す。
「500ミロン先に敷地との境界があるって言ったことさ。」
「・・・はい。」
つづく