少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口74-
74 外へ
「あ!あった!あれじゃない?看板。」
彩里水は前方に見えてきた看板を見つけて大声を上げて駆け出す。
続けて白兎も看板に向かって駆けていく。
「わ!とうとう来たな。城の出口。・・・はー、長かった~。ここへ来てまだ1日ぐらいしか経ってないとはとても思えないな、彩里水。」
白兎は大きな幼虫が丸まっているような形の看板に“庭園出入り口”と書かれているのを見ながら言った。
「ね。ここまで来れたね!白兎。」
「でもさ、ここを通過したとして、・・・地上にはどう戻るんだ?」
「確かに。入る時は蟻さんたちを見てたら勝手に入ったし、白兎たちはオレが引っ張っただけだしね。」
「・・・まあ、ひとまず地中でも良いからここの外に出て、それから考えるか!」
白兎はニッと彩里水に笑いかけて言う。
彩里水もそれに答えるようにニッと笑い、言った。
「だね!じゃ、せーので行こう!」
「ち、ちょっと待った!でも、敷地から出るときなんか起こんないかな?」
「・・・はあ?別に何も起こらないんじゃない?逆に何で何か起こるって思うんだよ?」
彩里水は呆れた顔で白兎に言う。
「いや、だってさ、なんか順調すぎて逆に的な?」
「はあ。ほんと、心配性だよね、白兎。別に追手とかもいないし大丈夫でしょ。」
彩里水は辺りをキョロキョロと見回す。
「・・・ま、まあ、そうだよな。ごめんごめん。」
白兎は彩里水に言われて、この期に及んでまだ先のことを心配してしまった自分がちょっと情けなくなり頭を掻く。
「じゃ、行こうよ。」
「・・・おう!」
彩里水は再び掛け声をかける。
「じゃあ、行くよ?」
「・・・せーの!」
二人は顔を見合わせながら、息を合わせて幼虫の看板の脇をジャンプで飛び越える。
白兎は思い切ってジャンプしたが、やはり少し怖くなりジャンプの瞬間目を瞑る。
地中では動作の音が彩里水と白兎には聞こえないが、確かに足や手には何かに触ったり歩いているときに地面を踏みしめているような感覚はあるのだ。
初めは白兎はそれも不思議に思っていたが、途中から考えるのを止めていた。
ジャンプしたときも、いつも地上でジャンプするように地面を蹴る感触もあったし、その後地面に着地する時に自分の体重を両足で支える感触もあった。
しかし、いつも地上ならタンッやらトンッやら着地するような音がセットで聞こえるはずだがそれは聞こえなかった。
しかし、白兎が目をそおっと開くと、確かに彩里水と白兎は幼虫を飛び越えていた。
「・・・特に外に出たっていう実感はないな。」
白兎は地上を見上げる。
「うん。・・・まあ、出たんじゃない?」
彩里水もつられて地上を見上げる。
「・・・意外とあっけないな。」
白兎がそう言うと、二人は顔を見合わせて笑い合った。
「なんだよ、なんで笑ってんの?」
彩里水は笑いながら白兎に言う。
「いや、わかんねー。でもお前だって笑ってんじゃん。」
「はは!だって、なんかウケる。てか、なんか嬉しい気もするし、ホッとしてる気もするしいろんな感情が混ざってる感じする。」
「わ、わかる。なんか安心して気が抜けた感じもする。」
「うん。」
二人は、ひとしきり笑い合った。
つづく