「幸福な王子」オタ・ヤネチェック Ota Janecek
昨日更新したチェコ絵本の中から、当店でも何度か紹介しているチェコの絵本作家/芸術家、オタ・ヤネチェック(1919-1996)による「幸福な王子(オスカー・ワイルド)」を紹介させて下さい。
ヤネチェックはチェコでは小学校の教科書の装画を務めるほどの国民的な作家で、絵本以外にも版画作品、彫刻作品などを手掛ける芸術家でもあります。日本で言うと例えば佐藤忠良さんに近いような存在でしょうか。
さて、こちらの絵本「幸福な王子」は読んだことのある方も多いかと思います。オスカー・ワイルドの代表的な童話のひとつで、ヨーロッパのとある街の広場に建つ黄金の王子様の像(幸福な王子)と一羽のツバメの物語です。
冬になりつつある季節、ツバメは他のツバメたちからは随分と遅れて南方へ、エジプトへと飛び立とうとしているところ、この幸福な王子と知り合いになります。
王子の話を聞くと、自分の剣に付いているルビーを彼が見た貧しい家庭へ持って行って欲しいとツバメに言うのです。
ツバメは王子の願いを聞いて、ルビーを届けます。
次の日、今晩にはもうエジプトへ行きますと王子へ告げると、王子はもう一晩だけ、と言い、町外れに住む貧乏な若者の話をします。彼に自分の目(それはサファイアで出来ているのです)をその若者に持って行って欲しいと頼むのです。ツバメはまた王子のお願いを聞き、サファイアを持って行きます。
日に日に寒さは増していき、それでもツバメは貧しい者達へ、自身の黄金と宝石で出来た身体を分け与える王子の頼みを聞き続けるのです・・・。
このお話を自己犠牲の訓話として読むのか、それとも現代社会へのアイロニーとして読むのか、それは全く読者へと委ねられていると思いますが、ツバメが感じたであろう身を切るような寒さのように、この悲哀の物語は読むものの胸を打ちます。
ヤネチェックの絵はその悲哀を、そしてツバメが王子に語り聞かせる美しいエジプトの風景を、貧しいものたちの絶望を、その子どもたちの夢を、この物語がもつ数々の象徴を余すところ無く描き切っています。
この絵本は1970年代に佑学社より発売されておりましたが、このあたりの佑学社のチェコ絵本はどれも高騰しており手に入れるのが難しくなっています。当店在庫商品のヤネチェックによる「幸福な王子」はハンガリー語版、そして英語版の在庫がございます。
オスカー・ワイルドの「幸福な王子」自体は色々な出版社から、文庫本などでも日本語訳が出されておりますので、ヤネチェックの絵本とともに読むのも良いかもしれません。
是非このヤネチェックによる「幸福な王子」を見てみて下さい。
「A BOLDOG HERCEG」(ハンガリー語版)
「THE HAPPY PRINCE」(英語版)