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においの記憶

2020.10.08 08:35


受験した某大学の課題で「『におい』についてあなたが思うことを書きなさい」

というのがあった。


詳しいことは覚えてないけど

視、聴、嗅、味、触の中で

なつかしい気持ちをリアルに刺激するのが嗅覚、つまり「におい」だ!というようなことを

稚拙な文章でなんだか最もらしく頑張って書いた。




事実それは

その当時も今も本当に思っていて、



街とか風とか人のにおいから湧き起こる懐かしさと、そこから辿る「においの記憶」って不思議なほど鮮明に私は思う。



それは視覚や聴覚の記憶だけでは辿り着けない深みへ誘っていく。



それは温かくて気持ちよい感覚の時もあれば、塞いでいたところに踏み込む少しこわい感覚だったりもする。




さて

私は今日パンを焼いた。

りんごとレーズンが入っている。



雨の日はなぜこうも焼きたくなるのか。


それはそのシチュエーションで焼き上がるにおいが、大切な記憶だからだと気づいた今日。


焼き立てのあまい香りが部屋に立ちこめて

雨音を聴きながら目を瞑った。





英才教育にとんでもなく厳しい母と

その母がオーブンで菓子を焼く雨の日



その日はとても優しくて

わたしの好きな母





光が差し込まない一日中雨降りの冷える日は

焼き菓子やパンのにおいと共に

その過去に還る時間でもある




それが前までは少しこわくて

今では一番あたたかくて好きな時間