宇多 喜代子
https://kangempai.jp/writing/2014/08uda.html 【句集『宇多喜代子俳句集成』宇多喜代子】より
高潔真撃の句業
十八歳から俳句を始めた著者は、桂信子(「草苑」主宰)に出合い、その伸びやかで真撃な俳句精神に鍛えられる。
「和して同ぜず」を信条に先達俳人らと淡交、中上健次の「熊野大学」への参加や、日本の歳事や里山を見直す活動にも力を注いできた。
伝統俳句、新興俳句、前衛俳句の枠を超えて、広い視野から現代俳句を公平明晰に評価してきた俳人でもある。
本書は、第一句集『りらの木』から第六句集『記憶』までの既刊句集一五〇八句に、新たに第七句集として編まれた『円心』一六八句を添える。
凛然たる気風を持ち続けたひとりの女性俳人の俳句道として、また時代をしなやかに生き抜いたひとりの人間の人生の軌跡として、六十余年の句業を集成する!
(帯文より)
麦よ死は黄一色と思いこむ
私の精神の産土に見えてくるのは、かぎりなくつづく麦秋の黄と青田の水の匂い。三十代で体調を崩し、過敏になっていた耳には、熟麦の禾の触れ合うさらさらという音が聞こえるように思われることがあった。折々の不安 を救ったのは、家族や善意の方々のさりげない言葉。ぞれといささかの暢気気質。失意のとき、言葉の真には百薬に勝るものがあった。
(自註より)
宇多喜代子さん文化功労者に。2019年11月3日(俳句&ニュース)ゆったり鑑賞版
宇多 喜代子(うだ きよこ) 1935年(昭和10年)10月15日 -山口県徳山市(現:周南市)生まれ。武庫川学院女子大学生活化学科卒。
1982年、第29回現代俳句協会賞。
1985年大阪俳句研究会創設に参加、同会理事。
2001年、句集『象』にて第35回「蛇笏賞」。
2002年、紫綬褒章。
2004年、師の桂信子が没、「草苑」終刊後、「草樹」を創刊、会員代表。
2006~2011年、現代俳句協会会長。
2012年、『記憶』で第27回詩歌文学館賞俳句部門。
2014年、第14回現代俳句大賞。
2016年、日本芸術院賞。
2019年、第18回俳句四季大賞、文化功労者。
現在、現代俳句協会特別顧問。日本藝術院会員。
https://www.joseishi.net/2016/06/09/5071/ 【小林聡美さん×俳人・宇多喜代子先生 おとなの俳句対談 [おとなスタイル]】 より
日本の美しさを豊かに表す俳人・宇多喜代子先生が、多彩なゲストとともに、季節の句を詠み合います。今回お迎えするのは、女優の小林聡美さんです。
宇多先生(以下敬称略) 小林さんとは、私の出演していた俳句番組にゲストとして来ていただいたのが、ご縁の最初でしたね。
小林 はい、私は俳句を始めて今ちょうど4年目なのですが、テレビで「NHK俳句」を毎週欠かさず拝見しているんです。宇多先生の俳句に対する厳しさと大らかさ、そして明るさがとても素敵だなと思っていたら、ちょうどゲストにというお話をいただきまして。
宇多 あの頃、まだ俳句を始めたばかりだったんですよね。その番組の後、見てくださった方の反応がとてもよかったものだから、今度は吟行、つまり俳句を詠みながら旅するのはどうか、という話になって。
小林 それがきっかけで一昨年、イラストレーターで猫好きな南伸坊さんと女優の平岩紙さんもお誘いして、猫がたくさんいることで有名な宮城県の田代島と沖縄の竹富島に、先生とご一緒させていただきました。
宇多 猫を詠むというテーマで、2本の番組になりましたね。
小林 仕事ということを忘れるくらい、楽しかったです!
宇多 私も楽しかったですよ。竹富の海も本当にきれいで。みなさん、よい句を詠まれましたね。
題は季語だけでなく、身近なものや名前でも
小林 ただ吟行だと題や季語が決まっていないことも多いうえに、刺激をうける情報がありすぎて、迷ってしまうことがあります。
宇多 それが吟行の大変なところですね。何かに自分で目をつけないといけませんから。情報がありすぎるときは、意識的に一点に絞るというのも大事ですよ。うろうろと歩きまわって、いい句ができるとも限りません。でも、何か必ずあるものです。小林さんは、俳句のどんなところがお好きなの?
小林 とにかく句会がとても楽しいんです。それぞれの人の暮らしの目線が句によく表れるので、とても興味深くて。
宇多 確かに、一人よりも仲間と一緒に取り組むほうが上達しますよ。他から教えられることが多いということでしょう。句会の題は、季語ですか?
小林 はい、いつもそうです。
宇多 もちろん季語でも楽しいけれど、たとえば鉛筆とか消しゴムなど、身近なもので題をお出しになってもいいかもしれませんね。あと名前の一字をとるという方法もあります。たとえば、小林さんなら「林」という字を題にして、みんなで句を作るんです。
小林 面白いですね! 今度の句会で、ぜひ試してみます。
<小林聡美さん プロフィール>
1965年、東京都生まれ。映画やドラマ、CMへの出演のほか、『散歩』(幻冬舎文庫)、『読まされ図書館』(宝島社)などエッセイの著作も多数。映画は4月公開『あやしい彼女』、5月公開『海よりもまだ深く』に出演。
<宇多喜代子先生 プロフィール>
うだ きよこ 俳人。現代俳句協会特別顧問を務める。著書は『名句十二か月(』角川選書)『、里山歳時記 田んぼのまわりで』(日本放送出版協会)など多数。作家の故・中上健次氏との親交でも知られる。農事や歳時記に造詣が深い。