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Postcards from Laima

眺めのいい部屋。

2016.07.30 09:46

訳あって自分のライフスタイル遍歴を振り返り中。


以前仕事で20代後半から数年間アジアの某国に暮らしていたのだけれど、そのとき住んでいたご近所さんたちの暮らしぶりが、かなり今の自分のライフスタイルを形づくってくれているなぁと改めて。


お向かいのフランス人ご夫妻。はす向かいのスウェーデン人。特に興味を惹かれたのはこのご近所さんたち。


その国は当時あまり物資も十分ではなかったし、娯楽といえば誰かの家に集まるかいっそ遠出して旅行するか...。街に繰り出してここちよいカフェで寛ぐ、なんていうちょうどいい感じの休日の過ごし方はさて。かなり記憶に乏しいなあ。


ーと、日本に比べると概して「ないない」づくしともいえる日常。

そんな中、くだんのご近所さんたちは毎日のように楽しそう。


外国人が住まうそのエリアはセキュリティーの向こうは比較的安全で、窓越しに日常風景がオープンに見える環境。


金曜の夕暮れになるといつも決まってダイニング(といっても4畳くらい)にキャンドルが灯って、パリッと糊のきいた清潔なクロス、シンプルな器がランチョンマットに並んで、もちろんカトラリーはピカピカ。

同じ間取りのはずなのに、空間に漂う空気がなぜこうも澄み切っているのだろう。このフランス人夫妻のお宅を通り過ぎるたび、いつも何かしらハッとさせられ。

ゆたかな光景ってこういうこと、と。


当時20代後半。残業でいつもくたくたで、おまけに周りの日本人たちもほぼ疲れていて、週末ごとにこんなふうに家族でテーブルを囲むのを楽しみにしてる人はどのくらいいたのか。笑


ある晴れた日曜、そのフランス人のご主人がジャズを大音量で流しながら玄関先でにこやかに自転車を洗っていたから、思い切って毎週末のすてきな食卓風景について尋ねたところー

曰く。


「ここに来てすぐは、正直ヨーロッパと違いすぎて面喰らったけど、一年と少し暮らすんだから、この国の文化をリスペクトしながら、今まで自分たちが大切にしてきたペースをうまく調和させて過ごそうって決めた。家でのディナーは特に英気を養う大切な時間だからカトラリーだけフランスから持ってきたけど、後は妻がクロスをローカルな布地で手作りしたりね、この国ならではのカルチャーを取り入れながら楽しんでるよ。」


ガツンとね、きましたね。


暮らしがベース。

わたしは仕事がベース。。。


とにかく必死に仕事がんばんないと、って無我夢中なまいにち。涙。

空間を整えることは私も好きなことの1つだったはずなのに諦めかけてるまいにち。


そんな中、気負いなくなんともナチュラルに楽しく暮らしてる外国人を目の当たりにして、ご近所なのをいいことにしばらくみんなの暮らし方を観察することに。


カーテンや基本的な家具は備えつけだったから、ある日単身で赴任してきたとしても何ら問題なく生活は回るのだけど、そんな受け身な暮らし方にとどまらないのが彼らの哲学。


当然この奥さまは既存のカーテン(ノイジーな柄物!)を外し自分好みのシンプルなものに取り替え、場所ばかりとって使わないチェストは管理人のおじさんに預かってもらい、花市場で大きなグリーンをわさわさ調達。とにかく生活する基地をしっかり着々と自分の軸で整えている姿がとても好ましくて。


そう、彼らは暮らしに愛情をたっぷり注いでた。

この国にはあれがない、これがない、って不平を言わず、どうやったらあるもので最大限楽しめるか。 

その姿も美しかった。


いわゆる第3世界に暮らしてると自分の国をすぐ引き合いに出して不満タラタラな人も結構いるのが現実だったりするからね。


そんな当時のロールモデルだった奥さま。

ライティングや色使いは工夫と意識次第よ、って言いながらリビングを見せてもらったこともある。この国にはすてきな雑貨屋さんとかインテリアショップがあるわけじゃないのに、小さな電球と布を使って彼女の手にかかるとアートへ昇華しちゃうんだなぁ。


部屋が広いとか狭いとか間取りがどうとか新しい家具があるとかないとかーそれ以前に大切な精神をたくさん学んだ。


そのあたりから私の住まいに関する意識はかなりぐるっとチューニングし直されたというか、喝を入れられたというか。


自分の世界を日常に創り上げるっていつだってどこでだってできる。  

そうシンプルに腑に落ちたのはこのとき。


モノがあるかないかに関わらず。

単にそうしたいかしたくないか。

何が自分にとって心地よいか。

ホッとする、帰りたい場所。


その後この国もじわじわお店が増えてきたりしたけど、彼らは決して簡単にインテリア雑貨を買ったりしてなかった。それより骨董市に出向いて、自分たちの感性で古い器をキャンドルホルダーに使ってみたりね。古いものとモダンの融合が好きになったのもこの頃。


感性を研ぎ澄ますたくさんのお手本を見せてもらってるなぁと私はいつも感じ入ってたのに彼らにとってはこういう暮らし方はいたって普通で、まるで気取りもしないあたり、そこもまたものすごく「粋」だった。


わたしもいつ窓から覗かれてもすてきに暮らしてるわねーなんていつか言われてみたい、なんてね。今明かすとその頃の密やかな野望だったよ。笑


あ、そうそう。

ちなみにこのご夫妻、どちらもインテリアやデザイン業界とはまったく無縁のお仕事されてた、ということも書き添えておきます。


さて。

長くなったので、もう1人のご近所だったスウェーデンのライスタイルについてはまた次回っ😉


***

写真はこのときのフランス人ご夫妻に捧げる一冊。今ではわたしもテーブルセッティング楽しんでます!と。笑