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過去の出来事

和俗童子訓10

2020.10.12 08:34

貝原益軒著『和俗童子訓』10

幼き時より、心ことばに忠信を主として、偽りなからしむべし。もし人をあざむき、偽りをいはば、きびしくいましむべし。こなたよりも、幼子をあざむきて、いつはりを教ゆべからず。こなたよりいつはれば、小児、是にならふものなり。かりそめにも、いつはりを云は、人にあらず、と思ふべし。心にいつはりとしりながら、心をあざむくは其罪いよいよふかし。又、人と約したる事あらば、必其約をたがへざるべし。約をたがへては、いつはりとなり、信を失なへば、人にあらず。もし後に信を守りがたき事は、はじめより約すべからず。又、小児には、利欲をおしえしらしむべからず。よろづにさとくとも、偽りて、只欲ふかく、人の物をむさぼるは、小人のわざなれば、幼時より、はやく是を戒むべし。ゆるすべからず。


【通釈】

幼い時から、心も言葉も真心を主として、偽りがないようにさせる。もし人を欺き、偽りをいえば、きびしく戒めよ。自分の方から幼な子を欺いて、偽りを教えてはならない。自分から偽れば、小児はそれを見習ってしまうものである。かりそめにも偽りをいえば、人にあらずと思え。心に偽りと知りながら、我が心を欺くのは、その罪いよいよ深い。

また、人と約束した事があれば、必ずその約束に背いてはならない。約束を背けば偽りとなり、信用を失えば、人ではない。もし、後に信用を守りがたい事ならば、はじめより約束をしてはならない。

また、小児には利欲を教え知らしめてはならない。どんな事に利発でも、偽るようになり、欲深く、人の物をむさぼるのはつまらぬ者の所業であるから、幼時より、早くこれをを戒めるべき。決して許してはならない。