少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口79-
79 窮地
キャンドーがただの燭台へと変わった様を見た白兎は呆然とする。
だが、追手は白兎を悲しませる暇もなく、キャンドーを燭台に変えたところで止まることもなく迫ってくる。
既に彩里水の姿は見えなくなっていた。
――キャンドー!・・・何!?なんで?どうなった?なんで飛び出したの!?オレを助けるため!?
白兎の目からは涙がこぼれ落ちていた。
考えながらも白兎は走り出した。
身を呈して自分を助けてくれたキャンドーの行動に報いるためにも泣いている場合ではない、走らなければならないと感じていた。
「ハアッ。ハアッ・・・!」
白兎は走り続けるが呼吸は既に苦しい。
――キャンドー・・・!矢に当たった直後に・・・ただの燭台に戻っちゃったみたいだった・・・。どうなった?あのままあそこに置いておくしかないの!?
走りながらもキャンドーのことが頭から離れない白兎。
白兎の後ろには、トランプの兵の薄っぺらい紙の胴体から映えたように着いているハート型の手が、今にも白兎の背中に掴みかからんばかりの距離にあった。
「ハッ。ハッ。」
彩里水も走り続けていた。
しかし、どれだけ走り続けても一向に追手を振り切ることができない。
――どうしよう。・・・なんとかしなきゃ!このまま走っててもただ疲れて止まったところを捕まるだけだ!・・・何か!何かないか!?どこか、隠れるところ・・・!
彩里水は森の中を見回し走りながら考え続ける。
――そこら中が茂みだ。上手くすれば隠れることはできそうだ。実際、体が小さいキップとクップはすぐに茂みに身を隠してた。オレと白兎が走ってたのもあって、トランプたちはキップとクップにはまったく気がついてないようだった。もしかしたら走り続けるよりうまく茂みに身を隠す方が逃げられるかも・・・!
彩里水はそう思ったが、身を隠すにはあまりにも距離がないような気もしてそこに身を隠すため止まることが恐ろしかった。もし立ち止まってうまく身を隠せなかったら即捕まってしまう。
なんとか逃げ切れないかと考えながら走り続けていると、頭上から突如声がする。
「助けてあげようか?」
声が聞こえた方向に彩里水は顔を向けた彩里水は思わず目を見開いた。
そこには城で見た人物が、木に足を引っかけ逆さまにぶら下がっていたのだ。
「・・・!おまえは!」
「やあ。」
つづく