少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口 最終話-
最終話 君は夢じゃない
新学期、先生が教室に来るまでの間、いつもなら少し浮き足立ち新しいクラスへの期待感にワクワクしながら先生が来るのを待つ彩里水だが、今年はどこか物足りなさを感じていた。
春休み中、あの不思議の国での体験がどうしても夢の中の出来事とは思えなかった彩里水は、何度か父にもう一度遊園地に行きたいとせがんだ。
しかし結局連れて行ってはもらえず何も確かめることができなかった。
遊園地のマスコットキャラクターのことも調べてみたが、やっぱり白ウサギのキャラなんていなかった。
たった十数分の夢の中の出来事とは思えないほど、白兎は彩里水にとって大切な存在になってしまっていた。
――だって、一緒にあの塔から抜け出して・・・。アイツ、あの後どうなったんだろう。夢なら気にする必要なんてないんだろうけど・・・。夢なわけ・・・。それにキップとクップ、キャンドー・・・。
チャイムが鳴り、去年のも担任だった先生が教室に入ってくる。
――アイツが、白兎が夢なわけ・・・ない・・・。
と、先生の後ろにランドセルを背負った男子が着いてくる。
――え?
彩里水は驚いて口をあんぐり開けたまま固まる。
「今日は挨拶の前に、みんなに転校生を紹介します。さ、自己紹介して。」
先生が言う前からみんなの視線はその男の子に集中している。
「時計白兎です。」
「トケイ?変な名前―。」
クラスの男子がからかい半分に声を上げる中、彩里水は目を見開いて大きな声を出しながら椅子から立ち上がる。
「!!!おまえ!」
白兎は大声を上げた男子に目をやる。
すると、白兎も目を見開いて彩里水に負けず劣らず大声で言う。
「彩里水!」
白兎は叫ぶと同時に彩里水に駆け寄って抱きつく。
「え?時計くん、青園くんと知り合い?」
先生が交互に2人を見て慌てるなか、彩里水は想像もしなかったこの上ない出会いに、このクラスの1年間が過去最高のものになることを確信していた。
「白兎!良かった・・・!やっぱりおまえは夢じゃなかった!」
少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口- 完