映画『子どもたちをよろしく』
友人から教えてもらい、この映画を観に行きました。
結論から言うと・・・
すべての大人に、いや、中学生以上の子供達も含めて、是非観て欲しい映画です。
公式サイトを見て頂けると予想できるかと思いますが・・・この映画に出口となる糸口はありません。
答えのない世界です。
今、日本で起こっている現実を、可視化出来ない・実際に踏み入ることが出来ない現実だからこそ、フィクションという形で描いた映画だと思います。
でも、描かれている世界は、リアルに存在している痛すぎる世界><。
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私は昭和36年生まれです。
私が生まれ少年時代を過ごしたのは、戦後の復興政策が功を奏し、急激な経済成長を迎える時期に差しかかっていた時代だったと言えます。
核家族化が進んだ時代でもあります。
それでも、地域社会というものは機能していて、ガキどもがいたずらすれば近所の爺さん・婆さんからこっぴどく叱られたり、逆に子供達に何かトラブルが発生したら、血の繋がりのない大人達までもが結束して、ヤンヤヤンヤと対応してくれていたように思います。
いい意味で、地域全体で子育てをしてくれていたのですよね。
私が結婚して子育てをしたのは、故郷:宮崎ではなく、東京でした。
1990年からでしたが、東京は思っていたより人情味に溢れる方が多く、沢山の方々の見守りがある中で、子育てが出来ました。
有難いことです。
頼んでもいないのに、近所の方々、商店街の方々が、監視するわけではなく、なんとなくゆるい感じで私達の子供たちに目配りしてくれていたのですから。。。
その根本にあるのは「声かけ」です。
「あら、○○ちゃん!一人でどこに行くの?」
「気をつけていくんだよ!道路に飛び出しちゃダメだからね!」
なにげない言葉が、親よりも親身なわけです(^_^;)
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その後・・・
時代が進み、核家族化が更に進み、地域社会という自発的なコミュニティがどんどん失われ、核家族は自分たちで生活・子育てをしよう、自分たちしか子供を守れないんだから・・・という時代に変化します。
他人の助けを排除するようになります。
自分たちの生活スタイルにこだわりを持ち、他人からの干渉を嫌うようになります。
家庭の密室化が進んだわけです。
さてここで・・・・
江戸時代の長屋を思い浮かべて下さい。
夫婦喧嘩でもしようものなら、その声は近所中に響き渡り、翌日の井戸端会議のメインテーマとなる。
いたずらした子供をこっぴどく叱る声も同様。
それを聞いたご近所さんは、奥さんに「あんた、ご主人のせいで随分と苦労させられてるんだね~」などと同情の声をかけてくれたり、いたずらっ子には「ほらね!怒られたんだから、もうするんじゃないよ!」と更に説教かましたりするわけです。
ところが・・・
家族の密閉性が濃くなると、家庭内で何が起こっているかさっぱりわからない。
昔なら「何があったの??!!」と土足で家に踏み込んで仲裁したりできたのに、例え、言い争う声が耳に入ってきても踏み込めないようになってしまったわけですよね。
マジやばいと感じたら、警察に通報するしかない。
でも、通報したことで逆恨みでもされたら、たまったもんじゃない><
プライバシーの侵害にあたるという理由で、地域内で他人様の生活に干渉することがタブーな時代へと変化してしまったわけです。
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映画の話に戻します。
風俗業(デリヘル嬢)の場面からスタートし、貧困家庭の同級生(中学生)を「ゴミ男」と呼び、壮絶なイジメを行う場面へと移ります。
かなり露骨な描写です。
痛々しいイジメの描写ですが・・・イジメられる事に何も抵抗しないこの子の心情は、わずかな希望を持っていたからだと思うのです。
父と自分を捨てて家を出た母親が、置き手紙に書かれたとおり、いつか帰って来てくれるという希望。
だから、情け容赦ないイジメを父や学校に告げることなく、ひたすら耐えることが出来た。
父親がギャンブル依存性であるがゆえに、家ではインスタントラーメンしか食べさせてもらえない状況にあっても、給食費を払ってくれる?とお願いする立場であっても・・・
父が深夜に帰ってくれば「お帰りなさい(^-^)」と笑顔で労いの言葉かけするほどの、健気な子なんです。
イジメられているなんて、父親に一言も言わない。
が、同級生から父親の本当の職業(運送会社ではなく、デリヘル嬢の送迎をする運転手だと・・・)を知らされ、信じていたものが崩れ始めてしまう。
それを父親に確認したら、「母親はお前を迎えになんて来ない。捨てられたんだ!」と真実を突きつけられ、殴られた後、抱きしめられる。。。
父親がすがってくるわけです。
自分は守られるべき存在なのに。。。
彼はギリギリ保っていた心をもはや保つことが出来なくなる。
母親という希望が無くなってしまったのだから、当然です。。。。。
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他にも、書きたいことは沢山あるのですが・・・・
私の文才では上手に表現できません。
この映画は、単純にイジメを描いたものではないということ。
「イジメはいけません!!」などという、安直なメッセージではないのです。
イジメという力関係(イジメられる側なのか、イジメる側なのか)なんて、一瞬のうちに逆転するわけです。
弱みを握られることがどれだけ恐怖かってことです。
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最初に書いたように・・・
地域社会で子供を見守り、育てて行くことの大切さがテーマだと思えてなりません。
無関心を装うしかない時代かもしれませんが、現実として、救いの求め方すらわからない子どもがいるということ。
これは紛れもない事実であって、貧困や家庭内DVなど、どうすれば解決の糸口を見つけられるのだろうか?という、問題提起なわけです。
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個人→地域→自治体→都道府県→日本国→世界→地球
個人の権利を振りかざして、あれこれ、ガタガタとクレームしか言えないんなら、改めて、「人は一人では生きて行けませんよね?」と問いたい。
同じ個人は2人以上いないのだから。。。
個性を大切にしたいものです。
個性に優劣はありませんから。。。
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最後に・・・
この作品に出演した役者さんは、こんなに難しくて重くて嫌悪感溢れるテーマなのに、世の中が感知していないリアルな暗部を表現してくれています。
すべての役者さんの魂が込められた作品であるし、制作側の明確なビジョンあっての作品だと感じました。
素晴らしい熱量を感じられたからこそ、見終わって翌日以降も、頭から離れないのです。。。
この映画に触れられる機会があるなら、是非触れてみて下さい。
切にお願いしますm(_ _)m