エンジョイ・ニュー・ユー!
先週から仮装で授業をしている。
授業を受ける生徒たちも、思い思いのコスチュームでやって来る。ハロウィン定番の魔女や海賊、ヴァンパイヤをはじめ、ミッキー、ミニー、ディズニープリンセス、キム、エルモ、ウォーリー、スティッチ、ミニヨン、ヴァネロペ、十六夜咲夜、胡蝶しのぶ、栗花落カナヲ、…初めて聞くキャラクターの名前も多い。「どんなキャラなの?」と聞くと、みんな丁寧に教えてくれるので、非常に勉強になる。特に「鬼滅の刃」の登場人物については、数日前より確実に詳しくなった。
本場のハロウィンはトリック・オア・トリートのために仮装をするが、日本人は仮装そのものを楽しんでいるようだ。確かに仮装はワクワクする。いつもの自分ではない誰かを演じることは特別感がある。魔法で美しいドレスを装わせてもらったシンデレラも、こんな気持ちだったのではなかろうか。憧れのお城の素敵な舞踏会…普段は厳重に閉じられた扉の向こうの夢の世界に滑り込む感覚は、日常でなかなかに得難い。
ちょっと話しは逸れるが、演じるということで、忘れがたい思い出がある。
小学校4年生の頃、友達がいない時期があった。それまで仲の良かった友達とちょっとした行き違いがあり、全く話しをしなくなってしまったのだ。元々人付き合いが上手い子供ではなかった私はクラスの中で孤立した。学校はつまらなかったし、毎日が寂しかった。長い一日を終えて家に帰り、ベッドのぬいぐるみ、クーちゃんに「ただいま。」と声をかける時には、こらえていた涙がこぼれた。
ある時学芸会が行われることになり、私たちのクラスは演劇に取り組むことに決まった。担任の教師は主要な役柄は全てオーディションで決めるという。クラスの前で演技を披露し、クラスメート全員が投票を行うのだ。何気なく応募した私は、ライバルの3人を圧倒的な票差で打ち破り、主役の座を勝ち取ったのであった。嬉しかった。良いところなんて一つもないと思っていた自分が、演じることで人の心に感動を与えることが出来ると知ったからだ。そしてその日を境にクラス中の友達が自分の周りに集まってきたことも覚えている。人の心は状況によってかくも移ろうものかとも思ったけれど、再び友達が出来たことは、10歳だった自分にはやはり嬉しかった。
あれ以来、多くの場所で演劇や演技に携わる機会を得てきた。学生時代は学芸会や文化祭。地域でこども劇団を立ち上げたこともある。大人になってからは声楽家に師事し10年近くミュージカル出演を続けた。現在も脚本を書いたり舞台監督をしたり、様々な所で演じることが人生の一部になっている。あるいは、と思う。4年生の頃の寂しさや痛みがあったからこそ、私は演技と出会い、今こうして各所で企画をするに至っているのかも知れない。そして、自分を上手く伝えられない、かつての自分のような不器用な生徒のために、演じることを通して、表現するって楽しいんだよ!と伝えたいのかも知れない。
そう思うと、ハロウィンウィークは、生徒の心を開き、新たな可能性を見せ、かつ思いっきり楽しめる、より貴重な時間に思えてくる。
Be ambitious, boys and girls!
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