言葉遊び
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「悟り」
悟りとは自分の花を咲かせることだ
どんな小さい花でもいい誰のものでもない独自の花を咲かせることだ 坂村真民
Facebook・近藤裕子さん投稿記事
回文(上から読んでも 下から読んでも 同じ言葉になる)和歌。
《 むらくさに くさのなはもし そなはらは なそしもはなの さくにさくらむ 》
むら草に 草の名はもし備わらば
なぞしも花の 咲くに咲くらむ。
これは〈回文和歌〉として 最古のものです。
藤原清輔が〈奥義抄〉に
回文の古歌として 紹介しています。
意味として というより 回文を楽しむものだと思いますが 敢えて意味付けすれば
もし 野に咲いている花に 名前がついているのなら どうして 春という花の時期に一斉に咲かないのだろうか 。。 となるのかと思います。
★朱鳳の他の言葉は
書道家 近藤朱鳳でもご覧ください。
時折通る土手の道に 名前の知らない草花が 競うように群れ咲いているのを見ると
いつも この回文が浮かびます。
本当にうまく出来ていると感心します。
また 時々他の回文も ご紹介していこうと思います。
https://www.seijogakuen.ed.jp/chukou/blog/o5rm620000003q2m.html 【Sator Arepo Tenet Opera Rotas
むらくさに 草の名はもし そなはらば なぞしも花の 咲くに咲くらむ】 より
石井という自分の名はあまりに平凡なので、好きでも嫌いでもない。そもそもうちの父親は捨て子なので血筋的な意味での本当の苗字はわからない。イシイはトマトと同じで上から読んでも下から読んでも変わらない。そこだけは気に入っている。これの高級なヤツが回文だ。早口言葉や駄洒落など、言葉遊びにはいろいろあるが、回文もそのひとつだ。世界中にその文化がある。校舎の壁を飾る言葉の中にも言葉遊びをいくつか選んだ。今回紹介する二つの言葉はどちらも回文だ。
古い方からいこう。
Sator Arepo Tenet Opera Rotas インターネットで調べたところ、「農夫のアレポ氏は馬鋤(す)きを曳(ひ)いて仕事をする」という意味だそうだ。イタリアのヴェスビオ火山の噴火で埋もれた街としてはポンペイが有名だが、同じときに被害にあったヘルクラネウムという街の遺跡から発見された。世に知られている最も古い回文らしい。イギリスやシリアの遺跡からも同じ回文が発見されていて、1世紀ころにはすでに広い範囲に流布されていたようだ。この言葉の面白いのは、
SATOR
AREPO
TENET
OPERA
ROTAS
と並べると、縦横で同じように読めるこということだ。ここまで凝った回文を生み出すというのはそうとう成熟した文化がそこにあったという証だ。読み書きのできる人が少なかった時代だからこそ文字にはとんでもない力があると気づいていたのだろう。
次は現存する日本最古の回文。
むらくさに 草の名はもし そなはらば なぞしも花の 咲くに咲くらむ
むらくさにくさのなはもしそなはらはなそしもはなのさくにさくらむ
ちゃんと回文の和歌になっている。平安後期の歌論書『奥義抄』(藤原清輔)に「草花を詠む古歌」として載っているのをはじめとして、多くの書物で取り上げられている。こんな訳が良さそうだ。「多くの草に草の名がもし備わるのならば、どうして桜の花が咲くこんな時にわざわざ咲いているのだろう」。もっと目立つときに咲けばいいのに、ということなのか?回文に仕上げるために意味は分かりにくくなってしまったのかもしれない。私が最初にこれを見つけたある本では、上記のように分かち書きになっていたので、そのまま校舎の壁にも写してしまったが、句ごとの隙間は必要なかったと今は反省している。
というわけで、前回のクイズの答えは「回文」でした。
https://www.seijogakuen.ed.jp/chukou/blog/o5rm620000003s54.html 【白だ黒だとけんかはおよし 白という字も墨で書く】 より
昔の都々逸
佃島という下町に生まれたものだから、子供の頃から昔の日本を味わってきた。小学校に入るころまで佃大橋はなく、渡し船が明石町との間を結んでいた。我が家は船着場から2軒目にあった。現在は銭湯に入れ墨者は出入り禁止だそうだが、当時の男湯は倶利伽羅紋々(くりからもんもん)が大勢いた。ちっとも怖くなかった。
おそらく都々逸(どどいつ)の調べに慣れ親しんだのも佃島に住んでいたからだろう。都々逸は江戸末期に始まった、口語による定型詩で、七・七・七・五のリズムで成り立っている。三味線と共に歌われ、寄席や座敷などでも演じられ、 男女の恋愛を詠んだものが多い。例えば「嫌なお方の親切よりも 好いたお方の無理が良い」などというものだ。
駄洒落などの言葉遊びも多く「信州信濃の新そばよりも わたしゃあなたのそばがよい」などは今でも聞くことがある。言葉遊びの天才、サザンオールスターズの桑田佳祐は「東京シャッフル」という曲で「恋の花咲く ロマンの都 女ばかりに 気もそぞろ 夢もほころぶ 小意気なジルバ 君と銀座の キャフェテラス」と七・七・七・五の作詞をしている。
白だ黒だとけんかはおよし 白という字も墨で書く
小さな違いを乗り越えられなくて、いがみあう二人。白という字を見てごらん。真っ黒な墨で書かれているじゃないか。あんたたち大して違いやしないんだよ。てなところでしょうか。
現代的な目でこの都々逸を読むと、どうしても「白」「黒」という言葉によって、私は人種問題へと気持ちが引きずり込まれてしまう。もちろんこの都々逸は昔の日本のものだからそんな意図は全くないのだが、永遠に続く白黒の無駄ないがみあいを想起させる。
かつて黒人のスティービー ワンダーと白人のポール マッカートニーが「エボニー アンド アイボリー」という曲をデュエットで歌っていたことがある。エボニーは黒檀(材質が黒)アイボリーは象牙(材質が白)のことで、ピアノの黒鍵と白鍵がひとつのハーモニーを奏でるという歌だが、白と黒は小さな違いをいつの日か乗り越えられるのだろうか。そして材質に違いのない日中韓のいがみあいはいつまで続くのだろうか。成城学園の生徒たちには人生で直面するいろいろな違いを乗り越えられる広い心と、この都々逸の軽やかな賢さを身につけてほしい。
https://www.dynacw.co.jp/fontstory/fontstory_detail.aspx?s=284 【ぬらくら 第82回 「ことば遊び」】より
"To be or not to be, that is the question."
シェイクスピアの戯曲「ハムレット」の有名な一節です。
読む人によって解釈が分かれると言われていますが『生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。』と言う訳が一般的なようです。
ぬらくら子がこのハムレットの台詞をもじった次の一節を覚えたのは中学生の頃でした。
"To be, to be, ten made to be."これ、どんな意味でしょう?
分かった方には、次の一句をプレゼントします。
さて、今度は何と言っているのでしょう?"Oh my..., much much care no salt."
こうしたことば遊びには、子供の頃に親しんだ「しりとり」、「へへののもへじ」や「つるニハののムし」のような絵かき歌などがあります。
ことば遊びには他にも色々とありますが、古くからあることば遊びをいくつかご紹介します。
1.回文(かいぶん)
頭から読んでも後ろから読んでも同じ言葉になる短文です。
「田植え歌(たうえうた)」や「竹藪焼けた(たけやぶやけた)」など簡単な回文は、皆さんも子供の頃に一度は口にして遊んだのではないでしょうか。
正月二日あるいは三日の夜、宝船の絵を枕の下に置き、次の歌を三度唱えてから寝ると吉夢を見ることができるという、詠み人知らずの有名な回文歌があります
(資料によっては藤原俊成(1114 - 1204)の作と書いたものもあります)。
長き夜の 遠の眠ふりの皆目醒めさめ 波乗り船の 音の良きかな
(なかきよの とおのねふりのみなめさめ なみのりふねの おとのよきかな)
回文歌は他にも沢山残されているようです。
以下の二首は藤原基俊(1060 - 1142)が著した『悦目抄』に収められている小輪尼の回文歌です。
村草に くさの名はもし具はらは なそしも花の 咲くに咲くらむ
(むらくさに くさのなはもしそなはらは なそしもはなの さくにさくらむ)
惜しめとも ついにいつもと行く春は 悔ゆともついに いつもとめしを
(をしめとも ついにいつもとゆくはるは くゆともついに いつもとめしを)
回文を読むのは面白いけど作るのは難しそうです。
2.字謎(じなぞ)
短文から漢字を当てる謎々です。
徒然草 第六十二段に字謎が出てくるので謎解きの例題にします。
ふたつ文字 牛の角文字 直ぐな文字 歪み文字とぞ 君は覚ゆる
「ふたつ文字」は「こ」、「牛の角文字」は「い」、「直ぐな文字」は「し」、
「歪み文字」は「く」で、ここまでで「こいしく」、「とぞ君は覚ゆる」をつなげて解は、
恋しくとぞ君は覚ゆる
となります。以下は字謎の問題です。
1)口をつけて知る 2)怠け心が無い 3)分かれると一人 4)日があると明るい
5)棒の右をとって戒める
3.造り字
漢字二文字を組み合わせて別の漢字一文字に見立てます。
次の造り字はなんと読むでしょう。
1)豆人 2)女竹 3)石生 4)花老
4.謎たて
短文から文字を足したり引いたり、あるいは文字の順番を入れ替えたりして、その短文の意味を説く遊びです。回文と同じように古くからあることば遊びです。
未だに正解が見つからないという徒然草 第百三十五段には有名な謎たてがあります。
藤原資季大納言(ふじわらのすけすえ)が、源具氏中将(みなもとのともうじ)に向かって、『お前が質問してくる程度のことだったら、何だって答えてやろう』というのに対して
具氏中将が出した問題がこれ。
むまのきつりやう きつにのをか なかくぼれいり くれんどう
漢字交じりに直して
馬退きつ了 きつにのをか 中窪れ入り くれんどう
これを国文学者・鈴木棠三(1911 - 1992)は「馬退きつ了」は馬が退く、
「きつにのをか(『きつに』は『狐』のこと)」の真ん中の「にの」が窪んで(無視して)
「きつおか」、それが「くれんどう(転倒の意)」で、解は「かおつき」と解いています。
他に歌人や国語学者などが解いた「かり」「かき」「かれき」など、「かおつき」とは
異なる解があるそうです。
では、簡単な謎たてを二題、解を見つけてください。
1)いかを真っ二つに切って漆を注ぎ、イルカを逃がす。
2)返して悔し 桃の木の数珠
最後に「折り句」というのを紹介しましょう。アクロスティック(Acrostic)と言った方が
分かる人が多いかも知れません。
折り句の説明をするよりも、詩人・谷川俊太郎のポストカードから、その一例を紹介します。
あくびがでるわ いやけがさすわ しにたいくらい てんでたいくつ まぬけなあなた
すべってころべ
各行の始めの一文字を縦に読むと「あいしてます」となります。これが折り句です。
冒頭に書いたアルファベットで書いた謎々を知ったと同じ頃に、いろは歌には別のメッセージが隠されていると、自慢したのを思い出しました。
いろは歌を七文字で折り返します。
いろはにほへと ちりぬるをわか よたれそつねな らむうゐのおく やまけふこえて
あさきゆめみし ゑいもせす
各行の最後の一文字を拾う折り句もあります。
上のいろは歌の各行の最後の文字を縦に読むと「とかなくてしす」となります。
これを漢字交じりに直して「咎無くて死す」、誰のことを指しているのでしょう。
新聞に掲載されるテレビ番組の野球やサッカーの中継番組紹介文に、折り句が仕組まれているとインターネット上で話題になることがあるので、折り句をご存知の方は多いでしょう。
以下は上に挙げてきた謎の謎解きとその答えです。
2.字謎
1)矢(「矢」に「口」を付けると「知」)
2)台(「怠」から「心」を無くすと「台」)
3)大(「大」を「一」と「人」に分けて「一人」)
4)月(「月」の側に「日」があると「明」)
5)械(「棒」の右側(旁)を「戒」にすると「械」)
3.造り字
1)「豆」のような「人」で「一寸法師」 2)「竹」から「生」まれた「かぐや姫」
3)「石」から「生」まれた「孫悟空」4)「花」を咲かせた「老」人は「花咲かじじい」
4.謎たて
1)うし
「いか」を二つに切ると「い」と「か」、その間に「うるし」を入れると「いうるしか」、「いうるしか」から「いるか」を外すと「うし」。
2)尺八
「返してくやし」は「くやし」を「返す(逆にする)」、「しやく」です。
「桃の木」は「百退き」、 「数珠」の珠は百八個ある、 「百八」から「百」を除(退)くと「八」 「しゃく」と「八」で「しゃくはち」
最後は冒頭のアルファベットの謎の答えです。
"To be, to be, ten made to be." 答えは「飛べ飛べ天まで飛べ」。
これは英語ではなく、日本語をローマ字で綴っただけの謎です。
始めにハムレットの台詞を英語で示すことで、この謎謎が英語だと思い込ませるところがミソです。
"Oh my..., much much care no salt."
こちらはローマ字ではありませんが、意味のある英語でもありません。
「オーマイマチマチケァノーソート」と読めます。
この読みの音を日本語の音に当てて漢字仮名交じりに書き直すと
お前待ち待ち蚊帳の外
……と、なんとも乙な一句が浮かんできました。
ぬらくら子が中学生の頃、子供にこんなことを教える粋な人がいたんですネ~。
【参考資料】
「事典日本の文字」樺島忠夫・続木敏郎・関口泰次:編 大修館書店 1985年刊
タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
ぬらくらは、ダイナフォント News Letter(ダイナコムウェア メールマガジン)にて連載中です。
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