延命草
http://musai00h.blog.fc2.com/blog-entry-1177.html 【亀葉引起し(カメバヒキオコシ)】より
和漢三才図会(1713年・正徳3)に、寺島良安が、『行人山中に於いて腹痛してまさに死なんとする者あり。時に弘法大師の登山するに遇ひて、この草を吃わしめ立処に癒ゆ。後にまたこれを試みるに皆験あり。よって延命草と名づく』と記述しています。
生薬の延命草は、シソ科ヤマハッカ属のヒキオコシのことで、全草が生薬として利用されます。ヒキオコシの名の由来は、上述した通り、弘法大師が倒れて死にそうな者に、この草を与えて引き起こしたという伝説からです。
今日紹介する亀葉引起し(カメバヒキオコシ)もシソ科ヤマハッカ属の植物ですが、生薬の効能は持っていません。花も姿もヒキオコシに似ていますが、葉の形状が亀に似ているので、カメバヒキオコシと名付けられました。
『カメバヒキオコシの群生』湿潤な山の斜面が、紫色に煙って見えました。
『葉っぱの先が亀の尾に見えるかな』
『花の形は唇に似る』とありましたが、それ程でも無いような。
https://kotobank.jp/word/%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%82%A6-1279754 【エンメイソウ(読み)えんめいそう】より
世界大百科事典内のエンメイソウの言及
【ヒキオコシ(引起)】より
…強い苦味のあるエンメインenmeinを含み,全草を陰干しにして煎じて薬用とする。消化不良,食欲不振,腹痛に効があるといわれ,ヒキオコシの名は起死回生の効があるという言い伝えからついたもので,また同じ意味でエンメイソウ(延命草)ともいわれる。ヒキオコシと同様に薬用として用いられるクロバナヒキオコシR.trichocarpa (Maxim.) Haraは花が暗紫色で,北海道と本州の日本海側の山地に分布する。…
【民間薬】より
…一般大衆が医師の指導によらず,みずからの判断で用いる民間伝承の薬物をいう。世界各地に知られ,呪術的に用いられるものや,各時代に医師が使用していたもののうち,有効で処方が簡単なものが民間に流布したものなど,いろいろな起源をもつものが含まれている。代表的なものに,アフリカのヨヒンベ皮(催淫薬),北アメリカのインディアンが用いたカスカラサグラダ(緩下剤),南アメリカのインカで用いられたコカ葉,イギリスのジギタリスなどがある。…
※「エンメイソウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
http://www.e-yakusou.com/yakusou/741.htm 【ヒキオコシ (シソ科ヤマハッカ属:多年草:草丈 ~100センチ:花期 ~10月)】 より
薬効 消化不良 食欲不振 腹痛 がん一般 健胃
分布生育場所
科名:シソ科/属名:ヤマハッカ属
和名:引き起こし/学名:Rabdosia japonica
本州、四国、九州の乾いた日の当たる山野に自生する多年草。
北海道、本州近畿北部以北に分布するクロバナヒキオコシ
シソ科ヤマハッカ属カメバヒキオコシ(亀葉引き起こし)
見分け方・特徴
ヒキオコシは、丈夫な地下茎があって、茎は四角で真っ直ぐのびています。下向きに細い毛がびっしり生えています。
葉は対生し、形は広卵形、先は尖って、長さ5~15センチ、巾4~8センチ程の大きさです。
葉縁は鋸歯状、葉脈の上には短い毛があります。葉をかむと、ものすごく苦い味がします。
9~10月ころに、花は枝先に葉のわきからのびた軸に長くて、まばらな長楕円状の円錐花序をつくります。
花の色は紫色、花冠は小さく長さ5~7ミリの唇形をしています。上唇は4裂し、反り返って、内側に紫色の斑点があります。
雄しべ4本のうち2本は少し長く花冠の外に飛び出しています。がくは5裂して、びっしりと細い毛があり、色は灰白色をしています。
採集と調整
ヒキオコシは、秋、地上部を刈り採り、日干しにしてよく乾燥させます。
このヒキオコシの全草を乾燥したものを、生薬で延命草(えんめいそう)といいます。
薬用として用いられる、ヒキオコシと非常によく似ているものにクロバナヒキオコシがあります。
クロバナヒキオコシは、自生する分布が本州の近畿北部より北になり、北海道など比較的寒い地域に主に分布します。クロバナヒキオコシは、茎の稜(りょう)上にだけ細毛があり、花は8~10月ころに黒紫色の小唇花をつけるのでヒキオコシと区別がつきます。
薬効・用い方
延命草(えんめいそう)は、健胃(けんい)薬として胃の調子がよくないとか、軽い痛みを感じるような時、また食欲がないときなどに1日量として、延命草10グラムを煎じて飲むか、粉末を1日2グラム、オブラートなどに包まずそのまま服用します。
ヒキオコシは、家庭薬にも多く配合されていて、消化不良、食欲不振、腹痛などに用いられています。
ヒキオコシの科学成分は研究の結果、数多くのジテルペンと呼ばれる一群の化合物が含まれていることが明らかにされています。
また、抗がん作用のある成分も含まれていることがわかっています。
その他
ヒキオコシの名前の由来は、その昔、弘法大師が山道を歩いていると、一人の行者が倒れていました。
それを見た弘法大師はすぐに近くにある草をしぼり、その汁を、倒れている行者の口に含ませたところ、その行者はたちどころに元気をとりもどして旅を続けることができました。
それから、病人を「ひき起こす」という意味で、ヒキオコシと呼ばれたといいます。
この故事によって、ヒキオコシや延命草(えんめいそう)という名前がついたとされています。
小豆島(しょうどしま)のある寺院では、数百年の昔から、ヒキオコシを栽培して、全草(ぜんそう)のエキスで作った薬を腹痛や胃痛、食あたりなどの治療に用いていたということです。