Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

過去の出来事

和俗童子訓13

2020.10.15 08:40

貝原益軒著『和俗童子訓』13

いとけなき時より、必まづ、其このむわざをゑらぶべし。このむ所、尤大事也。婬欲のたはふれをこのみ、淫楽などをこのむ事、又、ついえ多きあそびを、まづはやくいましむべし。これをこのめば、其心必放逸になる。いとけなきよりこのめば、そのこころぐせとなり、一生、其このみやまざるものなり。いかにいとけなくして、いまだ心にわきまへなくとも、又、富貴の家にむまれ、万の事、心にかなへりとも、道にそむき、人に害あり。物をくるしめ、財をついやすたはぶれ、あそびの、はかなきわざをば、せざる理たり。と云きかせ、さとらしめて、なさしむべからず。又、わが身に用なき無益の芸を、習はしむべからず。たとひ、用ある芸能といへども、一向にこのみ過して、其事にのみ心を用ゆれば、必其一事に心がたぶきて、万事に通せず。其このむ所につきて、ひが事多く、害多し。いはんや、益なき事をすきこのむをや。凡幼より、このむ所、ならふ事を、はやくゑらぶべし。


【通釈】

まだ幼い時より、必ず最初に好むわざを厳選すること。好む所は最も大事である。みだらな戯れ好み、淫楽などを好むことや、出費の多い遊びを、まず早く戒めよ。これを好めば、その心は必ず放逸になる。幼い時から好めば、その心が癖となり、一生、その好みは止むことがない。

どれだけ幼くて、まだ心に理解できなくても、また、富貴の家に生まれ、万事、心の思うがままになる状況だと、道にそむき、人に害をなすようになる。生き物を苦しめ、財を浪費する戯れや遊びは実にはかないものであり、してはならない、と言い聞かせ、さとらせて、させてはならない。

また、わが身にとって無益な芸を習わせてはならない。たとえ、有用な芸能といえども、そればかりに熱中し、その事にばかり心を使えば、必ずその一事に心が傾き、万事に通じなくなる。しかも、その好む所にとらわれて過ちが多くなり、害が多い。ましてや、益のない事を好むのはなおさらである。

幼い時より、好む所、習う事を、早く選ぶようにすべきである。