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馬の未来に彩りを。

養老馬牧場の作り方 (八ヶ岳ホースケア牧場様)

2020.10.31 11:00

山梨県北杜市・清里高原にある養老牧場・八ヶ岳ホースケア牧場様へ伺いました!

八ヶ岳ホースケア牧場様は 休養馬や養老馬の預託施設。

怪我をした馬や 乗馬クラブで働いてきた高齢の馬達が、のんびり過ごすことができる牧場で、施設の設備は どれも馬達のことを考えて作られた設備になっております!

▼八ヶ岳ホースケア牧場様の公式HPはこちらから!

この度、牧場のオーナー様に許可を頂き、施設内の撮影と設備の解説をいただきました!


またブログ内での紹介の許可も頂けましたので、

"養老馬牧場を作ろう!"と題して、

自分が養老馬の牧場を作るなら!

という立場に立って、見て頂ければ幸いです🐎



①ウォーキングマシン

まず牧場に入って最も目につくのはウォーキングマシン。

こちらの装置は海外からお取り寄せした最新のもので、馬の健康状態や運動させたい量によって回転の速度や 経過時間を決めて、自動で馬を歩かせることができます!

かつては人が1頭1頭歩かせていたそうですが、これなら人手を抑えつつ、たくさんの馬を決まった時間だけ運動させられます。

たくさん馬を預かる際、牧場作りには欠かせない機械ですね!



②放牧馬場

放牧馬場は馬達が走り回れるのに十分な広さを確保!

しかも取材に伺ったとき 雨が降っていたのですが☔ 雨が止んで1時間程度で

馬場には水たまりがなくなり さらに数時間もすれば放牧が可能になりました☀


その理由は事前の地質工事!大きい石を土台にして、小さな石を積み、防水シートを挟んで

その上に山梨県・釜無川の川砂をセットすることで、水がスグに地下へ流れる為、馬場表面の水はけがとってもいいんです❣

ちなみにこちらが隣の丸馬場で、同じ時間に撮影したもの。

こちらは地質工事をせずに 砂だけで固めている馬場なので、水の逃げ場がなく、雨の後だと馬場に水たまりがいくつも出来てしまっています☔

場合によっては雨の後は 1日中放牧できない…なんてことも。

良い馬場作りは、まず地質工事から! 馬達に快適な放牧を楽しんでもらう為にも大事なことですね✨



③放牧地

放牧地は第1,第2の2箇所で、合計約1万平方メートルもの広さがあります!

これだけ広いと馬達ものびのび放牧することができますね!

また、複数に放牧地を分けることで 相性の良くない馬同士を同じ場所に放さず済み、ケンカや放牧中の怪我・事故を減らすことも可能と、メリットがたくさん🎵

そして、どちらにも 西洋芝のケンタッキーブルーグラスが植えられている為、好きなだけ草を食むことができ、馬は本来の自然な過ごし方ができます。

(ブルーグラスはクッション性がいいので、蹄にも負担が少ないのも良ポイントです)



④馬房

ここからは敷地内の設備です。

馬房の広さは 3.6mx3.6m とサラブレッドも余裕をもって過ごせる、広々空間 ❕

床面はゴムマットがセットされ、かんな屑をその上に敷いているので、故障の馬や高齢馬の脚にも優しいです✨


★おが粉ではなく かんなくずを使うことで、馬が自分のおしっこをした後の敷料を踏んでも、かんなは蹄に詰まりにくい為

蹄叉腐爛 (蹄底の凹部につまった汚物で蹄底が腐食し、悪臭をはなつ病気) になりにくくなります!



また、馬房のフロントパネルと屋外窓には 全室に首出しがあるので、

馬が好きなだけお顔を出して外を眺めたり、隣の馬とおしゃべりできる設計になっています💖

オーナー様なども愛馬に会いに来た時、馬房から覗かせたお顔をよしよし出来るのは格別な幸せですね♡


ちなみに、馬房に使用している木材もちょっとしたもの。

固くて反りが少なく、防水性・耐食性に優れた木材を使っているため、壊れにくく頑丈で、

馬にかじられて穴が開いたりすることも無いため、噛みグセのある馬もOK。

ただ、最近はなかなか固い木が手に入らなくなってしまったとのことで、

代用として孟宗竹(モウソウチク)を 高密圧着プレスしたものもオススメとのことです!



⑤土間

牧場敷地内の土間はゴムブロックを敷き詰めているため、こちらも馬房同様、馬の蹄にかかる負担を少なくて済みます。

また、馬房・通路・洗い場までを、段差の無い 完全にフラットな仕上がりにすることで、

馬達がつまづく危険性や 材質の違いでスリップするリスクを限りなく抑えています✨


あらかじめセットするゴムマットや、ゴムブロックの厚みを計算して、コンクリート土間を施工しています。

土間の厚みを部分的に変えて土間打ちするのは、実はとても難しいこと💦

何気ないですが、綿密な設計と、左官屋さんの職人技によって完成した 素晴らしい場所なのです!



⑥特殊設備

こちらは吊起帯(ちょうきたい)という、起立不全の馬に用いる特殊な設備。

馬は横になった状態から、起き上がるときに脚に負荷がかかります。

脚腰が衰えてきた高齢馬などでは、馬房内で起き上がれなくなってしまうことがあり、

ときにそのまま起き上がれずに 命に関わることもあるのです。

立ち上がろうと必死にもがく内に、脚を痛めてしまったり、怪我をしてしまう可能性もあるので、そういった場合に この吊起帯を使用致します。


チェーン部分を躯体の梁(鉄骨など)から吊るして、帯部分でお腹側から馬体を支えています。

※ちなみに吊起帯(帯部分)は日本では手に入らない為、アメリカから購入されました。

吊るしてもらっていたこの子は ご高齢で 横になってしまうと自力では立ち上がれないのですが、

腸や歯が丈夫なので、まだまだ元気に過ごしているとのことです💕

脚が衰えてしまっても、吊起帯の補助で長生きできる命があることは とても嬉しく思いますし、

いざというときに この機器を使う選択肢が選べる、というのも 養老馬牧場としての大切な役割だなと感じました。



⑦カメラ

八ヶ岳ホースケア牧場様には厩舎外部の防犯カメラ以外にも、

各馬房と放牧場、運動馬場にWebカメラを設置されています📸

豊かな自然に囲まれた八ヶ岳は、逆を言えば都会からは遠く、

オーナー様からすれば、なかなか預けている愛馬に会いに通えないのが現状です。


しかしこのカメラがあれば、24時間 いつでも愛馬の様子を遠くにいても

リアルタイムで確認することが出来るのです!

馬が放牧しているところ、馬房でのんびりしているところ… 

忙しい日常でも、愛馬のそんな姿がスマホでいつでも見れれば ついほっこりしてしまいそうですね💕

馬だけでなく、オーナー様にも行き届いた配慮が 嬉しいサービスです。



⑧災害対策

最後に、牧場の災害対策についてご紹介します。

近年 台風や大雨の被害が日本各地で相次ぐ中、牧場も危機に見舞われています。

断水や停電・道路の断線が続くことで、馬達の健康や食事面でのサポートが保てなくなれば、

休養馬や高齢馬にとっては とても大変な事態になりかねません。


そうならない為の対策として、”土地の歴史を調べる” ことが必要です!

八ヶ岳ホースケア牧場のオーナー様は、牧場を開設する前に、過去にその場所で起きた災害を調べ上げたそうです。

八ヶ岳は台風被害が昔から少なく、地盤も頑丈な為 地震にも耐久性があります。

活火山である富士山が近いですが、過去に富士山が噴火した際は🌋偏西風の影響で 被害が少なかったそうです。(火山灰が数cm降った程度)



馬達の安全の為に、その土地自体の災害度を理解することが大切なのです✨

(ちなみに ”乗馬クラブの台風対策について"は、こちらの記事を参考にしてください)


いかがでしたでしょうか。

馬の視点に合わせた設備・設計作りと、土地選び が、素敵な養老馬牧場を作る第一歩です❣

養老馬牧場を作りたい、馬に携わるお仕事や趣味を目指したいという方へ、少しでもご参考になれば幸いです。