Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

詩人・作家 神泉 薫(Kaoru Shinsen)のブログ ~言の華~

【今夜の絵本✰マイラ・ベリー・ブラウン『ベンジーのもうふ』】

2020.11.21 13:35


風の冷たさにふるえる夜には

柔らかな毛布にくるまると、ほっとしますね。


今夜は、そんな夜のひとときと

子ども時代のある記憶につながる絵本のご紹介をしましょう。


マイラ・ベリー・ブラウン 文 ドロシー・マリノ 絵 まさきるりこ訳

『ベンジーのもうふ』(あすなろ書房/2010)


ベンジーは、ちいさな男の子。

いつも肌身離さず持っている、大好きな「もうふ」があります。


歯医者や散髪屋、幼稚園の門でお母さんと離れるとき、

ぎゅっと、このもうふをにぎると安心するのです。


自分にとっての一番のお気に入りは、

子ども一人一人異なるものですね。


くまのぬいぐるみやふわふわのタオル、一枚のもうふ。


ボロボロに見えても、子どもにとっては、

とても大切な存在。


心理学の立場からは、愛着を示すぬいぐるみやもうふなどを移行対象と呼び、

母親から離れて自立していく、母からの分離を示す第一歩として、

重要な発達段階のひとつと言われています。


絵本の中のベンジーは、ボロボロのもうふを大切にしながら、

少しずつ成長していきます。


ジャングルジムのてっぺんにのぼったり、

ちょっと大きな靴を履くようになったり、

見えない心の中に、小さな自信と強さを育んでいきます。


「もうじき そのあかちゃんもうふが いらなくなるわよ、ベンジー」


眠る前にキスをして、優しく見守ってくれる母親の、

柔らかなほほえみに、ベンジーは心から安らぎを覚えます。


ベンジーがゆっくりと成長の階段を登り、

自分よりも弱い存在へと優しさを届け、

大切なもうふを手放す瞬間のページには、

思わず笑顔と感動があふれます。


子育てに、ふと迷いを感じた瞬間、

開いてみて頂きたい一冊。


子どもは、子どものペースで、確かに大きくなっていくんだと信じられる、

ほっと安心感を与えてもらえる作品です。


夜のひととき、ぜひ膝元に。




【神泉薫HP】【神泉薫著作】【お問い合わせ】